世の中にチョコレート菓子は数あれど、見た目のインパクトで「小松屋本店」の商品に勝るものはまず存在しないだろう。その名も「かぶと虫の幼虫チョコレート」。リアルどころの騒ぎではない。
きっかけは市の昆虫展
遠目なら本物と見間違えそうな精巧さである。一体なぜ、ここまで本物そっくりに作られたのだろうか。その疑問に答えてくださったのが、小松屋本店の小原健一さん。
「8~9年前、秋田市で開催された昆虫展からご依頼いただき、チョコレートを出品したことをきっかけに、商品の販売を始めました。その2年後、メディアに取り上げられたことで注文が殺到して、現在に至っています。
当初は、幼虫チョコレート、かぶと虫の成虫チョコレートのみ制作していましたが、お客様の要望に応えて、新しい商品も開発してきました」。
昆虫展出品当時は、「気持ち悪い」と敬遠する人もいたというが、メディアに取り上げられてからは、評判が「キモかわいい」へと変化し、お土産やプレゼントとして購入する人が後を絶たなくなったという。
忠実に再現する匠の技に個別注文も
それにしても完成度の高さが尋常ではない。「昆虫展の際、依頼してくださった方は幼虫の写真を持ってこられたので、本物に近い状態を目指して作成しました」というが、食品のみでここまでリアルに再現できるものかと感心させられる。
小松屋本店ファンの客も同じ想いのようで、中には「こんな商品を作ってほしい」と注文される方もいるんだとか。その作品の一部がfacebookファンページにアップされているが、ほれぼれするほどの出来栄えなのである。
「お客様のご注文にはできるだけ応じるようにしています。物によってはお作りできないこともありますが、過去には、ヘビ、蛍、馬糞なども作りました」。
馬糞……。どんな人が何のために発注したのか気になるが、実際にできあがったものを口にするには勇気がいったに違いない。しかし、強烈な見た目だからこそ、良質の材料にこだわって味にも力をいれている小松屋本店に発注したのかもしれない。
実は同店は、大正5年(1916)創業の老舗。初代・小松平吉さんが「和洋菓子店」として創業して以来、数多くのファンに支持されてきた名店なのだ。キモかわいい見た目とは裏腹にスイーツ通をもうならす味を、是非一度ご賞味あれ。
※記事中の情報・価格は2014年3月取材時のもの