28日の『笑っていいとも!』のオープニングは、実にあっさり。レギュラーの紹介を終えるとすぐにCMへ。これは"テレフォンショッキング過去最長記録46分"を持つ黒柳徹子対策か。その放送は「レギュラーが誰も出られなかった伝説の回」として知られるが、金曜はこの日が最終回だけに時間管理がシビアなのだろう。果たして、黒柳のマシンガントークをタモリがどう受け止めるのか。

『徹子の部屋』は「局の都合で」正午に

CMが明けると黒柳が登場。その衣装は全身に花模様をあしらった巨大ドレスだった。『いいとも!』の32年に対し、『徹子の部屋』は39年。トークショーの2トップが向き合うのはひさびさとなる。タモリが「おひさしぶりです」と軽いあいさつから入ると、黒柳は「うれしいですね。でも(タモリさんは)毎日にぎやかですね。地味に暮らしたいのにね」と早くもマシンガンを撃ちはじめる。思わずタモリは苦笑い。でもうれしそうに見える。

続けて黒柳が「(『いいとも!』は)ずいぶん後から(はじまった)と思ってたら割と近いじゃない。途中からズズッと早くなったんじゃない?」とボケると、タモリが「ごまかしてるわけじゃない!」と再び苦笑い。しかし黒柳は、そんなタモリのツッコミを待たずにどんどん話し続ける。

さらに黒柳は「『徹子の部屋』は今度正午から(の放送になる)。ごめんなさいね。あなたがいらっしゃらなくなるから(その時間帯に)行くってわけじゃないけど、いかにもそうみたいでしょ。局の都合で」とぶっちゃけると、タモリは「ハッハッハッ」と大爆笑。どうやら「ランチタイムには、トーク番組があった方がいい」と言いたかったようだ。

ここでタモリが、「私は(黒柳の)お歳を知ってますけどね。信じられないくらい元気なんです」と初めて反撃すると、「90歳じゃないわよ! 『徹子の部屋』を50年やると90歳になるから、そこまでやりたい。あなたお祝いに来てくださる?」と言葉の倍返し。押されながらもタモリは「オレ、そのとき80歳くらい……」と笑わせ、黒柳も「おじいちゃんね!」と呼応した。タモリの引き芸が冴えわたり、二人のトークは抜群に噛み合っている。

黒柳の奇声連発で爆笑、失笑

次の話題は黒柳の得意分野である動物。黒柳「あなたの家のネコが面白いのよね。私になついて」、タモリ「オレには絶対なつかない」、黒柳「(タモリに)噛みつくわね」、タモリ「そうそう」、黒柳「ネコに『あなた身長どれくらい?』って聞いたら、壁のところへ寄りかかって背伸びした」、タモリ「他の人には全然なつかないのに不思議」。こんな調子でトークがどんどん進んでいく。

特に客席を沸かせたのはオオカミの話。黒柳は「中国から前日に来たばかりのオオカミを撮影することになったけど、うろうろしていてなかなか撮れなかった。『日本語に慣れてないんじゃないか』と思って、私は京劇(中国の古典演劇)のモノマネができるから、『イーシェーテェリューウーウー』って言ったらオオカミが止まって、『トゥシャージャンジャンジャン』って言ったら私の言葉を聞く体勢になったから、『トゥシャーシャーシャーテーイーエーエー、シャーテーエー』って言いながら写真を撮りました。オリの前でやってたから、『黒柳徹子が踊ってる』って人が集まってきちゃって。たいがいの動物は私の言うことを聞きますよ」と怒とうの一人芝居を披露した。その迫力に会場は爆笑、失笑、また爆笑……タモリが「会場の人はもうオオカミのことを忘れていますよ」とツッコミを入れてCMへ。

パンダを号泣させ、カワウソのグチを聞く

さらにタモリが「他に面白い動物いますか?」と振られた黒柳は、「行き倒れた野生のパンダがいて。食べ物がなくて人里まで来て倒れたんですけど、手が片方なかったから『かわいそうにね。一人で大変だったでしょ』とご飯をあげたらお箸ごと持っていったので、『ダメ』と言ったらお箸だけ返しました。私が帰ることになって『サヨナラ』って言ったら、ボロボロ泣くんですよ。心を尽くせば野生でも分かり合えます。生き物だから」「私、上野動物園にお友だちのカワウソがいて、行くとパーっと私のところへ来て、(カワウソのマネで)『ジャジャジャムー、ンジャジャー』と一週間にあったことを私に言ってくるので、『大変だったわね』と言ってあげるんです。カワイイわよ~」とマシンガン・アニマルトーク。

この間タモリは、「へぇ~」「スゴイね」というあいづちのみ。そして黒柳は終始、真顔なのがまた面白い。

その他、全然動かなかった牛を説得して動かした話、旭山動物園のシロクマを縁結びした話、タモリ家のネコをしつけた話など、黒柳の"アニマル漫談"が止まらない。極めつけのひと言は、「お宅の猫のことを考えると、この話分かるでしょ」。同意を求められたタモリは「分かる! ウソじゃないと言える!」と返し、満面の笑みになっていた。本当に仲がいいのだろう。

Ⅹ/100アンケートは、「私はよく頭の中からアメを出します。『ベストテン』でよくやってたけど、それを見たことがある人」。黒柳の予想人数は30人だったが、結果は61人で大失敗。落胆した黒柳が「キャー、イェーシェーシェー」と再び京劇のマネで奇声を上げはじめ、「まだ話したい」という意思表示を見せたが、最後のゲストとなるビートたけしが紹介されてコーナーは終わった。

この日のテレフォンショッキングは、ほとんど黒柳がしゃべっていたが、その密度の濃さ、トーク本数の多さは、まさに出色。「わずか28分間でこれだけのものが見せられるのよ」という後輩タレントたちへのメッセージにも思えた。次回は立ち位置がそっくり入れ替えて、タモリが『徹子の部屋』に出演する姿を早く見たい。

タモリ衝撃の「観たことがない」宣言

CM明けのコーナーは、「目指せ! 言葉の達人」。サプライズ企画ではなく、通常のコーナーだったが、テーマは「『いいとも!』の意味を考える」。つまり番組への熱い思いを語る最終回らしい企画だった。

木下優樹菜は「ギャルのとき学校サボって見てて、『タモリさん頑張ってるからウチらも頑張ろう』と思って。タモリさんにホメてもらえてうれしかった」、鈴木浩介は「オープニングでタモリさんが出るのを袖から見た光景は一生忘れません」、劇団ひとりは「『オレなんかが出ていいのかな』と思っていた。鏡の前で『お前は人気者だ』って言い聞かせていたし、周りからも唯一おめでとうと言われる番組」、田中裕二は「太陽の代わりを務めた番組。それを(タモさんが)サングラスでやってくれた。視聴者だったころの方が長いし、毎回緊張していた」、草なぎ剛は「何気なく終わる日常なんですが、終わるとなると『スゴイ大切な時間だったな』って。当たり前のことがステキだなと思える番組。親と一緒で『まだ教えてもらいたいことがあるのに』と思う」、関根勤は「タモリさんは昼食で蕎麦定食の蕎麦抜きを食べる」と、関根以外は思い思いのコメント。

トリのタモリが「観たことがないので分からない」と話すと、スタジオは大爆笑。さらにタモリは「32年間、この時間に飯食ったこともないし、休憩もしたこともない」と続ける。これぞコロンブスの卵、夏休みすらほとんど取らなかったタモリしか言えない名言で締めくくった。

タモリは4月1日にアルタで引っ越し

CMをはさんで、「イス取りゲームで劇団ひとりを泣かせたら負け」というグズグズのコーナーと、『曜日対抗いいともCUP』をはさんでエンディングへ。やはり黒柳徹子のトークが長かった分、残り時間はほとんどない。

レギュラーたちが「最後か……」という話をしはじめると、タモリが「オレ、楽屋の片付けがあるから(4月)1日も来なきゃなんない」とボソリ。田中が「確かにタモさん(の楽屋)は部屋になってるから」と話を広げると、タモリは「本とか地図とか時刻表とか。フットマッサージもある。引っ越しに2日くらいかかるんじゃないかな」と裏話を披露。さすがのタモリも感傷的になってきたのか。

「火曜の全員テレフォンショッキング」「水曜の全員ネタ祭り」「木曜の驚かしSP」「金曜のいいとも明言」に続く、ラスト月曜のサプライズ企画は何か? レギュラーは、香取慎吾、三村マサカズ、千原ジュニア、渡辺直美、指原莉乃、武井壮と最も勢いのあるメンバーだけに楽しみは尽きない。

『いいとも!』は、いよいよ残りあと1日。32年の歴史をどう締めくくるのか。そのときタモリはどんな表情でどんな言葉を……。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。