「なまはげ」というと、「泣く子はいねがぁ」のせりふとともに、恐ろしさに泣き叫ぶ子供の姿が思い浮かぶという人は多いだろう。しかし秋田には、子供の指でも簡単につまめる、ミニサイズのなまはげ菓子が存在するという。一体どんな商品なのだろう。
そのおいしさにお殿様もうなった!
その商品の名は「なまはげ諸越(もろこし)」。秋田名物の「諸越」を、なまはげ型で制作したお菓子である。ところで、「諸越」という字面を初めて見たという人も多いだろう。秋田では誰もが知るお菓子だが、全国ではその存在を知っている人が少ないのが実情のようだ。
「諸越は秋田発祥なんですよ。その昔、佐竹の殿様(江戸時代の久保田藩藩主)にこの菓子を献上したところ、『諸々のものに越したる旨さかな』と絶賛されたそうで、以来、この呼び名で通っています。うちではなまはげの形で作っていますが、観光地ごとに名物品を模した諸越を作っているようですよ」。
「なまはげ諸越」を制作・販売する「郷土菓子司 勝月」店主の片谷さんがおっしゃる通り、秋田犬を模した諸越やこけし型諸越など、県内ではバラエティ豊かな諸越が製造されている。そして、その中でもとりわけ注目を浴びているのが、くだんの「なまはげ諸越」なのだ。
愛らしさを包み隠さないパッケージ
ブームのきっかけは、北東北3県で発行されている某雑誌に取り上げられたこと。子供を脅かす存在であるなまはげも、お菓子になってしまえば怖くも何ともない。これをまるっと採用した「お菓子だったら怖くない」のキャッチコピーも、ヒットの要因だった。
「なかなか愛きょうのある顔してますからねえ。みんな『かわいい!』って言って買ってくれるんですよ」と片谷さんは笑って話す。そのキュートな顔をみんなに見てもらいたいがために、中身が見える仕様にこだわって、パッケージも改良を重ねたという。
また、気になる味や食感はというと、原料となる小豆粉と砂糖が絶妙な割合で配合されているため、口に含んだ瞬間、舌の上でさらりと溶ける。ほどよい甘さのため、お茶受けとしてのみならずお酒のおともにもちょうど良さそうだ。
まちおこしにも力を入れたい!
片谷さんによると、勝月が店を構える通町商店街は近年、めっきり人口が減ったという。「昔の客はほとんどいないですね。街全体がもっと活気づいてくれうれしいんですけど」。その想いを胸に、街の人と一体となって、商店街の活性化にも励んでいる。
1998年5月には、「通の市(つうのいち)」なるイベントをグランドオープンさせ、翌年以降は毎年4月から10月までの毎月第4土曜日に、継続して同イベントを開催。その他、8月12日は草市(花火大会や流しそうめんを実施)、10月には「狐の行列」を行うなど(2013年は第2土曜日に開催)、様々な策を試みているという。
これから10月までの間に秋田を訪れる予定のある人は、第4土曜日をまたいでスケジュールをたててはいかがだろうか。勝月の他にも地元の名物をそろえた店がそろっているので、現地の人との交流を楽しみながら散策するのも良さそうだ。
もちろん、勝月にも「めるへんかまくら」や「りんご餅」など、なまはげもろこし以外の名物が多数そろっているので、片谷さんとの会話を楽しみながら好みの一品を選ぶのも楽しいに違いない。
「めるへんかまくら」(15個入り2,230円) |
「りんご餅」(20個入り1,200円) |
※記事中の価格は2014年3月時の税込み価格