パンクロック、ニューウェーブ、フュージョン、昭和歌謡……。古今東西の音楽を混ぜ合わせた"超”個性的な音楽を鳴らす女性4人組ロックバンド「赤い公園」が今、急速に支持を集めている。3月12日にリリースしたシングル『絶対的な関係』は、フジテレビ系土曜ドラマ『ロストデイズ』の主題歌に起用されるなど、その勢いは増すばかりだ。独特すぎる彼女たちの音楽スタイルは、果たしてどこから生まれたのか。ボーカルの佐藤千明、そして作詞作曲、アレンジ、プロデュースを担当するギターの津野米咲に話を聞いた。
――初めて赤い公園の曲を聴いたときはのけぞりました。「なんだこれ!」って。すごくノイジーで攻撃的なところもあれば、メロディは昭和歌謡や日本の民謡のようだったりして、一言では括りきれない個性の強さを感じました。小さい頃は一体どういう音楽を聴いて育ったんですか?
津野米咲(Gt.):父が音楽の仕事をしていたので家にありえないくらいたくさんCDがあったんです。幼稚園、小学校の頃からそれを片っ端から聴いていました。カーペンターズ、ビートルズ、スティーヴィー・ワンダー、小田和正、ユーミン、山下達郎……あと嵐とかモーニング娘。もあったな。
――カオスですね(笑)。
津野:小さい頃ってどれが洋楽で、どれがロックで、っていう区別ないじゃないですか。だから全部まとめて「音楽」として聴いていましたね。
佐藤千明(Vo.):私はディズニーが好きだったからディズニー映画のサントラとか聴いていました。ディズニーきっかけでヒラリー・ダフとかマイリー・サイラス、あとは海外のハイスクールミュージカルのサントラとかも聴いていましたね。意外でしょ(笑)。
――全然バンドじゃないですね(笑)。
佐藤:そう!私、赤い公園組むまでバンドの曲ってほとんど聴いたことがなかったんですよ。だから私のボーカルスタイルってあんまりバンドっぽくないんだろうな。
津野:「テレサ・テン声」だもんね(笑)。
佐藤:私のなかではバンド=赤い公園なんですよ。だから「君たち変わった音楽やっているね」って言われても全然わかんない。私にとってはこれが普通だから。
津野:かっけえな(笑)。
――赤い公園のメンバーは4人とも同じ高校の軽音楽部なんですよね?ベースの藤本さんとドラムの歌川さんが組んでいたバンドにまず佐藤さんが加入して、その後ひとつ先輩の津野さんが加わった。
津野:そうです。3人でやっていた頃はコピーだったんですけど、私が入ってからオリジナル曲もやるようになりました。
――当時のオリジナル曲はどんな感じだったんですか?
佐藤:今とあんまり変わんないよね。
津野:うん。去年リリースした1stフルアルバム『公園デビュー』に入っているのはほとんど最初の頃に作った曲だし。
――えええ!?じゃあ、初めから今の音楽スタイルだったということですか。でも、当時ライブとかでお客さんの反応はどうだったんですか?
津野:戸惑っていた(笑)。
佐藤:対バンさんのときはすごい盛り上がっているのに、私たちのときは若干引いてる、みたいな(笑)。おかげでハートは強くなりましたね。「お客さんが静かなのはちゃんと聴いてくれている証拠だ!」とか言って(笑)。
――当時から「あわよくばプロになりたい」って思ってたんですよね。だとすると、引いてるお客さんに対して歩み寄るという選択肢もあるじゃないですか。たとえば、もっとウケそうな曲を作るとか。でもそこで自分たちのスタイルを貫いたのはどうしてなんですか?
津野:貫いてないですよ。すごい変わったんです。
――どういうことですか?
佐藤:最初の頃は曲をちゃんと弾ければいいって思っていたところがあって、ライブで音源以上のことをやろうとしなかったんです。
津野:ずっと下向いて演奏していたもんね。
佐藤:でもそんなときに何組かのバンドと合同でカナダにツアーに行く機会があって、そこで他のバンドがものすごく楽しそうにライブをしているのを見たんです。あるインストバンドの方が、インストなのに突然歌い出したりして(笑)。それ見て「ライブって自由なんだ!」って思って。そこからすごいライブのやり方を変えたよね。
津野:自分たちの音楽を変えるって選択肢もあるかもしれないけど、私たちはそれよりもまず、音楽以外のところで変えられるところがあるんじゃないかって思ったんです。カナダでいろいろ吹っ切れて、帰国して最初のライブで佐藤はいきなり「かかって来いよ~!」って叫んでいました(笑)。
――(笑)。それでお客さんの反応は変わったんですか?
佐藤:変わりましたね、すごく。やっぱりちょっとでも自分たちが楽しんでないと、そういうところはお客さんに伝わっちゃうんだなって。だからとにかくそこからは好き勝手に、楽しんでやるようになりました。
津野:でも、カナダから帰ってきたら私たちがあまりに豹変していたから、やっぱりお客さんは戸惑っていましたけどね(笑)。
――お客さんの方を向くのではなく自分たちが楽しいようにやったらお客さんがついてきた、というのはとてもおもしろいですね。最近の赤い公園は、2月に『風が知ってる/ひつじ屋さん』、3月に『絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く』と立て続けにシングルを発表して、ライブだけでなく音源としても何かこう「次のステージに突入!」というような勢いを感じます。
津野:それは自分たちでも感じる。
佐藤:なんかいつの間にかそういうモードに入っていたね。
津野:去年フルアルバムを出して、そこでバンドを始めた頃から作りためてきた曲を音源化できたってこと。それと、初めて全国ツアーをやれたこと。そのあたりが次のステージに行くきっかけになったんじゃないかなと思います。なんか、去年1年間で自信がついたんですよね。だから今、すごくすがすがしい気分なんです、私たち(笑)。
赤い公園プロフィール
高校の軽音楽部の先輩後輩として出会い、佐藤千明、藤本ひかり、歌川菜穂の3名によるコピーバンドにサポートギターとして津野米咲が加入。そのまま現在に至る。2010年1月結成。東京:立川BABELを拠点に活動を始め、デモ音源「はじめまして」、ミニ・アルバム「ブレーメンとあるく」の2枚の自主制作盤をリリース。2011年10月にカナダツアー「Next Music from TOKYO vol.3」に参加。2012年2月ミニ・アルバム「透明なのか黒なのか」をEMIミュージック・ジャパンより発売。2012年5月ミニ・アルバム「ランドリーで漂白を」発売後、約半年の活動休止を経て、2013年3月1日活動再開を発表。2013年8月14日1st FULL ALBUM「公園デビュー」発売。2014年3月12日にニューシングル『絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く』を発売した。また、作詞・作曲・プロデュースを務める津野は、SMAP「Joy!!」の作詞・作曲や、南波志帆「ばらばらバトル」などの作詞・編曲等の楽曲提供を行うなど、活動の幅を広げている。
インタビュー撮影:伊藤圭