ソチ五輪のフィギュアスケート男子シングルで金メダルを獲得した羽生結弦選手。海外ではどれだけ注目を浴びたのか、ファンとしては気になるところだろう。これまでに「ニューヨーク・タイムズ」「ガーディアン」「USAトゥデイ」を紹介してきたが、今回は国際的な影響力を持つ経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)の記事に焦点を絞る。
WSJは2月15日版の記事で「Sochi Olympics: Japan's Hanyu Wins Men's Figure-Skating Gold」とのタイトルで、羽生選手の記事を紹介している。
「日本はフィギュアスケートの力をつけてきた」
経済紙らしく、数字を用いた客観的データで羽生選手の偉業をたたえている。過去30年の五輪における同種目の1位は、ほとんどがアメリカとロシアだったと記述。19歳での金メダリストは、1948年のサンモリッツ五輪において18歳で優勝したディック・バトン選手(アメリカ)に次ぐ若さであるとしている。
さらに、羽生選手と銀メダリストのパトリック・チャン選手(カナダ)が、フリーで互いにミスを犯しあったものの、チャン選手の方がミスが多かった結果、羽生選手が金メダルに輝いたとしている。ミスが出たにも関わらず羽生選手が勝利することができたという事実は、「いかに日本が『スケート力』をつけてきたのかを表している」としている。
安倍首相から羽生選手へのラブコールを写した写真?
またWSJは同日、日本国内の様々なトピックを紹介するページにおいて「Photos: Yuzuru Hanyu Grabs Gold in Sochi」と題した写真9枚を縦一列に並べて紹介する記事も掲載している。
序盤はキスアンドクライでのガッツポーズやお祈りポーズなど、羽生選手の魅力あふれる表情が写し出されたショットなどが並ぶ。後半には金メダル獲得報道の号外を日本で読む日本人の姿が写しだされた「Read all About it」、笑顔の安倍晋三首相が羽生選手に電話をかけているシーンを写したとしている「Yes Prime Minister」などの写真を掲載。羽生選手の金メダル獲得に至るまでの経緯と獲得後の反響が時系列で楽しめるつくりで、19歳の活躍をていねいに紹介している。
羽生選手の国際大会での"3冠"がかかる世界選手権
WSJの指摘どおり、確かに男子シングルにおいては、1984年のサラエボ五輪から2010年のバンクーバー五輪までの8回のうち、実に7回でアメリカもしくはロシア勢が金メダルを獲得。この2カ国以外の金メダリストとなると、92年のアルベールビル五輪のヴィクトール・ペトレンコ選手(ウクライナ)以来、誕生していない。
同種目初の日本人金メダリストとして、五輪の歴史に新たに名を刻んだ羽生選手は、26日からさいたまスーパーアリーナ(埼玉県さいたま市)で始まる「世界フィギュアスケート選手権大会2014」に出場する。既報の通り、男子五輪王者がそのシーズンの世界選手権に出場するのは、アレクセイ・ヤグディン選手(ロシア)以来12年ぶりだ。
そのヤグディン選手は2001-2002年シーズンにソルトレイク五輪と世界選手権、グランプリ(GP)ファイナルで"三冠"を達成している。羽生選手も昨年12月のGPファイナルと2月の五輪で金メダルに輝いている。もし世界選手権で1位になれば、ヤグディン選手と同じく五輪タイトルを含めた3つのタイトルを、1シーズンで獲得することになる。
羽生選手にとって、生涯忘れられないであろう19歳のシーズンは、文字通り記憶にも記録にも残る1年になるだろうか。