おしゃれなフランスパンのお店もいいけど、昔ながらの手作りの味が楽しめるパン屋さんも魅力的。自家家製の菓子パンや総菜パンがなぜかほっこりとして懐かしい。そんな町の老舗パン屋さんを食べ歩いてみた!

昭和20年代から三代続く目黒区の碑文谷ベーカリー

名物は特製カレーパン!

東京では昭和20年代後半から昭和30年代が、戦後のパン屋さん創業の勃興期。戦後復興によってガスインフラが整った東京で、パン職人の夫が復員した家を中心に、いたるところにおいしいパン屋さんがオープンした。しかし、世代交代や土地の高騰、業種変更などで多くのパン屋さんが東京から姿を消し、パン屋さんのオーブンから漂う香ばしいニオイも、すっかり過ぎ去った時代の残像になってしまった。

そんな流れに我関せず、というのが目黒の本町は目黒郵便局近くにある「碑文谷ベーカリー」。昭和20年代から3代続いている地元のパン屋さんで、開店はなんと朝5時30分! 昔から変わらぬ調理パンのラインナップは昼過ぎには売り切れ、それと同時に閉店してしまうので、夜行性の人はこのパン屋さんの存在すら分からないのでは。

名物の揚げたての特製カレーパン(140円)や、具にこだわったサンドイッチ(170円)はすぐに完売。わざわざクルマを使って自慢の食パンや調理パンを買いに来る山の手の客も多いので、お目当てのパンがあれば8時までにはお店に着いていたい。

菓子パン、総菜パンが並ぶ「碑文谷ベーカリー」

●information
碑文谷ベーカリー
住所: 東京都目黒区目黒本町4-12-12
営業時間05:30~21:30
定休日: 火曜日
アクセス: 武蔵小山駅から12分

学生たちを支えてきた総菜パン

続いてのお店は、東横線都立大学徒歩5分、昭和21年(1946)創業の「旭ベーカリー」。このお店も、都立大学東門の前にて変わらぬ風情で根を張るパン屋さんで、歴代の都立大生がお世話になっている。

人気のひとつがフルーツクリームパン(168円)。コッペパンに生クリームを挟み桃やみかんの乗った昔からある逸品だ。クリームの風味が昔懐かしく、「思い出の味」とでも称したくなる。また、昔からの人気商品のグー、チョキ、パーの形をしたじゃんけんパン(189円)も健在。学生のみならず八雲や柿の木坂のセレブも、焼きたての食パンやバケットを求めて通うそうだ。

種類豊富な総菜パンが並ぶ「旭ベーカリー」

菓子パンも人気。コッペパンに生クリームを挟み桃やみかんの乗った昔からあるフルーツクリームパン

●information
旭ベーカリー
住所: 東京都目黒区柿の木坂1-34-14
営業時間:8:00~19:30
定休日:日曜日・祝日
アクセス:東急東横線都立大学駅徒歩8分

今年で閉店というお店は朝4時頃開店

最後に紹介するのは、代々木駅徒歩2分の「文明軒」。代々木という土地柄、たくさんの予備校生がお世話になった創業80年の名店で、出勤途上のサラリーマンやOLたちにとっても、朝食・昼食に愛されている。

取材に訪れたのは朝9時だったが、既に商品は残りわずか。昼前にはほとんどのパンが売り切れになるそう。文明軒の全てのラインナップが見たければ、オープンする早朝(大体4時)には店を訪れるようにしたい。

人気は卵パン、オムレツパン(160円)、グラタンパン(150円)といった調理パン。アゲクリーム(110円)、ジャムパン(110円)メロンパン(130円)などの菓子パンの王道もある。調理パンはいまでは珍しくなった2つ折りとコッペ型の2種類だが、筆者としては2つ折りをオススメしたい。昔ながらの白い紙の袋もどこか懐かしい。ただし、人気のパンを買おうと思ったら早起きが鉄則だ!

店に立つ気さくなおばあちゃんにカメラを向けたら、「私は撮らないで! こんなオンボロでもお店の中を撮って……。たぶん今年で閉めるから」と悲しいお知らせ。ちなみに、このお店の前のマクドナルドは日本2号店。現存する最古のマクドナルドだそう。だからという訳ではないが、今年で終わりだなんて言わないで、文明軒さん!!

今年で閉店する予定という代々木の「文明軒」

「文明軒」の朝9時ショーケース。ほとんど売り切れ状態

お向かいのマクドナルドのハンバーガーに負けない人気の総菜パンの数々。出勤途中に購入するOLさんも多い

●information
文明軒
東京都渋谷区代々木1-37-2
営業時間:早朝~売切れ次第終了(11時には売り切れ多し)
定休日:日曜日・祝日

めまぐるしく都市の姿を変えていく東京で、地元にしっかりと根を張って盛業する昔からのパン屋さん。いつまでも、この姿を変えずに息づいてほしいものだ。

※記事中の情報は2014年2月取材時のもの