横山大観《霊峰不二》1937(昭和12)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

東京都渋谷区の山種美術館は5月11日まで、「『特別展』富士山世界文化遺産登録記念 富士と桜と春の花」を開催している。

円山応挙、横山大観、葛飾北斎、歌川広重、奥村土牛など約90点の作品を展示

同展は、2013年6月、ユネスコの世界文化遺産に富士山が登録されたのを記念して開催される、富士山を描いた作品を中心とした展覧会。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》1830(文政13)年頃 大判錦絵 山種美術館蔵(3月11日~30日展示)

日本一の高さを誇る富士山は、日本を鎮守する霊山として古来より信仰の対象であり、雄大な独立峰としての姿と周辺の景観の美しさは、万葉の時代から数多くの詩歌に詠われ、多くの芸術作品を生み出してきた。

富士山を題材にした絵画は、平安時代に歌枕として詠まれた諸国の名所を描く名所絵の成立とともにはじまったと言われる。その後、「伊勢物語」などの物語文学の発達とともに物語の舞台として描かれるようになり、また富士信仰の成立にともない、室町時代以降には「富士参詣曼荼羅図」のように、信仰の対象として描かれた。

江戸時代には、富士山の連作錦絵「冨嶽三十六景」を葛飾北斎が手がけ、歌川広重(初代)は「東海道五拾三次」の中に富士山を効果的に描いている。明治以降の日本画にみる富士山は、伝統的な技法や精神性の上に立ちながら、横山大観「霊峰不二」や奥村土牛「山中湖富士」のように、それぞれの画家の個性が反映された新たな表現が見られるようになっていった。

奥村土牛《吉野》1977(昭和52)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

同展では、「日本画にみる富士」「名所絵のなかの富士」「富士を仰ぎみて」「富士と桜と春の花」という4つの切り口から富士山を描いた作品を厳選して展示。日本人の心のよりどころともいえる霊峰富士に加え、武士道や大和心にも通じる美意識と深く関わって、古くから日本人に愛され親しまれてきた桜、そして「花の王」牡丹をはじめとする春の花の魅力も紹介する。

出品予定作品は、「富士」が式部輝忠、渡辺始興、円山応挙、司馬江漢、横山大観、奥村土牛、片岡球子。『浮世絵』が葛飾北斎、歌川広重、歌川貞秀。「桜」が《吉野図屏風》(サントリー美術館蔵)をはじめ松岡映丘、土田麦僊、奥村土牛、小野竹喬、速水御舟、千住博。「春の花」が鈴木其一、福田平八郎、山口蓬春など。全約90点。

会期は3月11日~5月11日。会期中に一部展示替えがあり、前期は3月11日~4月13日、後期は4月15日~5月11日。 浮世絵展示I期は3月11日~30日、II期は4月1日~4月20日、III期は4月25日~5月11日。開館時間は10時~17時(入館は16時30分まで)。月曜休館(4月28日と5月5日は開館、5月7日は休館)。場所は東京都渋谷区広尾3-12-36。入館料は一般1,200円、大高生900円、中学生以下無料。