多くの人が好きであろう肉。その肉を含む動物性たんぱく質は、我々の体の血肉になるとはいえ、摂(と)りすぎは禁物だ。一方で、ある年齢を超えると積極的に摂取した方がいいことも最新の研究でわかった。肉やチーズなどの動物性たんぱく質の「賢い付き合い方」を紹介する。
このほど、海外の様々な論文を掲載する「Cell Metabolism」の電子版に「Low Protein Intake Is Associated with a Major Reduction in IGF-1, Cancer, and Overall Mortality in the 65 and Younger but Not Older Population」との論文が掲載された。内容は、動物性たんぱく質とがんリスクとの関連についてまとめたものだ。
動物性たんぱく質とがんの関係は
研究は南カリフォルニア大学で生物学を教えているValter Longo教授らによるチームがまとめた。研究チームは6,000人以上の50歳以上の被験者を18年間にわたり追跡調査した。その結果、中年期に動物性たんぱく質を豊富に摂取していた50~65歳の被験者は、そうでない人たちに比べて4倍以上もがんで死ぬ確率が高くなっていたことが明らかになった。研究チームによると、4倍という発症リスクの高さは、喫煙者と非喫煙者のがん発症リスクの違いに匹敵するという。
65歳以上は十分な量を摂取すべき
また、中年期に肉類やチーズなどの動物性たんぱく質を豊富に含む食品を多く食べていた被験者は、そうでない人たちに比べて75%も多く死亡していたことも明らかになった。ただ、植物性たんぱく質とがんの相関関係は見られていないとのこと。一方で、65歳以上になると多くの動物性たんぱく質を摂取していても、がんや他の原因などで死ぬことが少なくなってきたとされている。
Longo教授は「高齢者は適正な動物性たんぱく質摂取による恩恵を受けており、十分な動物性たんぱく質を摂(と)ることは彼(女)らの健康を維持する上で重要なのだ」と話す。そして、中年は植物性たんぱく質を優先しながら、体重1キロあたり0.8gのたんぱく質を毎日摂取することが望ましいとまとめている。
ちなみに、農林水産省が発表している食肉鶏卵速報の平成26年3月版によれば、2012年度の日本人一人当たりの肉の年間消費量は、牛肉が5.9kg、豚肉は11.8kg、鶏(とり)肉は12.0kgとなっている(すべて概算で純食料ベース)。それより前の5年間の傾向と比較すると、牛肉と豚肉は横ばいで鶏(とり)肉は2007年度の10.7kgよりも1割ほど消費が増えている。こうやって数字としてみてみると、特に牛肉は思ったよりも消費していないと実感する読者も多いのではないだろうか。
「若い頃は焼き肉をガンガン食べていたけれど、年齢とともに焼き肉はきつくなってきたな……」という話はよく聞く。今回の結果は、長生きするにはその反応を正しく受け入れることが必要であることを示唆している。中年になったら植物性たんぱく質を、高齢期にさしかかってきたら動物性たんぱく質を意識的に多めに摂(と)るようにして、元気に長生きできるよう努めたいものだ。