江戸っ子は銭湯が大好き。社交場だったり、情報交換の場だったり、何より裸の付き合いは近所づきあいを円滑にしてくれる。しかも、入浴料はどこも、大人450円、小学生180円、小学生未満は80円の均一料金(サウナや付帯設備利用は別料金を徴収するとこもある)。では、今も残る江戸の面白銭湯へご案内!

「あけぼの湯」は東京最古の銭湯。駐車場も完備されている

東京最古の銭湯で江戸情緒に浸る

「田舎者でござい、冷者(ひえもの)でござい、御免なさいといい、あるいはお早い、お先へとのべ、あるいはお静かに、おゆるりなどという類、すなわち礼なり」。これは、式亭三馬が書いた「浮世風呂」の一節だ。そんな言葉が飛び交うような錯覚を覚える銭湯が、都営新宿線船堀駅にほど近い「あけぼの湯」

ここは安永2年(1774)創業、20代続いた東京最古の銭湯だ。最古といっても建て直したり、東京大空襲で焼失したり、現在はビルの中の現代風銭湯になっている。浴室は1階と2階にあり、1階脱衣所を基点に裸で移動でき、主浴槽の他にジェット、電気風呂、牛乳風酵素風呂、天然温泉の露天風呂がある。

湯は?というと、東京の温泉では珍しい弱アルカリ単純泉。2階にはサウナ(別料金,大人300円、子供200円)も設置されており、スーパー銭湯が小さくなった感じだ。トイレや細部にいたるまで清潔に管理され、さすが老舗240年の歴史はだてではない。

「あけぼの湯」の2階にはサウナも完備(別料金)。水風呂に入ってあずま屋で一息

壁面に描かれたデザインも味があっていい!

information
あけぼの湯
住所:東京都江戸川区船堀3-12-11
営業時間:15:30~00:00(日曜日・祝日は14:00~)
定休日:毎週木曜日
アクセス:都営地下鉄新宿線船堀駅下車徒歩6分

下町の豪華版銭湯で粋にビールでも

所変わって、地下鉄銀座線稲荷町下車徒歩2分の「寿湯」は、上野という都会にありながら銭湯の常識を越えた様々なお風呂が楽しめる新しい空間を目指している。男女の各浴場には、白湯、薬湯、水風呂、サウナ、露天風呂を備え、男湯には塩サウナも完備。休憩室ではビールで一杯も可能だ。

そのうえ、リンスシャンプー、ボディーソープ、化粧水、乳液やリキッド、トニックまで無料という徹底ぶり。15分までならインターネットも無料となっている。

どーん風格のある看板が目印の「寿湯」

都内の銭湯最大級の広さを誇る「寿湯」の露天風呂

information
寿湯
住所:東京都台東区東上野5-4-17
営業時間:12:00~25:30
定休日:第3木曜日
アクセス:地下鉄銀座線稲荷町下車徒歩2分

大田区の銭湯は"せんとう"モード!

いま、銭湯を取材する上で外せない地域は大田区。町工場とともに東京一と言っていいほど銭湯が元気な地域だ。大田区内の銭湯49店が浴場連合会、行政とともに様々なイベントやアイデアで銭湯を盛り上げている。

大田区では、区内の銭湯側を歩く「銭湯ウォーキング」を実施。後援に大田区が付き、京急や東急、各商店街も名を連ね銭湯による地域おこしを狙う。今年の2月16日には第10回目が実施され、来年も2月に第11回目を予定している。

また、羽田空港のハブ化によって外国人観光客も銭湯に呼び寄せたいと、「おおた銭湯マップ」を大田観光協会が制作。マップは羽田空港国際ターミナルをはじめ、ホテルや行政の窓口にも設置している。各銭湯のホームページも設備や売りが一目瞭然で分かるように作られており、まさに“銭湯モード”突入だ!

羽田空港近くの銭湯は朝6時にオープン

この大田区にはいくつもの天然温泉銭湯がある。羽田空港からほど近い京急空港線糀谷駅徒歩5分の「幸の湯」もそのひとつ。

毎朝6時から営業。温泉は薄い茶褐色で、見た目からも高い効能が期待される。サウナは日替わりでラベンダー、ローズマリーなどの香りが楽しめるハーブサウナだ。露天風呂、電気風呂、水風呂、ボディマッサージ風呂など設備も充実している。ちなみに泉質はカリウム、カルシウム、マグネシウム-塩化物冷鉱泉とのこと。

「幸の湯」は毎朝6時開店。銭湯ファンがこよなく愛す、朝風呂を提供している

「幸の湯」の広い露天風呂。サウナは日替わりハーブでリフレッシュ!

information
幸の湯
住所:東京都大田区西糀谷1-25-15
営業時間:6:00~23:00(11:00~14:00は昼休み)
定休日:月曜日
アクセス:京浜急行空港線糀谷駅より徒歩5分

銭湯にリラックススペースがドッキング!

最後に紹介するのが、京急雑色の駅から徒歩5分のところにある「nu-landさがみゆ」。10時に開店し、8種類の湯殿(ゆどの)と天然温泉を堪能できる湯処だ。お湯はまるでお醤油やコーラのように真っ黒な黒湯だが、実はミネラルが豊富で健康を増進してくれる効果もあるとか。

深さおよそ数100~1,000メートルの地下から沸くお湯は身体の芯までよく温めてくれるので、浴後も湯冷めしないのが特徴。こんな天然温泉に450円で入れるとは驚きである。

湯上がりには2階にマッサージやカラオケルーム(1時間1,000円)、テレビルームや休憩食事処、日本庭園、90人収容の大宴会場まであるのだからここまでくるとスーパー銭湯も顔負けだ! ただし、2階利用は別料金。1階の入浴料とサウナ利用、タオルと2階施設を含めた全館利用パックの料金は、平日1,250円、土・日・祝日が1,550円。毎日18時からはこれがなんと1,000円になるという。

「nu-landさがみゆ」は、銭湯にスーパー銭湯がドッキングしている

ミネラル豊富な黒い湯の天然温泉が東京都の公衆浴場入浴料で利用できる

information
nu-landさがみゆ
住所:東京都大田区仲六郷2-7-5
営業時間:10:00~23:00
アクセス:京浜急行雑色駅より徒歩3分

庶民が育ててきた銭湯文化。ほとんどの家が内湯になった東京で、癒やしやストレス解消、地域の新しいコミュニケーションの広場として復活しようとしている。

※記事中の情報は2014年2月取材時のもの