「2013年 働く男のお悩みランキング」(OKWave総合研究所)によって、部下に気を遣う中間管理職像が明らかになった。「職場の部下への接し方について」のお悩みが多いようだ。
「お悩み」のパターン
そもそも、なぜ上司は部下の接し方に悩むのだろうか? 考えうる部下との接し方でのお悩みは…
(1)部下の「叱り方」や「ほめ方」
(2)個性や能力に合わせた指導方法(適性が全くない、レベルが高過ぎる、融通がきかない)部下への対応
(3)仕事の与え方、「やる気」の維持をさせる方法
(4)年上の部下、女性の部下との接し方
と、大きくだいたい4つのパターンに整理されるだろう。中間管理職としては、どの悩みも簡単には解決しにくく難問に思えるのも当然だと思う。
部下への「期待」の3パターン
部下との「接し方」に悩む場合の多くが、部下への「期待」と関係する。私の場合、自分自身があまり悩み過ぎないためにも、部下に対して3つのパターンの「期待」を意識している。
(1)社会人(会社員)として最低限守るべき「期待」
(2)「普通はこれくらいやるよ」という「期待」
(3)「ここまでやってくれたら言うことない」という期待値を超える「期待」
1つ目の「期待」は「遅刻をしない」「挨拶をする」「勤務表を遅れずに提出する」など、社会人として当たり前の「期待」のことだ。幸いこれまでに、このレベルの「期待」を裏切られたことは少ない。仮にこのレベルの期待を裏切り部下であれば「自分が悩む」必要は少ない。相手に「非」があり。会社は「義務教育」の場ではない。社風や環境にもよるが「ルール」に基づき厳正な対応をすればよい。悩むだけ自分が損だ。
2つ目の「期待」との格闘が一番難しい。「普通はこれくらいやるよな」というレベルのことを「やらない」(あるいは「やれない」)部下との関係だ。管理職である以上、「会社の業績」が何よりも重視される。一方、チーム運営や人間関係への配慮も必要だ。部下の能力不足を嘆く人もいるだろう。自分自身が「滅私奉公型」の会社人間だが、部下が正反対で「プライベート重視型」で、板挟みになることもある。
こうした場合「普通」という「ふわっ」とした感覚を共有できるかどうかがポイントになる。部下に「悪気」がない場合も多い以上「オフ」でのコミュニケーションや、媒介者を通じたコミュニケーションを通じて、部下の現状の「成果」が「期待(普通)以下」だと伝えていくしかない。くれぐれも威圧的になったり、逆に回りくどくなったりしてもいけない。
ただ、自分にとっての「普通」が、部下にとっての「普通」ではないことを、よく理解するだけで、自分の悩みは楽になる。
3つ目の「期待」は、羨ましい「悩み」でもある。「普通のこと」は、ほぼこなしてくれる部下に、「期待以上」の成果を求めるからこそ生じる「悩み」だ。このような場合は、これまでのコミュニケーションとは発想を変えて接してみると良い。部下が自分に求めている「期待」は何だろう? 自分がどういう「サービス」(あえてこう呼ぶ)を提供すれば、更に良い結果を出してくれるか? 特に年上の部下、優秀な部下に対しては、腹を割って「自分がコミュニケーションに悩んでいる」ことを伝えた上で「どうしたら問題を解決できるか?」と先回りをして聞いてしまうことで解決することもある。
経験上、外国人の上司などにこの手のタイプが多くいた。「部下と上司」という関係性ではなく、「ビジネスパートナー」という視点で部下に接しているからこそ、フランクなコミュニケーションができるのだろう。
<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。