北九州の一部には、パンの王様として君臨するパンがあるという。一部では「メロンパンの別称」との噂(うわさ)もある謎のパンの正体とは……?
外国人富裕層にも支持されるハイカラなパンを!
「キングパン」の名で地元の人々に親しまれているそのパンの謎を解き明かしてくれたのは、元祖キングパンの店として知られる「ベーカリーヤング」(通称「ヤングパン」)の店主・時永昌二さんだ。時永さんによると、キングパンが誕生したのは今から約60年前。門司港で営業していた「ひさのパン」の一番弟子が考案したのだとか。
「当時の港は非常に栄えていて、門司には外国から来た富裕層が多く暮らしていたんです。そこで、『彼らにも喜んでもらえるハイカラなパンを作ろう!』と意気込んだ先代が、その頃高級だったクッキー生地を使い、プレミアム仕様のパンを作ったんです」。
「キングパン」の名前にはもちろん、パンの王様になってほしいとの願いが込められていた。先代の意志を継ぎ、今でも昔ながらの製法で変わらぬ味を提供している2代目が、「ベーカリーヤング」店主の時永さんというわけだ。
メロンパンとキングパンはこんなに違う
ところでこのキングパン、見た目の相似ぶりからも、メロンパンと同じものだと思っている人が多数存在するというが、実際のところどんな違いがあるのだろう?
「キングパンは、パン生地の上にクッキー生地を乗せた後、加湿室(ホイロ)にいれて発酵させてから焼きますが、メロンパンは常温(乾燥ホイロ)で発酵させてから焼きます。ですので、キングパンの方が、外側の生地が硬くハリがあります。
味にも大きな違いがあります。メロンパンは表面にグラニュー糖をまぶしてあるので甘いですが、キングパンはそんなに甘くありません。でも、上にアーモンドを乗せているので香ばしさたっぷりです」。
隣の小倉でも買えない門司だけの味
ちなみに、同じ北九州市内とはいえ、隣接した小倉のキングパンは味が全く異なるそうで、元祖と言われるこのパン食べたさに、わざわざ電車に乗って買いに来るファンも多いのだとか。「小倉から来店してくれる若い子たちは、『買って帰ってみんなに見せるんだ』って言ってましたね」との逸話にも何だかほのぼのさせられる。
ちなみに、「ベーカリーヤング」では「キングパン」(120円)も「メロンパン」(120円)も販売しているが、10:1の割合でキングパンが優勢なのだとか。確かに、facebookのファンページも、キングパンファンのコメントでにぎわっている。
他にも食べてみたいパンがたくさん!
もちろん、その他にも人気のパンが多数そろう。魚肉ソーセージを使用した「ソーセージパン」(130円)は、どこか昔懐かしい味で食べるたび心がほっこりする。ココア味のメロンパン「ココアメロン」(130円)は、中に白あんが入ったゴージャスな菓子パン。遠方から足しげく買い求めに来る人もいるんだとか。
そして何といっても、パンのことを話している時の時永さんの楽しそうな声が印象的。ああ、この人は本当にパンが好きなんだなあということがひしひしと伝わってくる。この店を愛しているお客たちも、そんな店主の人柄にも惹かれているに違いないのだ。