ソチ五輪のフィギュアスケート男子シングルで日本人初の金メダルを獲得した羽生結弦選手。甘いルックスと華麗な演技も手伝ってか、国内では金メダル獲得のニュースは大々的に報じられたが、海外ではどうだったのだろうか。前回の「ニューヨーク・タイムズ」に引き続き、今回はイギリスの大手新聞「ガーディアン」の記事に焦点を絞る。
「陽」の13日
ガーディアンは2月13、14日付けの記事で、羽生選手に関する記事を大きく取り扱っている。
13日は「Japan's Yuzuru Hanyu poised for gold medal after record men's skating score」との題で、羽生選手がショートプログラム(SP)で史上初となる100点超えを達成したことを紹介。スコアがわかった際、キスアンドクライで両拳を握り締めてうれしそうな表情を浮かべている羽生選手の写真が大きく使われている。
記事内では、エフゲニー・プルシェンコ選手(ロシア)が腰痛のためにSPを回避した約2時間後に、羽生選手がSPで史上最高スコアとなる101.45をたたき出したと記されている。さらにSPのハイライトとして、精かんな顔で生き生きと演技している羽生選手の写真をジャンプ時含めて3枚掲載。羽生選手を厚めに紹介しているのが印象的だ。
「陰」の14日
14日は「Japanese figure skating star Yuzuru Hanyu wins gold despite falling twice」との題で、フリーに関する記事がまとめられている。日本語訳すると「日本フィギュアスケートのスター・羽生結弦は2回転倒したにも関わらず、金メダルを手にした」といったニュアンスだ。
皮肉めいた表現からもわかるように、やや辛口な記事が本文にも書かれている。羽生選手が序盤、4回転サルコーとトリプルフリップで転倒していたため、演技終了後の右手を氷に置いてひざまずいたポーズが、まるでがっくりとうなだれているかのようと言わんばかりに「確かに彼は(その時点では)金メダルを失った」と表現した。
ただ、羽生選手の後に控えていた世界選手権3連覇中のパトリック・チャン選手(カナダ)が「3回のミスを犯した」ため、「羽生選手のトータル280.09というスコアは、彼に金メダルを与えるのに十分だった」と記した。記事内では羽生選手とチャン選手の転倒した写真が2枚ずつ掲載されており、前日とは打って変わって羽生選手に対する厳しい姿勢がうかがえる内容となっている。
読者も「2回の転倒」に着目
読者のコメントには「どうやったら、2回も転倒して金メダルを獲得できるのか誰か教えてくれ」という厳しいコメントもある一方で、「確かに彼は2回も転倒したが、そのほかのパフォーマンスやSPの演技はファンタスティックだった」と擁護する声もあった。タイトルを含め、同紙の記事内容が波紋を呼んでいるようだ。
一方で、海外のフィギュア関係者はどういう反応を示したのだろうか。2006年トリノ五輪で同種目5位になり、日本でも熱狂的なファンを持つジョニーウィアーさんは自身のツイッターで、「Congratulations Yuzu! So honored and proud to have designed your Olympic costume」(おめでとう、Yuzu! 君のオリンピックでのコスチュームをデザインできたことはとても名誉だし、誇りに思うよ:英文は原文、訳は編集部)と投稿。ツイートの最後に「スーパースター! 」と付け加えるなど、我がことのように羽生選手の快挙を喜んでいる。
280.09という優勝スコアのすごさは?
実際、羽生選手の優勝スコアは過去の大会と比べてどうなのか。今大会の女子シングルにおいて、アデリナ・ソトニコワ選手(ロシア)に約5点差で敗れて銀メダルとなったキム・ヨナ選手の地元・韓国で、150万人超が「採点見直しと判定の調査」を求めて署名したことからもわかるように、フィギュアスケートの採点基準は素人目にはかなり難しい。
その採点基準を含むフィギュアスケートのルールは、五輪後に大きく改正されることがしばしば見られる。そこで、あくまでも参考値として前回2010年バンクーバー五輪後の主要大会の優勝スコアを見てみよう。
世界選手権
2011年:280.98/2012年:266.11/2013年:267.78(2014年シーズンは3月26日より開幕予定)
グランプリファイナル
2010年:259.75/2011年:260.30/2012年:269.40/2013年:293.25
2大会の近年の優勝スコアを見る限り、ソチ五輪での羽生選手の280.09という優勝スコアは、決して非難されるような数字ではないと言ってよさそうだ。