モデルで歌手の土屋アンナが、3月11日にミニアルバム『Sugar Palm』をリリースする。土屋は発売を目前に控え、楽曲に込めた思い、そして"誕生日と東日本大震災"について、胸の内を明かした。

ミニアルバム『Sugar Palm』のリリースを目前に控え、コメントを寄せた土屋アンナ

同作に、「Melt Into Blue」という曲がある。これまでライブでのみ披露されてきた楽曲で、今回が初の音源化。その起源は、東日本大震災にあるという。

「私は海が大好きなのね。でも、なかには震災のときの経験から海が嫌いになった人たち、怖くなってしまった子供たちもいると思う。それでもあそこに住んでる人たちは、ずっと海と関わっていかなきゃならない。そこで私は、自然には怖い部分もあるけど美しい部分もたくさんあるんだってことを歌いたかったし、そういった両方の考えを持つことが大事だってことを歌で表現したかった」

土屋は、ライブや物資的な援助など、復興支援活動も積極的に行ってきた。そこでの経験がこの曲を育て、歌に対する姿勢に少なからず影響をもたらしたのだという。

「被災地のみんなの前で歌うときに『何もできなくてごめんね』という気持ちも当然のようにあるの。だけど、私が生きてるのはエンターテインメントの世界だし、そのエンターテインメントで少しの時間でも気持ちいいなと感じてくれる人たちがいるんであれば、そこに足を運びたいなと思った。しかも実際に足を運ぶことで得られる出会いというのもあったし、たくさんのコミュニケーションもあった。私が何かを届けるだけじゃなくて、私自身がもらうものもたくさんあったの」

3月11日は、東日本大震災が発生した日であると同時に、土屋が生まれた日。2014年3月11日で土屋は30歳を迎える。震災発生から、土屋は誕生日が訪れるたびにさまざまな思いと向き合ってきた。

「正直に言うと、3月11日が来ても素直に喜べないところはあるんです。だけど、やっぱり誕生日は喜びたい。だったら、悲しみも喜びも両方とも組み合わさってるのがこの日だっていう考え方をすればいいのかなって。それをちゃんと自分のなかにのみ込むことが大事なんだなって、思えるようになったかな。しかも私の場合、表現することしか能がないし(笑)、それをちゃんとやることで何かにつながればいいなと思っていて」

海には恐怖と同時に美しさも共存すると説く土屋。2011年3月11日を境に、彼女の誕生日にも喜びと悲しみという相反する感情が生まれた。土屋は同曲について、「どんなことも解釈は人それぞれだと思うけど、これは、"そういうふうに解釈してもいいはずじゃない?"という私からのひとつの提案ともいえるかもしれない」とあらためて振り返り、「私はこれからもいい曲を歌い続けていきたいし、日本だけでなく海外でも認められるようになりたい。そのためにも、もっともっと上手くなりたいし。持って生まれたものを大事にしながら、自分で限界を決めてそこで諦めるんじゃなくて、どこまでも突き詰めていきたいんです」と力強い言葉を残している。

『Sugar Palm』が意味するのは、3月11日の誕生果・砂糖ヤシ。花言葉のように果物言葉があり、砂糖ヤシには"自由"や"穏やかさ"という意味がある。ミニアルバムとDVDからなる変則的な作品で、これまでライブでのみ披露されてきた2曲「UP TO YOU」「Melt Into Blue」の初音源化に加え、完全新曲「Sugar Palm」を収録。ボーナストラックには2012年にABSホールで行われた公開レコーディングの音源が収められ、DVDには特典映像として、2012年12月にブルーノート東京で行われたライブ映像が収録される。