東京大学社会科学研究所はこのほど、「たばこ税率の引き上げとその後の喫煙行動の変化」に関する分析結果を公表した。
分析の基となった調査は、2007年より毎年実施している「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の一部。同一の対象者に繰り返し尋ね続ける「パネル調査」による。調査対象者は2007年時に20~40歳の男女であり、喫煙行動についてたずねた2007年、2009年、2011年、2013年のすべての時点で回答した男性1,213名、女性1,589名となる。2013年版は、同年1月から3月にかけて実施した。
2010年のたばこ増税で喫煙者は激減
「調査年別の喫煙率」をみた。男性は、たばこ税率が大幅に引き上げられた2010年をはさんだ2009年から2011年にかけて、喫煙率の減少が大きい。しかし、2011年と2013年の間では喫煙率に変化はみられない。また、女性は、2007年から2009年にかけて、また2009年から2011年にかけて徐々に喫煙率は減少。しかし、女性についても2011年と2013年の間には喫煙率の変化はみられず、わずかに反転傾向がみられた。
「2つの隣接する調査年において、喫煙者のうち何%が非喫煙へ変化したのか」を男女別にみた。 男性は2009年から2011年にかけて非喫煙化した者が19%ともっとも高い。女性は、2007年から2009年にかけてと、2009年から2011年にかけての非喫煙化の割合がそれぞれ19%、23%と大きく、2011年から2013年にかけては12%と10ポイント近く減少している。
2011年から2013年には喫煙者・喫煙本数とも増加に
「喫煙者の喫煙本数の変化」をみた。男性は、減煙者の割合が2007年から2009年にかけて17%、2009年から2011年にかけては18%。しかし、2011年から2013年にかけては11%となった。一方、増煙者は、2011年から2013年にかけては17%と大きく増加している。
女性の減煙者の割合は、2007年から2009年にかけては10%、2009年から2011年にかけては12%、2011年から2013年にかけては10%と横ばい。増煙者の割合は2007年から2009年にかけては10%、2009年から2011年にかけては7%と減少傾向にあったが、2011年から2013年にかけては12%となり、増加傾向にある。
「2009年から2011年にかけて禁煙した者が、その後再び喫煙するようになったのかどうか」をみた。禁煙した者のうち、男性では26%、女性では29%と、男女ともに3割近くの者が再び喫煙するようになっていることがわかる。
「2009年から2011年にかけて、たばこの本数を減らした者は、その後どのような喫煙行動をとったか」をみた。いったんは減煙した者のうち、男性では約5割が、女性では約4割が再び本数を増やしていることがわかる。一方、禁煙やさらに減煙した者は少ないといえる。
以上の結果から、たばこ税率の引き上げによる非喫煙化・減煙化・増煙化抑制に対する効果は一時的。さらなる禁煙化・減煙化の推進に対しては効果を持たない可能性があるとしている。同調査の詳細は、同研究所のWEBサイトで閲覧することができる。