すっかり安価かつ大容量化の進んだUSBメモリーは、手軽に持ち運べるリムーバブルストレージとして広く普及している。だが、適当に 選んでしまい、予期せぬトラブルに巻き込まれたことはないだろうか ?USBメモリーの記憶域として使われているフラッシュメモリーは原理上、書き換え回数に制限がある。低品質のUSBメモリーは、思いのほか少ない書き込み回数で劣化が始まることもあるらしく、ある日データが消えてしまうことを経験した方も多いのではないだろうか。
もちろん、USBメモリーを買い換えれば済む話だが、それでも重要なデータが必要な場面で呼び出せないのでは元も子もない。ビジネスシーンなど確実性を求められる場面にUSBメモリーを使うのであれば、あまり耳にしないメーカーよりも、メモリー製品を専門に扱うメーカー製USBメモリーを選択すべきである。数あるUSBメモリーメーカーの中でも高品質な製品をリリースすることで知られているKingston Technologyは、1980年代にメモリーチップの供給を目的として設立した専門メーカーだ。
現在でもメモリー関連製品を扱う企業としては世界最大級の単独メーカーだが、Kingston Technologyの信頼性はモジュール作成時に数多くのテストを行うことで品質を維持し、信用を培ってきた。同社は多数のメモリー製品をリリースしているが、中でも個人向け最上位に位置するUSBメモリーが、「DataTraveler HyperX Predator」である。リードスピードは240MB/sec(メガバイト秒)、ライトスピードは160MB/secと圧倒的な速度を誇るUSB 3.0対応USBメモリーだ(図01)。
図01 「DataTraveler HyperX Predator」の512GBモデル「DTHXP30/512GB」の内容。USBメモリー本体に加え、HyperXキーチェーンとUSB 3.0延長ケーブルが付属する |
容量も512GB(ギガバイト)と1TB(テラバイト)の2種類を用意。これだけのサイズがあれば、作業内容やデータライブラリ全体を持ち運ぶことも可能だろう。よく、「SSDをポータブルケースに入れれば、コスト的にも安く済む」という意見を耳にするが、かなり丈夫なポータブルケースでなければ、仕事用のバックへ気軽に放り込めるUSBメモリーの利便性を超えるのは難しい。その点「DataTraveler HyperX Predator」は最大寸法7.2センチとコンパクトなため、邪魔になることはないだろう。なお、厚みのあるデザインは隣接するポートと干渉しそうだが、USB 3.0延長ケーブルも付属するので不要な心配だ(図02~03)。
図02 本体をスライドさせて閉じた状態。普段USBメモリーだけを持ち運ぶ場合、USBコネクタが突出しないため、堅牢性も増す |
図03 他のポートと干渉する場合は、付属するUSB 3.0延長ケーブル経由でUSBメモリー本体とPC本体を接続する |
一見するとPCがUSB 3.0ポートを備えていない場合、「DataTraveler HyperX Predator」を選択するメリットは少ないように見える。だが、USB 2.0ポート経由で本製品を使用する場合でも、USB 3.0デバイスは後方互換性を備えているため、そのまま使用可能。さらにUSB 2.0の最大データ転送スピードは480Mbps(メガビット秒)、つまり60MB/secである。本製品の優位性がこのようなところにも見られる。
本製品をUSB 2.0環境で接続する場合、リードスピードおよびライトスピードは30MB/secがスペック上の最大値だ。Kingston Technologyの社内テストによれば、300枚×約4MB(メガバイト)のJPEG形式画像のコピースピードは、標準的なUSB 2.0ストレージデバイス に対して約4倍高速。約12GBの動画ファイルのコピースピードは約6倍高速になったそうだ。
USB 2.0でも速く、USB 3.0でもさらに高速転送が可能になる「DataTraveler HyperX Predator」だが、今回は、ベンチマークツールで実際に計測してみようと思う。環境はIntel Z77 Expressチップセットを搭載したWindows 8.1マシン 上(CPU Core i7-3770/メモリー/ GB DDR3-1333 SDRAM×4/OS Windows 8.1 x64)で、ひよひよ氏の「CrystalDiskMark 3.0.3a」を使用している。結果はご覧のとおり、本体仕様の240MB/secを大幅に超える約300MB/secのシーケンシャルリードスピードを達成。シーケンシャルライトスピードも、約190MB/secと同じく本体仕様を超えている。
さらに4KB(キロバイト)のランダムリードスピードは、QD(Queue Depth)=1、QD=32の場合でも約11MB/secに達した。IOPS(1秒間に処理可能なリード/ライト命令数)に換算すると約2,900となる。本製品はWindows To Go認定ドライブではないものの、Microsoftのハードウェア要件を踏まえると、「1秒あたり数千のランダムアクセスI/O操作」とあるため、Windows To Goインストールメディアにも使えるのではないだろうか(図04~05)。
1つだけでは正しく測定できないため、EFD Softwareの「HD Tune Pro 5.50」で測定。「File Benchmark」を選択して実際の転送速度を確認することにした。ちなみにファイルサイズは500MB、データパターンはゼロを選択している。ご覧のようにCrystalDiskMarkよりは若干低い数値となったが、それでも本体仕様の160MB/secを超える結果となった(図06~07)。
「必要な容量を満たすUSBメモリーなら何でもよい」という考えではなく、高速かつ長く使えるUSBメモリーを選びたいユーザーは、「DataTraveler HyperX Predator」を選択肢に加えてもいいだろう。