ワコムは、2月13日~16日の期間にパシフィコ横浜で開催された、カメラと写真映像の情報発信イベント『CP+(シーピープラス) 2014』にて、4名の著名フォトグラファーを講師に招いたフォトレタッチのセミナーを開催。ここでは、茂手木秀行氏の「Wacom × GANREF コラボレーションセミナー あなたの写真が変わる"劇的仕上げ術"」と題したセッションを紹介する。
茂手木氏は、デジタルフォトの先駆者であり、現在もファッション・コマーシャル・エディトリアルの各分野をまたにかけて活躍しているフォトグラファー。また、デジタル一眼レフカメラと写真の総合サービスサイトである「GANREF」にて記事執筆などの活動も行っており、今回のセッションはワコムとGANREFのコラボレーションとして開催された。
Cintiqをキャリブレーションされたディスプレイとして扱う
実演で使用された環境は、Windows8搭載の液晶ペンタブレット「Cintiq Companion」に、「PhotoshopCC」という組み合わせだ。茂手木氏は「写真で大切なのは、自分が思っている色やトーンを表現すること」だとして、そのためにCintiq Companionを含めたCintiqシリーズを使用する前に、キャリブレーションを行うことの大切さを説明した。
Cintiqシリーズは一部の機種にハードウェアキャリプレーション機能が搭載されており、非搭載機種でもソフトウェアキャリブレーションが可能だ。茂手木氏の場合は、業界標準といわれるEIZOの液晶ディスプレイ「ColorEdge」に合わせて調節しており、これによってCintiqを単なるタブレットではなく、「キャリブレーションされたディスプレイに直接手を触れて操作を行っている」という環境を構築しているとのこと。
Rawデータを液晶ペンタブレットでレタッチ
実演では、現像を行う前のRawデータを液晶ペンタブレットでレタッチする作業を見せてくれた。Rawデータで行う理由は、「レタッチはデータの破壊と同じで、やればやるほど、トーンジャンプ、バンディング、カラーの潰れ、ノイズなどが発生します」と解説し、そのためにデータ量の多いRawデータで作り込んでおき、Photoshopでは最終的なブラッシュアップのみを行うとのことだ。また、最後に画像を統合する際は、モードを16ビットに変換してから統合し、その後に8ビットへ戻すことでトーンが奇麗に繋がる、という手法も紹介している。
Rawデータのレタッチは、長時間露光や超高感度の作品によく見られるセンサーのゴミや高感度のノイズといったゴミ取りを行ってから、カラーやコントラストの補正といったクリエイティブな作業へ進むという流れだ。どちらの作業でも液晶ペンタブレットを使用するが、特にゴミやノイズの除去を手早く済ませることができるため、その後のクリエイティブな作業に時間を掛けることが可能になるという。
コントラストや明瞭度などの調整は、PhotoshopCCのRawデータ現像機能「Camera Raw」の各種設定方法や手順などを、砂漠の写真を例に解説。ポイントとしては、部分的な補正を行う前に各種補正機能を活用して全体の補正をできる限り行っておくこと。そのほか、トーンカーブの調整はデータ量の多いRawデータで作り込んでおく、色潰れをチェックしながら作業を行う、美しいプリントは白飛びや黒潰れが発生していない状態で行えるなど、様々な「仕上げ術」が紹介された。
Cintiq Companionの活用方法
最後に、Cintiq Companionならではの活用方法を解説。例えば、カメラの画像を直接取り込める機能を活用し、長いケーブルを使ってカメラとCintiq Companionを接続すれば、車の中から車外の三脚にセッティングしたカメラで撮影が行える。気温が低い場合などで、一瞬のシャッターチャンスを待ち続ける撮影には有効な方法だ。さらに、撮影したその時にしか分からない夕方や明け方の色合いをその場で確認・保存することで、シャッターを切った時の気持ちも保存できると語ってくれた。