7つのミッションをクリアせよ!
その肝心のミッションだが7つあり、「感染症の広がりを防げ」、「脳を解明せよ」、「コウモリの"超"能力を解明せよ」、「投薬のスケジュールを組み立てよ」、「病気の予兆を見極めよ」、「余震を予測せよ」、「ホタルとシンクロせよ」となっている。
ミッション1は「感染症の広がりを防げ」は、新型インフルエンザなど、パンデミック(感染症の大流行)の危険性があるのは、交通網の発達がもはや地球規模に至っており、人の移動が活発な現代社会が抱える課題の1つである。そこで事前に対策を立てる際に、人から人へと感染する様子を数理モデルで表して予測に役立てようというのがこのミッションの内容。ただし、ウイルスの種類や人の移動パターンなど、考慮すべき要素は山ほどあり、果たしてどのように解決できるのかは、見てのお楽しみだ。
ミッション2の「脳を解明せよ」は、おそらく今回のコンテンツの中で、子どもたち人気で1、2を争うであろうと思われる。それでいて、大人もハマる脳トレ系風パズル+ランキング表示という内容が特徴だ(画像7・8)。パズルの内容は、仲のいい悪いがそれぞれ異なる10種類の動物(のコマ)を、どのように配置すると一番どの動物にとっても問題のない(ストレスの発生しない)組み合わせになるかというもので、「平和な動物園」を作るのが目標である。
ちなみに、こうした組み合わせ問題を解くのは、現在のコンピュータはあまり得意としていない。すべての組み合わせを力任せにチェックしていくので、動物が10匹の場合は362万8800通り(10の階乗:10!)となり、1秒間に1万パターンをチェックできるとしても、6時間を越えてしまう。これが20匹になった日には、組み合わせは約24京通りとなり、1秒回に1万パターンでは約770万年という地質学的な時間がかかってしまうのだ。
そうした問題を解くことを得意とするのが、平和な動物園のすぐ右側にある基盤の「カオス脳」である。ニューロンを模倣した素子が100個つなげられており、またアナログ回路が組み込まれている点が特徴のコンピュータだ。動物の数が増えても計算時間はあまり影響を受けないのが特徴である。カオス脳の詳細や、どうやって理想の動物園を作り出せるのかなども詳しく解説されているので、興味のある人は要チェックだ。
次のミッション3「コウモリの"超"能力を解明せよ」は、ミッション名の通り、周囲の環境を超音波で把握するコウモリの能力にフォーカスした内容だ。コウモリは超音波を放射し、その反射音を聞いて標的の方向や距離を認識し、蚊などの小さな虫を飛びながら次々と捕らえていくのだが、それを数理モデルで表現している。コウモリの持つこのソナー能力を解明できれば、小型ロボットなどの工学分野に応用できるというわけだ。
続くミッション4の「投薬のスケジュールを組み立てよ」は、がんの化学療法、つまり投薬を題材としたコンテンツだ。近年、「前立腺がん」患者が急激に増えており、薬でがん細胞の増加を抑えることができるのだが、投薬を続けていると次第に薬剤耐性によって効果が弱くなってしまう。そこで、投薬の中断と再開を繰り返す治療法が提案されているが、薬の効き方や年齢など、個人差があるがん細胞の増減に合わせて、投薬スケジュールを立てるという内容である(画像9)。
ミッション5も病気関連で、「病気の予兆を見極めよう」だ。「健康」と「病気」の間には、簡単な治療で回復するか、または発症し急激に悪化するかの境目、ギリギリの不安定な状態である「病気の予兆」の状態が存在する。ギリギリ健康の範疇なんだけど、あとわずかで発病してしまうという状態だ。この病気の予兆を見つけられれば、効果的な早期治療が可能になるわけだが、当然のことながらそれを確認するのが難しい。手がかりとなるのが遺伝子の活動だが、それすらも数が多すぎて、どの遺伝子が発病の引き金を引くのかわからないのが問題だ。ここでは、AR技術も使ってそれを確かめられるようになっている。
そしてミッション6は「余震を予測せよ」。巨大地震のあとには大きな余震が多く発生するため、ギリギリ本震で被害を免れた建物などが、余震で倒壊してしまうといったこともあるわけで、すみやかにその発生頻度を予測することが重要だ。しかし本震直後は、余震があまりにも多すぎて観測しきれない。揺れが収まったように見えて、実は体感できないものを含めると多量に余震が発生していて、振動が重なってしまって現在の技術ではそれぞれ別個に識別することが不可能なのだ。よって、どうしても計測不可能なデッドゾーンともいうべき時間帯が本震発生直後しばらくはあるのだが、それを数理モデルでより早く予測を行うということを紹介するのが同コンテンツである。
最後のミッション7は「ホタルとシンクロせよ」。1人1人がバラバラに振る舞っていたはずが、気がつくと同じリズムで行動しているような経験は誰もがあるわけで、自然界でもこうした同期現象はホタルの集団発光などにも見られる。ホタルを模した電子回路の「LEDホタル」を使って、同期を起こす仕組みを解説してくれるのがこのコンテンツだ(画像10)。