両親に買ってもらったラジオから流れてくる音楽。「カッコイイ!」と感じ、寝る間も惜しみイヤフォンでこっそり聴き入った記憶、皆さんの青春時代の1ページにも刻まれているのではないだろうか。筆者の場合は、小学生のとき。ラジオから流れるジャーマンメタルに心動かされ洋楽にハマり、深夜の音楽番組「ビートUK」や「ベストヒットUSA」で海外音楽シーンをチェックしては、ひとり悦に入る青春を過ごしていた。

「いつか、こんなカッコイイ音楽を奏でられたら」

今回、編集者の粋な計らいで、そんな想いを叶えてくれる「Rocksmith 2014」(以下、ロックスミス 2014)に触れる機会を得た。このソフト、編集者の話では、驚くほど上達した同僚もいるのだという。筆者は居ても立ってもいられない気持ちになり、御茶ノ水の楽器店に走り入門用のギターひと揃えを購入。欲を言えばギブソンやPRSのギターが欲しいなぁ……とは思いつつも、今までの経験上、最初にカタチから入った趣味は三日坊主に陥りがち。素晴らしいアイテムを揃えてしまうと、その時点で物欲が満たされ満足してしまうダメなところを認識している結果のチョイスだ。

ロックスミス 2014は、世界で140万本のセールスを誇る前作から改良が重ねられたゲーム感覚でギターが向上するソフト。PCのほかPlayStationやXboxで楽しめる。新バージョンでは、待望の日本楽曲にも対応。オフィシャルサイトには、B'z、布袋寅泰、斉藤和義など日本人アーティストのダウンロード楽曲配信の決定も記されている。

さて、逸る気持ちを抑えつつ、ソフトをPCにインストール。本ソフトはSteamなる統合プラットフォームのクライアントソフトをインストールし、そのプラットフォームを介して「ロックスミス 2014」をプレイする、という仕組み。また、本作をプレイするにはPCとギターを繋ぐ「リアルトーンケーブル」を別途用意する必要があるので注意が必要だ。ソフト、ケーブル、ギター。この3点セットが揃っていよいよ、目眩くギターの世界に没入できるというわけだ。

「ロックスミス 2014」をインストールしたPCとギター。それらを繋ぐリアルトーンケーブル。この3アイテムのみでギターを思いのままに愉しむことができるのだ

USBポートに一方のケーブルを、シールドと同様ギターを繋げば準備はOKだ

スパルタな指導も愛のある言葉に心打たれる!

「ロックスミス 2014」は、ゲームとしても、そして、ギター学習教材としても楽しむことができる優れものだ。既にギターを自在に弾きこなせる方は、有名アーティストの楽曲を心ゆくまでプレイすればいいのだが、如何せん筆者はギターに関してズブの素人。エアギターならまだしも、ホンモノのギターを操る程の技量はない。そこで、初心者向けのコンテンツ「レッスン」をプレイしてみることに。

楽曲の演奏をゲーム感覚で楽しめる「ラーン・ア・ソング」、AIのバックバンドとのジャムが楽しめる「セッションモード」など多様なモードが選べるが、まずは基礎を学べる「レッスン」からプレイ

この「レッスン」では、ギターの持ち方や弦を弾くピッキングなど、初歩的なギターの操り方や演奏の際の構え方、チョーキングやトレモロといった奏法に至るまで、映像とともにステップバイステップで学ぶことができるように工夫されている。筆者も「ふんふん、なるほど」と、独りごちては学習を進めていった。が、程なく壁にブチ当たった。

実践的な演奏……といってもギター奏法の基礎中の基礎だと思うのだが、弦を押さえたまま指を別のフレットへ移動させるスライドで、合格点を得られず愛のある指導……つまり、成功するまで何度もリテイクを繰り返すはめに。スムーズに指が動かせない歯がゆさに加え、弦を押さえている指先の痛みも相まって挫折しそうになったものの、レクチャーをしてくれるコーチから「悪くない」や「圧巻の演奏だ!」とほめられると、つい気をよくして頑張ってしまう。厳しい指導のなかに絶妙な"アメ"を散りばめ、学習意欲をくすぐってくれるのだ。

レッスンでは、ギターに関する基本的な事柄から、徐々に難易度を高めながら着実に演奏スキルを学べる学習プログラムが組まれている

各学習プログラムでは、映像で理解を深め、実際に演奏して技術を身に付けていくカタチで進行していく

唐突に実践練習へと移る感もあるが、筆者はこの適度な突き放し具合がお気に入り。ダメな演奏はすっぱりダメと、上手に演奏できた時にはモチベーションを維持できるようにほめてくれる。メリハリのある指導だから達成感もひとしおだ

筆者が最初につまづいたのが、この「スライド」。音をスムーズに繋げることがどうしてもできず苦戦してしまった

演奏が上手く弾けた際には写真のような台詞でほめちぎってくれる。"アメとムチ"がバランス良く、プレーヤーの気持ちを萎えさせずにモチベーションを高く維持できるのは「ロックスミス 2014」ならでは

憧れのアーティストと夢の共演も!?

ひとしきりレッスンを受けて自信がついたところで、今度は「ラーン・ア・ソング」にて楽曲を弾くというステップへ。ニルヴァーナやグリーン・デイ、クイーンといった筆者の青春を彩ってきたアーティストらの楽曲を実際に弾きながら学べるとあり、おそれ多いやらうれしいやら複雑な心境でプレイ。

筆者も敬愛するパンクロックバンド、グリーン・デイの楽曲をプレイすることも。自分がバンドのメンバーになったつもりで楽しめるのは、ファンにとってはたまらないかも

演奏では、画面奥から手前へと弦を弾くタイミングを知らせる印が迫ってくる。コツとしては、焦らずリズムに身を任せればいい

正確さが46%……。こんなへっぽこな演奏でも「よくやった!」とほめてくれるから、「よし、次はもっと精度を上げられるように頑張ろう!」と気合いも入る

奏者のレベルに応じて難易度が変化していくシステムを採用しているおかげで、自分の"身の丈"に合った程良い難しさが心地よい。最初は非常にカンタンでも、徐々に複雑なリフを演奏できるよう導いてくれる様は、米国調査機関Research Strategy Inc.をして「最速のギター上達法である」と言わしめたのも頷ける。

優れものなのが、この「リフ・リピーター」。優しいレベルの技術をしっかり身に付けさせると同時に、熟達するにつれ少しずつレベルを引き上げ、さらなる高みを知らず知らずのうちに目指せるのだ

憧れのアーティストのように、人々を感動させるサウンドを自らが操るギターで紡ぎ出すことも夢じゃない。「ロックスミス 2014」はギター入門者にとって最適な学習教材であり、趣味として末永くギターを愉しむ"エッセンス"としても最良なのではないだろうか。これからも練習を重ね、生涯の趣味へ昇華させたい。そう思い、行動へ移せるだけの高いモチベーションを保ってくれる力が「ロックスミス 2014」にはある。

同じ"スミス"繋がりという訳ではないが、筆者が好きなミュージシャン「エアロスミス(Aerosmith)」。震災直後も日本でツアーを敢行してくれた彼らの楽曲(Dream On/ドリーム・オン、Sweet Emotion/スウィート・エモーション、Same Old Song And Dance/セイム・オールド・ソング・アンド・ダンス、Oh Yeah/オー・イェー、Legendary Child/レジェンダリー・チャイルド)も含まれている。エアロスミスのリードギタリスト、ジョー・ペリーはもちろん世界に名立たるギタリストの一人。長い道のりになるのかもしれないが、Sweet Emotionを弾けるようにがんばってみようと思う。