今年後半から来年にかけて、スマートフォン市場での主戦場になるとみられているミッドレンジに向けた製品の開発競争がスタートしている。台湾MediaTekはオクタコア搭載で4G LTEに対応したSoCの新デザインの製品「MT6595」を発表した。big.LITTLE機構に対応したARM Cortex-A17を搭載した初の製品であり、現在ハイエンドデバイスで提供されている機能をミッドレンジ以下の端末に持ち込むことが目的となる。

MediaTekが2月11日(台湾時間)に発表した内容によれば、新SoCのMT6595はARMのCortex-A17を4コアとCortex-A7を4コアの計8コアのbig.LITTLE構造による省電力/ハイパフォーマンス動作に対応しており、PowerVR Series 6のGPUを搭載する。H.265 のUltra HD (4K)処理をハードウェアレベルで実装しており、24ビット192kHzのHi-Fiオーディオ、WQXGAの2000万画素デジタルカメラ処理など、マルチメディア処理が強化されている。このほか、IEEE 802.11acへの対応や、下り150Mbpsに対応したFDD/TDD両対応のLTEやDC-HSPA (42Mbps)、そしてTD-SCDMAサポートなど、中国市場もターゲットにした、現状のハイエンドSoCクラスの性能を備えている。

今回登場したCortex-A17は同日にARMから発表されたばかりのアプリケーションプロセッサ向けコアの新IPで、機能的には32ビットコアのCortex-A12を改良し、より高い動作周波数サポートやbig.LITTLEへの対応などが特徴となっている。これにより、現在ハイエンドデバイス向けに提供されているCortex-A15クラスの性能をCortex-A17で利用できるようになり、今回のMediaTekの新製品にみられるようにミッドレンジ向けの製品で現在のハイエンド製品クラスの性能を実現可能になる。

ARMでは、このCortex-A17を「2015年のミッドレンジ市場に向けた製品」と位置付けている。MediaTekといえば、少し前までは中国で販売される山寨機で採用されるお馴染みの製品だった。だが現在では大手メーカーのハイエンド以外の主要製品にも積極的に採用されるようになり、中国を含む新興国市場での主力ポジションを得つつある。この勢いは間もなく先進国市場のミッドレンジ以下の層にも浸透してくると考えられており、例えば200ドル未満クラスの端末で、現在のハイエンド製品クラスの性能を持ったものが来年以降多数登場してくるとみられる。