2月8日、アプリのアイデア発想力を学ぶワークショップ「Digital Youth COLLEGE in 広島」(以下、DYC広島)が、広島工業大学で開催された。DYCは次世代の人材輩出を目的にしたもので、「ウィンドウズ デジタル ライフスタイル コンソーシアム」(Windows Digital Lifestyle Consortium、以下、WDLC)が主催している。今回のDYC広島は、WDLCの理事でもある日本マイクロソフト、および広島工業大学とシステムフレンドによる共同開催。参加した大学生たちは、協力して「だれかをハッピーにするタブレットアプリ」のアイデアを出し合い、プレゼンテーションした。

Digital Youth COLLEGEが開催された、広島工業大学の4号館(写真中央の建物)

Digital Youth Projectの概要

WDLCは2013年11月に「Digital Youth Project」をスタートさせた。同プロジェクトではITスキルを活かした企業への就活を目指す学生を対象に、アプリ開発スキル習得セミナーや、起業・事業化を視野に入れたコーチングを行っていく。「学びの場」として提供されるDYCのほかに、「競い合う場」として「Digital Youth AWARD」、「指南の場」として「Digital Youth MENTORSHIP」が用意されている。

Digital Youth Projectは、Digital Youth COLLEGE(学びの場)、Digital Youth AWARD(競い合う場)、Digital Youth MENTORSHIP(指南の場)から構成される

DYCはこれまで全国8カ所で24回開催され、のべ708名の学生が参加した。2014年3月にかけて、残り7回を開催する予定だ。また、Digital Youth AWARDはアプリのコンテストで、4月に決勝が東京で開催される。そこで選ばれた優秀チームは、Microsoftが主催する国際的なITコンテスト「Imagine Cup」への出場権を得られる。

Digital Youth AWARDの応募プロセス(写真左)。Digital Youth AWARDで優秀チームに選ばれれば、国際的なITコンテストImagine Cupへの道がひらける

広島でDYCを開催する狙い

広島工業大学でDYCが開催されるのは、今回が2回目。学生たちを指導するのは、広島工業大学 助教博士の松本慎平氏。DYCを開催した背景について、松本助教は「東京ではこうした勉強会が頻繁に行われており、社会人と大学生が活発に交流している。しかし広島はまだ遅れている」と話す。ITの勉強会を通じて、広島県内の学生のITリテラシーを高めていきたい考えだ。「広島出身のIT分野の人材を増やせたら。ゆくゆくは、サイバー都市・広島を目指すところまでいきたい」と笑顔になった。

会場となった教室では、その場で新しいチームが編成された。仲間と相談しながら「だれかをハッピーにするタブレットアプリ」を創造していく学生たち

今回のDYCでは、アプリを開発する発想力の向上だけでなく、個人のプレゼンテーション能力の向上も目指した。指導するのは、自身でもWindowsアプリの開発を手掛けるシステムフレンドの西村誠氏。「どんどん人前に出て、自分のアイデアを発表することが大切。まずは経験値を積んで、場馴れする。将来は世界で活躍する人材になってほしい」(西村氏)。

広島工業大学の松本慎平氏(写真右)と、システムフレンドの西村誠氏(写真左)

午後の発表に向けてアイデアを膨らませていく

アイデア発表

午後には、いよいよプレゼンテーション。持ち時間は1人2分だ。松本助教をはじめ、数人が審査員役を務めた。生徒が発表したアプリのアイデアは、動物などの図鑑を作成できるものや、思いついたアイデアを膨らませるアプリ、ギターやベースの練習が行えるアプリ、問題解決の過程を記録できるアプリなど。

審査員からは「競合するアプリがすでにあるのでは」「スマートフォン向けでも良い。タブレットアプリでないといけない理由は」といったアプリの内容に関するものから、「スクリーンを見ながらだと、聞いている人に声が届かない」「身ぶり手ぶりがあると良い」「スライドの内容とスピーチの内容を変えた方が、聴衆を惹き付けられる」「機能をすべて紹介していくと、アプリの印象が散漫になってしまう」「どこを一番アピールしたいか、絞り込んでしゃべるとポイントが明確になる」といったプレゼン方法に関するものまで、幅広いアドバイスが与えられた。

一人ずつアイデアを発表していく。審査員からはアプリの内容に関するものから、プレゼン方法に関するものまできめ細かなアドバイスが与えられた

例えば、「ブックディーラー」は、購入した書籍の記録・管理を行えるアプリ。審査員からは「『これで紙の本が売れるようになります』といったキャッチがあると良い」「ビジネスの観点でどのくらい儲かるか、自分でつくった数字でも良いので提示できれば」などの声が上がった。「買い物支援アプリ」は、ショッピングモールで買い物がしやすくなるもの。「倉庫の在庫管理にも使えるのでは」という、用途の拡大につながるヒントが与えられた。「譜面アプリ」は、自動で楽譜のページ送りができるもの。練習や本番でどのように使えそうか、アイデアを深める手助けとなるアドバイスが送られた。

アプリを開発するにあたって

最後に松本助教は、アプリを開発するにあたってヒントになること、注意すべきことを述べた。まず、過去の受賞歴を参考にすること。また政府の方針、社会が求めていることを調べることもアイデアのヒントにつながるという。このほか、市場に出回っている既存の製品を調査することの重要性についても触れた。

松本助教は「勉強会に参加したら、なんらかの形を残すことが大事。その積み重ねが本人の力になる。自己満足で終わってはいけない」と学生たちに語りかけた

思い付いたアイデアは、自分のひとりよがりになっていないか。誰に何をどこまで提供するのか。ターゲットとなるユーザーを絞り、目的を明確にすること。今回の場合、タブレットでないといけない理由も大事になる。そのアプリによってどれだけの効果が得られそうか、あらかじめ想定して明確にしておくことも重要だ、と話した。

周りをみること、アイデアの背景を考えること、目的を明確にすること、制約条件(ハードル)を考えることが大事、と話した

広島で行われるDYCからは、最低でも10本のアプリをDigital Youth AWARDに応募したい意向だという。今回、広島工業大学の学生たちが形にしたアイデアもDigital Youth AWARDに応募する予定だ。広島にIT文化が花咲き、「サイバー都市・広島」が誕生する日を楽しみに待ちたい。