某カレーチェーン店でカレーを注文したときのこと。今まで何げなく食べていたが、なんなんだ、この具の少なさは。だからといって2、3品トッピングしようものなら、軽く1000円は超えてしまう。確かにおいしいけれど、量と価格が釣り合ってないんじゃないかー!?
ふと憤ってみたわけだが、これは決して筆者が貧乏なのが悪いんじゃない。そもそもカレーは日本の国民食なんですよ。小学生のころから給食で慣れ親しんできたものに1000円も払ってられるか!!
願いは簡単明瞭。ガッツリとカレーが食いたい(お安い値段で)。たったそれだけなのだ。そうやってプリプリと怒りをぶちまけていると、「渋谷に800円で死ぬほどトッピングがのったカレーが食える店があるらしい」という都市伝説のような情報を小耳に挟む。これは神の啓示に違いない! 筆者は早速渋谷へと向かったのであった。
メガ盛り級の普通盛りカレー
JR渋谷駅から徒歩約10分、京王井の頭線神泉駅から徒歩5分ほどの場所にある「カレーやさん LITTLE SHOP」。その名の通り小さな店だが、ログハウス調のたたずまいがかわいらしい。外にあるメニューを見てみると、"スペシャルカレー(トッピング全部のせ)"の文字が。しかも800円。こ、これだ! これを求めていたのだ!! ついにガッツリとカレーを食べられるのかと思うと、はやる気持ちが抑えられない。早速店内に入る。
席につき、例のスペシャルカレーを注文すると、「あいよ! 」というご主人の威勢のいい声が。これは期待も高まりますぞ。
そして待つこと数分。ご主人が「これで普通盛りだからね」との言葉と共にテーブルに置いたのは、30cmはあるであろう大きな深皿。そこに盛られたご飯、なみなみと注がれたルー! そして何より、唐揚げ、カツ、目玉焼き……と10種類にものぼるトッピング!! こりゃすげえぜ。漫画だったら間違いなく、置かれたときに「ドン! 」という擬音語がつくだろう。それほど見た目のインパクトが凄まじいのだ。
おいしすぎ注意報~
しかし、どんなに量が多くてリーズナブルでも、おいしくなければ完食する気にはなれない。今までの経験上、デカ盛りは味がイマイチなケースが多かった。見た目のインパクトに力を入れるあまり、味をおろそかにしている店が多い印象だ。そして今回も、「まあ、この値段でおなかいっぱい食べられるならいいよな」という気持ちでカレーを口へと運ぶ。
……う、うんめぇーーーー! おいしすぎ!!
魚貝のだしがきいてあっさりしているのだが、野菜や果物の甘味とコクもしっかりと感じることができる"和風カレー"といった感じだ。トッピング1つひとつもとっても丁寧に作られており、特に唐揚げとカツは、普通に白ご飯のおかずとして食べたいほど。また、ひじきや厚揚げなどの珍しいトッピングも面白いし、ルーとの相性も抜群だ。
正直、味にはあまり期待していなかったので(失礼! )これは驚きだ。「鰹節とか昆布からだしをとって、スパイシーではないけど口当たりの良いカレーにしているんだよ。日本人にもなじみやすい味だと思うね。トッピングも全部国産で、豚肉はそのときによって違うけど、千葉県産か茨城県産を使ってるんだ。鶏肉は鳥取県産の大山鳥で、野菜もすべて国産なんだよ」とご主人。
確かに深いコクがあるのにあっさりしているので、この量でもペロリといけそうだ。実際に女性のお客さんでも、完食していく人が結構いるそう。そしてトッピングのおいしさにも納得。素材からこだわっているから、こんなにも旨いのだろう。これで800円とは信じられない。なぜこんなに安いのだろう。
「ここが実家を改造した場所っていうのと、夫婦でやってるから人件費がかからないのが理由かな。その浮いたお金をカレーの値段に反映してるんだよ」。
渋谷のラストサムライなご主人の愛情もトッピング
そして、スペシャルカレーの歴史は長く、誕生は10年ほど前。「もともとは定食屋で働いていて、24年前からこの場所でカレー屋をやってるんだけど、そのときはスペシャルカレーはなくてね。できたのは10年ぐらい前かな。あるお客さんが『全部トッピングをのせてくれ』って言うんで、やってみたら結構好評でね」。でも、他のカレーチェーンあたりだと、このトッピングなら2,000円くらいは取られそう。というか、それくらいの値付けでもそこそこ売れるだろうになぜこれほどの安価を貫くのだろうか。
「お客さんも『おおー! 』と驚いてくれるし、満足して帰ってくれるのが店をやってる人間としては何よりうれしい。だけど見た目のインパクトだけじゃまた来てくれないから、おいしさにもこだわってるんだよね。だからこそ中途半端な食材は使わないようにしてる」。
厳選した食材を使い、ご主人のこだわりがあってのこの価格設定。深い、深いよ!! そんな甲斐あって、11時のオープンから4時間ほどでカレーは売り切れてしまうとのこと。もし完食できなかったとしてもプラス50円で持ち帰り用のパックも提供してくれるそうなので、食べきる自信がない人でも安心だ。
最後に1つ質問。これだけの人気ならば、店を大きくしようと考えないのだろうか。「この場所で、この味と値段を守り続けることだけを考えてる。自分のできる限りの力を使ってお客さんを満足させたい。それだけだよ」とご主人。うぉぉぉ~、かっけー! 渋谷のラストサムライだ!!
そんな素晴らしいお話を聞いてるうちにカレーを完食。こんなにも旨いもんをおなかいっぱいに食べられて幸せです。ガッツリとおいしいカレーを食べたいのならば、あなたも今すぐ「カレーやさん LITTLE SHOP」へ向かうべし!
(文・A4studio千葉雄樹)