人気作家・浅田次郎の『柘榴坂(ざくろざか)の仇討(あだうち)』が9月に映画化され、主演の中井貴一ほか、阿部寛、広末涼子、中村吉右衛門ら豪華俳優陣が共演することが3日、明らかになった。
『柘榴坂の仇討』は、2004年に発表された浅田次郎の短編集『五郎治殿御始末』の中でも名作と言われている一編。今回の映画化では、ドラマ『やまとなでしこ』『救命病棟24時』や映画『沈まぬ太陽』などで知られる若松節朗監督が指揮を執る。
同作は、敬愛する主君、大老・井伊直弼を桜田門外にて失った彦根藩士・志村金吾の物語。安政7年、井伊直弼が暗殺され、金吾はひそかに仇討の命を受け、敵を探す旅に出る。13年が経った明治6年、仇討が政府に禁じられる中、金吾はついに最後の仇の一人・佐橋十兵衛を探し出すが…。
主人公の志村金吾役は、浅田作品『壬生義士伝』にも出演した中井。金吾の仇である佐橋十兵衛(直吉)を俳優の阿部寛、金吾の妻・セツを女優の広末涼子、大老・井伊直弼を歌舞伎役者の中村吉右衛門が演じる。中村は『鬼平犯科帳』以来19年ぶりの映画出演となる。
主演の中井は「時代劇離れと言われる昨今、日本人が本来持っている本当の"こころ"の文化のようなものを力一杯注ぎ込んで、お客様に何かを感じていただけるような映画にできたら良いなと思っています」と時代劇に気合を見せ、阿部も「久しぶりの時代劇で身が引き締まる思いがしています」とコメント。演じる直吉についても「侍のなりをしていない侍であり、人間の弱さを併せ持つ男」と説明し、「深い人間像をどこまで出せるか、難しい役ですがとても演じがいを感じています」を意気込んでいる。
広末は「本当に素晴らしい脚本、監督、出演者の方々に囲まれ、女優として最高な現場を経験させていただいています」と喜びのコメント。「脚本と、自分の気持ちに正直に演じきることができたら、間違いなく歴史に残る日本映画になる気持ちがしています。一生懸命頑張ります」と誓った。
若松監督は「一生懸命生きる人が、この映画の主人公です。テーマになる言葉を探せば、たぶんそれは"矜持(きょうじ)"。つまり、人としての誇りと覚悟ということになるでしょうか」と作品について説明。「自らの誇りを貫いた侍たちに、思いっきり心を洗われました。圧倒する雪景色の中で、激しさと熱さ、そして抑制された俳優たちの静謐(せいひつ)な芝居を、しっかり、とらえていこうと思います」と話している。
なお、1月5日にクランクインし、クランクアップは2月を予定。撮影は京都や滋賀で行われている。