既報の通り、KDDIは2014年3月期(2013年4月~2014年3月)の連結業績を発表した。連結決算では売上高を示す営業収益、営業利益、純利益、EBITDAで2ケタ成長を果たし、「過去最高」(田中孝司社長)となる好調な決算だった。田中社長は、来期に向けて順調な滑り出しとの認識を示し、独自性を強調することで、さらなる成長を目指したい考えだ。

KDDI 田中孝司社長

決算が好調な背景には、CATVのJCNを連結子会社化したJ:COMの影響もあるが、それを除いても携帯・固定ともに通信料収入が伸び、収益を押し上げた。特に携帯は純増数、MNP純増数、解約率の各指標が好調で、さらにLTEスマートフォンが拡大して通信ARPUが増加したことも寄与した。対前年同期比では、ARPUはまだマイナス成長だが、0.7%減と減少幅が縮小。第4四半期にはプラスに転じると見ており、さらに収益が拡大すると見込む。

スマートフォン自体の伸び率は鈍化しているが、スマートフォンの浸透率が44%に達してレイトマジョリティ(後期追随者)の移行段階になったため。田中社長自身「もう少し鈍化があとになると思っていた」と認めつつ、それでもスマートフォンに加えてタブレットやフィーチャーフォンが拡大することで、端末全体の売上は拡大し、ARPUを押し上げると見ている。

田中社長は、3月末で人口カバー率99%とエリアが広く、高速な800MHz帯を使ったLTEネットワークの優位性が「受け入れられた」と分析。さらにauスマートバリュー、auスマートパス、auスマートサポートといった料金施策、コンテンツサービス、サポートサービスなどが差別化要因として効果があったとみている。

就任以来、回線だけを提供するキャリアではなく、「スマートパイプ事業者になりたい」と話してきた田中社長だが、コンテンツサービスのauスマートパスが好調で、さらにスマートパスユーザーがさらに別のコンテンツサービスを利用する例が増え、着実に進展している。「ますます(コンテンツサービスなどの)アッパーレイヤーのビジネスは重要になる。今後も新たなサービスの追加・拡充を行いたい」と意気込む。

コンテンツサービスでは、契約時にコンテンツサービス加入を強制する抱き合わせ販売が行われていると問題になり、前回の決算会見で田中社長は対策を約束していた。その後、簡単に解約できるような導線を設け、専用のコールセンターも設置。さらに、店頭にコンテンツサービスが強制でないことを掲示したところ、「コールセンターへの問い合わせを見ていると、ほぼクレームがきていない」ため、問題は解消されているとの認識を示す。

前回に比べ、付加価値ARPUの上昇に鈍化が見られるが、「そもそも論としてフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が計画より弱め」のため、スマートフォン向けのコンテンツサービスの加入の伸びが弱まったことが原因だとしている。

端末販売では、ドコモがiPhoneの取り扱いを始め純増数を伸ばしたが、「相当影響があると思っていた」ものの、「第3四半期は乗り切り、予想よりもいい方に流れている」としており、業績に大きな影響は与えなかったようだ。

ただ、3社がiPhoneを取り扱うことで、料金プランを含めて「同質性が進んでいる」という状況で、キャリア間の移動が以前よりも小さくなったという。そこで、来期に向けてKDDIではネットワーク、端末、料金、サービス、サポートの5つのポイントで差別化を図っていく意向。

そうした中、ソフトバンクが新たな料金プランとして、一定時間・一定回数までの音声通話を定額にし、パケット定額制とパックにした料金プランを打ち出してきた。これについて問われた田中社長は、「今後VoLTEを導入していくことになるが、それを視野に入れて考えている状況」とコメント。現時点で同様のプランに追随する考えはないとしており、現在のパケット通信の上限7GBを3GBに減らすといったプランは「検討のテーブルには載っていない」という。

田中社長は、同プランについては「(料金が)高くない? 」と正直な感想。「自分自身であまり納得感がなく、もう少し考えたい」として、当面は現行の料金プランと、昨秋に導入したデータシェアプランを柱に、auスマートバリューのような料金施策で対抗していく考えだ。

au通信ARPUを始め、業績予想を上方修正

いずれにしても、好調な決算を受けて通期予想を上方修正するなど、来期に向けて「良いスタートが切れている」と田中社長はアピール。今後、さらにサービスなどを拡充して、さらなる拡大を目指していく考えだ。

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