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ブラッシングや目やに取りなど、猫の日々のお手入れを丁寧にされている飼い主さんも多いことでしょう。今回は、そんな猫のお手入れの中から「歯磨き」についてご紹介します。
歯周病を防ぐために、歯磨きは必要!
猫は虫歯(齲歯)にはなりませんが、歯周病で来院される猫は多いです。野生の猫は獲物の皮や、すじ肉を噛み切ることで歯がブラッシングされ歯垢が溜まりにくくなります。しかし人間と住んでいる猫が食べるのは柔らかいウェットフードや、食べやすいサイズのドライフードです。歯周病は人間同様、食生活の変化によって増えてしまった現代病なのです。
歯周病の予防で最も効果的なのはやはり歯ブラシによるブラッシングです。しかしブラッシングは犬以上に猫では難しく、猫の性格によっては諦めざるえない猫もいます。
猫の歯ブラシを成功させるコツ
最初から歯ブラシを使って歯を磨こうとすると猫は嫌がります。できれば永久歯が生え揃う時期(生後6カ月前後)までに慣れさせると成功しやすいでしょう。
(1)まずは猫とのミュニケーションの一環として口にタッチすることから始めましょう。毛のブラッシングや頭を撫でるついでに口の周りに触り、触られることに慣れてもらいましょう。
(2)口の周りを触られることに慣れてきたら口の中に手を入れて、歯を触ってみましょう。まずは手前の歯(切歯)、慣れてきたら奥の歯(臼歯)にタッチしてみましょう。
(3)ガーゼを使って歯の表面をそっと磨いてみます。このときガーゼに動物用の味付き歯磨きペーストや、ウェットフードの水分を含ませてもいいです。
ここまでできるようになって初めて歯ブラシを使います。歯ブラシは動物用、もしくは人間の小児用でも大丈夫です。
歯ブラシの使い方
図1 |
歯ブラシは歯に対して45℃の角度をつけて横方向に小刻みに動かしましょう。力はそんなにかける必要はありません。歯と歯茎の間(歯肉溝)に溜まった歯垢をかきだすイメージで磨きましょう。(※図1)
猫の歯で一番歯石ができやすい場所は、上顎の奥歯(臼歯)です(※図2の○でかこった部位)。全部やるのが大変な場合は、ここを重点的に磨きましょう。歯磨きを始めたときは間違った方法で歯茎を傷つけていないか、定期的に獣医師にチェックしてもらいましょう。
1回何分ぐらい行うべき?
何分やるというよりは、各部位を磨いて一周できたら終わりです。猫の永久歯は30本ありますが、奥歯(臼歯)、犬歯、前歯(切歯)の3つに分けられます。これら3部位を順番に磨いていきましょう。人間の歯磨きと同じように量より質が大事です。
おまけ。普段の様子と顔面崩壊のビフォーアフター |
頻度はどのぐらい?
一日一回が理想です。歯垢が歯石になるのは一週間ぐらいなので、毎日やるのが大変であれば週2~3回でも効果はあります。
どうしても歯ブラシは無理!という場合は…
どうしても歯ブラシが難しい猫ではガーゼや歯磨き用のウェットシートを使ってみましょう。ガーゼは歯と歯茎の間(歯肉溝)に入らないので、一番歯周病予防で大事な歯と歯茎の間は磨けませんが、歯の表面の歯垢はとれます。
そもそも磨くのが無理!
ブラッシングは無理という方はデンタルジェル(バイオティーン)、口腔内スプレーなどの口腔内ケア用品を使ってみましょう。しかしこれらの商品はあくまでブラッシングの補助です。ブラッシングほどの効果は期待できませんが、歯垢が付きにくい口腔環境を作ります。
口に触ることが無理!
口にジェルを塗るなど触ることが無理な猫には、ブラッシング効果のある療法食(t/d ヒルズ)や、おやつ(猫用グリニーズ)があります。
また、フードを出しっ放しにするとチョコチョコ食いをして食べカスが口の中に長時間残るので、食事以外の時間帯はフードをしまったほうがいいでしょう。
歯磨きだけでは防げない病気も
猫の歯周病はプラークが主な原因ですが、単純にそれだけではないケースもあります。「猫の歯肉口内炎」や、「猫の歯の吸収病巣」等がそうです。これらは猫以外の動物ではあまりみられない病気で、原因は明らかになっていません。
歯肉の細菌増殖が原因の一つといわれているので、プラークコントロールをすることで症状が改善することもあります。しかし、これらの病気の猫は歯肉の痛みが強いので、歯ブラシをすることが非常に困難なことが多いです。歯に触ることや歯ブラシに対して異常に痛がる猫はこういった病気である可能性もあります。
また既に歯垢が歯石になっている場合、歯石はブラッシングではとれません。こういったことが見られ場合は、かかりつけの動物病院に相談して下さい。
確かに歯周病を予防することは大切なことです。キレイな歯を維持することは寿命を伸ばし健康な毎日を過ごすことができます。しかし、ブラッシングが苦痛であったり、飼い主さんを嫌いになってしまってはホームケアを行う意味がなくなってしまいます。飼い主さんと猫ちゃんのよい関係が大前提であり、その上でそのよい関係を長く保つための歯周病予防です。飼い主さん、猫ちゃん、両者にとって無理のない歯周病予防を選択することが大切です。