1月16日、東京都港区の「ザ・プリンスパークタワー東京」にて、「NetApp Innovation 2014 Tokyo」が開催された。
「最強クラウドの作り方」というサブタイトルが掲げられた今年のカンファレンスでは、クラウドデータ管理をテーマにベンダー各社が最新テクノロジーを披露。オールフラッシュで構成される新製品や、Amazon Web Servicesらが展開するパートナーソリューションなど、幅広いトピックスが取り上げられ、ストレージ業界の近未来像を示すイベントとなった。
本稿では、パートナーの技術が紹介された個別セッションの中から、クラウド環境の構築/運用ノウハウを披露した富士通の講演『クラウド環境を支える富士通のトータルソリューション ~データの維持管理から確実な業務運用まで~』の内容を簡単にレポートしよう。
5万超の案件からクラウド構築ノウハウを体系化
「富士通では、これまで富士通が手掛けてきた商談の中から、累計5万7000件にものぼるお客様要件を抽出、ノウハウとして体系化し、クラウド化をはじめ、お客様のさまざまなICT活用シーンの進化のお手伝いをしています。これこそが、他社では真似できない大きな強みだと思っています」
富士通 システムビジネス営業推進本部 プロダクト拡販推進統括部 ストレージビジネス部の軸丸洋行氏は、講演の冒頭でこのように語り、満員の聴衆の関心を引きつけた。
一口にプライベートクラウド基盤と言っても、仮想化したサーバをデータセンターに置いた程度のシステムから、何十万人もの社員を抱えるグローバル企業が国を跨って活用する大規模なシステムまで、考えられる形態はさまざま。そのため、ユーザー企業自身で明確な要件を洗い出せるケースは稀で、何から取りかかればよいのかさえわからない情報システム部門も多いようだ。
そうした状況を踏まえ、富士通では膨大な事例をベースにユーザーの要件と対応ソリューションをカタログ化。それぞれ6段階にレベル分類された32種類の利用シーンを定義している。
それらの資料と照らし合わせながらシステムの現状を分析したうえで、将来あるべき姿、当面のターゲットを見つけ出し、プロジェクトの共通認識としてロードマップの共有、プロジェクト推進が可能であるという。
サービスレベルをもとにプライベートクラウド基盤を選定
クラウド基盤を選定する上で、富士通が判断材料としているのが、各種業務で求められるサービスレベルだ。
軸丸氏は、具体的な項目として、「サービス停止許容時間」、「リカバリポイント」、「サービス提供時間」、「サービス稼働率」、「ハードウェア復旧時間」などを列挙。それぞれの数値を洗い出したうえで、パターン化されたサービスレベルに応じて業務を分類、プライベートクラウド基盤の構成を判断していくことを説明した。
ハードウェア構成に関して、昨今、有力な選択肢となっているのが、垂直統合型システムである。
クラウド基盤を短期に構築したい、運用を簡略化したい、あるいは信頼性を重視したい、という場合には垂直統合型がお勧め。ベストプラクティスを凝縮するかたちでハードウェアからOS/ハイパーバイザー、運用管理ソフトまでが、細かいチューニングを施した上で統合されているため、ユーザー企業の負担は圧倒的に少ないです」(軸丸氏)
富士通では、「FUJITSU Integrated System Cloud Ready Blocks」(以下、Cloud Ready Blocks)というブランド名の下、4モデルの垂直統合型システムを提供している。上限目安を60VMとするブレード型の小型モデルから、1000VM程度まで対応できる1ラックタイプの大型モデルまで取り揃えており、ユーザー企業が最適なものを選べる環境を用意している。
また、Cloud Ready Blocks 4モデルのうち上位3モデルには、NetAppのOEM製品として提供している「ETERNUS NR1000 series」も適用可能で、富士通が提供する垂直統合基盤のストレージとしてNetApp製品も使えるという。
軸丸氏は、Cloud Ready Blocksの事例として関東学院大学の学内基幹システムの統合案件を紹介。導入コスト、構築期間が約40%削減されたうえ、セルフサービスポータルにより仮想マシンの提供プロセスが自動化された結果、それまで1日~2日かかっていた申請から提供までの期間が30分に短縮されたことを明かした。