重要文化財 不忍池図 小田野直武 一面 1770年代 秋田県立近代美術館

サントリー美術館は3月29日~5月11日、「のぞいてびっくり江戸絵画 ―科学の眼、視覚のふしぎ―」展を開催する。

江戸時代後期に花開いた新しい「視覚文化」を紹介

異国文化に大きな関心をもっていた八代将軍・徳川吉宗は、享保5年(1720)、漢訳洋書の輸入規制を緩和。その結果、西洋の科学・技術・文化を研究する「蘭学」が盛んとなった。同時に、顕微鏡や望遠鏡など、「視覚」に対する従来の常識を一変させる光学装置もまた、海外からもたらされるようになる。これらの光学装置をのぞいたときの驚きや発見は、江戸時代の人々に大きな衝撃を与え、新しい美術作品が生み出されるきっかけとなった。

西洋科学の「眼」を知ることにより、江戸人の「見る」ことに対する意識は大きく変わり、江戸絵画は大きな変革の時代を迎える。同展は、この江戸時代後期に花開いた新しい「視覚文化」を、小田野直武、司馬江漢、葛飾北斎、歌川広重らの作品や、実物の望遠鏡、顕微鏡、覗き眼鏡などを通して紹介するものとなる。

展示は、第1章「〈遠近法〉との出会い」、第2章「〈鳥の眼〉を得た絵師たち」、第3章「〈顕微鏡〉でのぞくミクロの世界」、第4章「〈博物学〉で観察する」、第5章「〈光〉と〈影〉を描く―影絵・鞘絵(さやえ)・鏡・水面」で構成。

みかけハこハゐがとんだいゝ人だ 歌川国芳 大判錦絵 弘化4年(1847)頃 町田市立博物館

カルペパー型顕微鏡 一基 1737年頃 ユニオン光学株式会社(古河歴史博物館寄託)

名所江戸百景 深川洲崎十万坪 歌川広重 大判錦絵 安政4年(1857) 個人蔵

遠近法の一種である透視図法(線遠近法)を駆使した「浮絵(うきえ)」や、凸レンズの付いた覗き眼鏡を通して見る「眼鏡絵(めがねえ)」。また、顕微鏡で観察したミクロの世界や、西洋の博物学から得た知見を生かし、対象を自然科学の眼で捉えようとする写生図、光学的現象への興味が影絵や鏡・水面などに映る映像への関心へと波及し、その面白さに注目した作品などを展示する。

開催日時は、3月29日~5月11日 10時~18時。金・土、および4月28日、5月4日、5日は20時まで開館。作品保護のため、会期中展示替を行う。休館日は火曜日。ただし4月29日、5月6日は18時まで開館。4月19日は「六本木アートナイト」のため24時まで開館。いずれも入館は閉館の30分前まで。

会場は、サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階)。入館料は一般1,300円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料。4月19日は「六本木アートナイト割引」のため一般および大学・高校生は一律500円。その他、詳細は同館Webページで確認できる。

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