『機動戦士ガンダム』の原作者で知られる富野由悠季監督が21日、都内で行われた「オオカゼノオコルサマ」と米ハリウッドの制作会社「Legacy Effects(レガシー・エフェクツ)」の業務提携による制作発表会見に出席した。
すでに報じられているとおり、この業務提携の第一作は、富野監督の新作となる。それが富野監督を代表する作品『機動戦士ガンダム』なのか、それとも『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』『伝説巨神イデオン』『ブレンパワード』『リーンの翼』『OVERMANキングゲイナー』といった、他の富野作品なのか。それはアニメーション作品なのか、それとも実写作品なのか。現時点では、断定も予測も難しいが、今回の会見ではまた、多くのヒントも残されている。
富野監督は、2013年の11月10日に、米ロサンゼルスにある「Legacy Effects」社を訪問している。同社は、映画『アイアンマン』シリーズや『アバター』(2009年)、『パシフィック・リム』(2013年)の制作で知られるハリウッドを代表する制作会社。この訪問の中で両社の提携が実現したが、富野監督は「僕の制作したアニメへのリスペクトが大変深かった」「彼らが今日現在の仕事すべてに満足していない」と感じ、そして「ハリウッドに間違いなく"助っ人"がいる」ということがわかったという。
2014年~15年は『機動戦士ガンダム』と、同シリーズのプラモデル「ガンプラ」が35周年を迎える。昨年発表があったとおり、この期間中には、富野監督の別の新作の発表も予定されている。
そうして迎えたこの日の会見は、適度な緊張感がありつつも、和やかなムードで進んでいったが、富野監督が今でもギラついていることは明らかだった。時折見せる、何かの勝負でもしているかのような真剣な眼光、そして衰え知らずの止まらない富野節――本記事では、会見で語られた内容を全文書き起こして、監督の想いを探っていきたいと思う。
タイトルを最終的に発表するところまでに至らなかった
富野監督:ご覧のとおりの状況を去年の11月初め(「Legacy Effects」社を訪問前)まで僕はまったく知りませんでした。どういうことかと言いますと、「Legacy Effects」のスタッフが、富野のこと、『ガンダム』のこと、もちろん他の僕の制作したアニメへのリスペクトが大変深かったということを知らなかった、ということです。それがすべての始まりかもしれません。実は今日、皆さんにお出でいただきましたが、「オオカゼノオコルサマ」という会社がひとつだけウソをつきました。第一作のタイトルを発表できるところまで持ち込みたかったのですが「Legacy Effects」のスタッフが、こういう形で日本に来るということが、今年は今日しかありませんでした。そのために、タイトルを最終的にFIXするところまでに至らなかった、ということでは本当に申し訳なく思っています。そういう意味でウソをついたということです。
しかし、僕自身の今日までのキャリアで言えば基本的に"TVアニメ発"で作品を発表してきましたし、第一作目について言えば、全くの新作でやるというリスクを侵すわけにはいきません。そのため、過去作品からリメイクする可能性を考え、今日までの一カ月半「オオカゼ」のスタッフにはがんばってもらいましたが、ご存知のとおりです。権利関係の問題をクリアするところまではまだ至っておりませんので、今日ここで僕の口からお話することはできません。
ここまでお話すればどういうものが今後、この業務提携の中で制作されるのか、ということは想像がつくのではないかと思っています。と同時に、今回の提携で一番重要なことは、僕の過去作品の何かを描くということが眼目ではありません。重要なことは先ほど木場(カオリ)社長(「オオカゼノオコルサマ」代表)からも説明があったとおりです。これから「Legacy Effects」と、それから「オオカゼ」をベースにして、世界配給できるようにアニメ発やコミック発のコンテンツをもった日本の映像を、広く世界に提供していきたい。そういう制作基盤を東京とハリウッドに作っていきたいと思っています。……続きを読む