米Amazon.comがTVの有料チャンネル配信事業への参入を計画しているという。現在米国では、長引く不況やNetflixのような新しい配信サービス興隆の煽りを受けて、従来のCATVや衛星放送を使った有料チャンネルサービスの契約数減少のトレンドが続いており、TVネットワーク各社を悩ませている。Amazon.comの同業参入はコンテンツホルダーにとっての福音となるのだろうか。

同件はWall Street Journal (WSJ)が1月21日(現地時間)に報じている。Pay TVなどと呼ばれる有料放送だが、Amazon.comはこのオンライン版の配信事業に参入する可能性があるという。以前のレポートにもあるように、Amazon.comは日本を含む複数のエリアで「Amazon Instant Video」というビデオ・オン・デマンド(VoD)サービスを展開している。だが純粋なVoDによるPay-Per-Viewモデルとなっている日本向けサービスに対し、米国ではAmazon Prime契約ユーザー向けに一部有料コンテンツを無料開放する「有料会員向けの優遇サービス」としての側面が強い。Amazon.comがPay TV事業に参入したとして、どのようなサービス形態を採るのかは不明だが、現状のInstant Videoを見る限り、Amazon Primeと何らかの形で絡めてくる可能性が高いと考える。

WSJによれば、Amazon.comの交渉はまだごく初期段階にあり、実際に参入するかどうかも含めて未知数だという。業界には同社のほか、ソニー、Google、IntelといったプレイヤーがTVネットワーク各社との交渉を進めているという話があるが、どこもライセンスや価格面で折り合わずに交渉が難航しているともいわれる。このうちIntelはすでにTV事業のVerizon Communicationsへの売却を発表しているが、同事業を引き継いだVerizonは、光回線契約ユーザー向けのFiOSというサービスを拡充するために、この技術やサービスを活用するとみられている。

一方で、Amazon.comが動画コンテンツをストリーミング配信するためのセットトップボックス(STB)の開発を進めているという話もあり、これは「Roku」のようなプレイヤー形態になるようだ。だが同社自身はこうした噂をすべて否定しており、今後もPrime Instant VideoとAmazon Studiosでのオリジナルコンテンツ拡充に努めていくとの声明を出している。今後の動向は不明瞭な部分が多いが、面白い動きではある。

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