子育てと家事の両立だけでも大変なのに、そこに仕事が入ったら……。少子高齢化が進む日本において、企業ではワーク・ライフ・バランスが推進され、育児中の社員を応援する制度が整ってきている。しかし、いくら制度が整っていても、利用するのはヒト。それぞれの立場からの理解が必要となる。その実情について、1年間の産休・育休を取得し、職場に復帰したA子さんを取材した。
制度は整っていても……
A子さんは大学を卒業後、大手電機メーカーの一般事務として入社した。5年間勤務したのち大学時代の先輩と結婚。1年間の産前産後休業・育児休業を経て、先日復帰した。産休前に所属していた部署の上司は、ワーク・ライフ・バランスに理解があり、自身もイクメン。しかし、育休あけに配属された営業企画部の上司は、奥様は専業主婦、女性を「女の子」と呼ぶような男性。日本には「男女雇用機会均等法」という法律があることを知らないのでは? と思うような男性だった。
A子さん曰く、「こちらの考えすぎなのかもしれませんが、時短制度を利用し、定時の1時間前に帰る私のことを戦力外と思っているようで、部署内の定期会議などにも呼ばれず、電話番を任せられていました」という。職場の雰囲気も、A子さんを応援というよりは、仕方がない……といった感じで、頼りになるのは、同年代で独身のB子さんしかいなかったという。
育児休業中の1年間は、3時間おきの授乳や夜泣きなど、大変ながらも子供と密着した充実した時間を過ごすことができたという。しかし、職場に復帰し、育休以前と同じように仕事をこなせるのだろうか、と不安になることも多くあったそうだ。それでも、休暇中に人事部から時折届くメールや、同期たちからの連絡に励まされ、A子さんは、予定通り一年後に職場復帰した。
A子さんは、保育所へのお迎えがあるため、時短勤務ということで定時より1時間も早く退社する。最初は抵抗があったが、夫から「働く時間を今までより1時間凝縮させたと考えればいい」という言葉もあり、時間を無駄にせずに効率的に動く方法を考えたという。「作業の時間短縮について再構築しました。もちろん、私が早く帰社する分を、部署内の仲間が埋めてくれることもあります。相手に感謝することが多くなり、『ありがとうございます! 』という言葉を使うことも、独身時代に比べて格段に増えました」。
(文: エフスタイル 青山みなみ)
(続く)