スピーカーやキーボードなど、スマートフォンとNFCで連携できる周辺機器が増えている。ユーザーが任意でプログラムを書き換えられる「NFCタグ」も安価に手に入るようになった。NFC機能は、今後ますます普及が進んでいくことだろう。そこで本稿では、NFCタグをテーマに取り上げる。導入から実際の活用方法まで、順を追って紹介していこう。

最近のスマホに標準装備されている、NFC(近距離無線通信技術)。どのような使い道が考えられるだろうか

NFCタグを購入する

NFCタグは容量や形状の違いにより、値段も異なる。安価なものなら1枚あたり100円を切る値段で購入が可能だ。筆者は秋葉原の電気街で20枚つづりのNFCタグシールを購入した。価格は1260円だった。NFCタグはAmazonやサンワダイレクトなどの通販サイトでも取り扱っている。購入を検討している人は検索してみると良いだろう。

20枚つづりのタイプを購入した。筆者が訪れた秋葉原の店では、NFCタグが埋め込まれたキーホルダーなども販売されていた

裏側がシールになっており、好きな場所に貼ることができる。磁気が血行を促進する某絆創膏と似ているが、肩こりや腰痛など気になる部位に貼っても効果はない

アプリを導入する

次に、NFCタグに対応した専用アプリを準備しよう。初心者にも使いやすいのが無料の「Trigger(トリガー)」だ。同アプリはNFCタグへのプログラムの書き込みにも、NFCタグからのプログラムの読み込みにも対応している。Triggerを使えば「ディスプレイの輝度を明るくし」「モバイルデータをオンにし」「ブラウザで特定のWebページを開く」といったような複雑なアクションも、NFCタグを1回かざすだけで自動実行できるようになる。

ユーザーが任意でプログラムを書き込むことができる無料のアプリ、Trigger

Triggerでプログラムを書き込む際は、まず端末のNFC機能をオンにしておこう。「設定トリガー」では”何をトリガーにするか”を選べるので「NFC」を選択。次の「設定タスク」で”スマホにどんな動作をさせるか”を選ぶ。ここでは複数のアクションを組み合わせることが可能だ。次の「アクションの設定」で、挙動の詳細を決める。最後にNFCタグをかざせば、プログラムが書き込まれる。

アプリの利用イメージ。アクションの順番は任意で変えられる。URLを入力しておけば、特定のWebページを開くこともできる

使い道を考える

便利な使い道を考えてみたい。例えば自宅に帰宅した際には、何を差し置いてもまずはスマホを充電したくなるもの。そこで充電用のクレードルにNFCタグシールを貼っておく。そうすることで、自動でモバイルデータをオフに、Wi-Fiをオンにでき、マナーモードを解除することが可能だ。枕元には、就寝前にタッチするためのNFCタグを用意しておく。着信音量が0になり、目覚まし機能がオンになるプログラムにより、不要不急の電話で起こされることがなくなり、朝もしっかりと起きられるだろう。

シールを剥がしてみたところ。非接触ICチップが確認できる。この製品の場合、1枚の容量は164byteだった。プログラムは後から何度でも書き直すことができる

筆者は、スマホにBluetoothキーボードを接続させて原稿を書く機会が多い。そこで仕事に使うスマホスタンドにNFCタグシールを貼ってみた。するとスマホをスタンドに置くだけでBluetoothキーボードに自動接続できるほか、画面の回転がオンになり、自動消灯が10分になり、普段利用している文書作成アプリが起動するようになった。

スマートフォンが任意のBluetooth機器に接続してくれない、あるいは接続するまで時間がかかるといった悩みを抱えたことはないだろうか。スピーカー、ヘッドセット、キーボードなど複数のBluetooth機器が登録されていると、その選択肢の多さゆえに接続まで時間がかかってしまうのだ。こんなときも、指定したBluetooth機器に接続させることができるTriggerを活用したい。使いたい機器にNFCタグシールを貼り付けておけば、ワンタッチで確実にその機器に接続が可能になる。なおアルミニウムなどの金属に貼り付けると反応しないので、その点だけは注意したい。

Triggerでは、接続したいBluetooth機器を指定することができる(写真左)。アルミニウムなどの金属に貼り付けるとNFCタグが反応しないので注意したい(写真右)

NFCタグは、分厚いスマホカバーの上からでも反応する。しかしスマートフォンのディスプレイ側からは全く反応しない。この性質を利用して、折りたためるタイプのスマホカバーに貼っておくという手も考えられる。

スマホカバーに貼っておくのもひとつの手段(写真左)。分厚いカバーの上からでも問題なく反応した(写真右)

このほか乗用車の車内に設置したクレードルに貼っておけばナビゲーションアプリを利用する際に便利になる。オフィスでも利用できそうだ。今回は購入しなかったが、キーホルダー型の製品を購入しスマホのストラップにしておくのも良い。家の者に宛てた「今夜は遅くなります!先に寝ててください」などといった文面のメールが作成されるプログラムを書き込んでおけば、毎日のちょっとした手間が省ける。前述の通り、NFCタグの1枚あたりの単価はとても安い。したがって躊躇うことなく、贅沢な使い方をしていきたい。

「今夜は遅くなります!先に寝ててください」といった文面のメールが家の者宛てに作成できるプログラムにより、毎日の手間ひまが軽減される

GooglePlayにおいて「NFC」でキーワード検索すると、Triggerのほかにも便利なアプリが複数ヒットする。興味のある方は試してみてほしい。本稿では、その中から「NFC Unlocker」を紹介しよう。同アプリは、NFCタグでスマートフォンのロックを解除できるようになるもの。セキュリティ管理を重要視している人に最適だ。複数のNFCタグが登録可能なので、定期入れ、財布など普段から肌身離さず持っているものにアンロック用のNFCタグを入れておくと良いだろう。

NFCタグでスマートフォンのロックを解除できるようになる、NFC Unlocker。セキュリティ管理を重要視している人に最適なアプリだ

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冒頭でもお伝えした通り、NFCに対応したスマートフォンの周辺機器が増えている。そんな今だからこそ、敢えてこんな素朴な疑問をぶつけてみたい。NFC対応製品を1個買えば、それだけでユーザーの利便性は高まると言えるのだろうか。話はそう単純ではない。それどころか実際には、不便になることさえあるだろう。例えば、その製品を使うときだけNFC機能をオンにする必要が生じる場合を想像してみてほしい。

日常生活の様々なシーンでNFCタグを常用することで、NFC機能がより身近になる。すでにNFC対応製品を使っている人なら、その相乗効果も期待できるはずだ。アイデア次第で用途が広がるNFCタグ。是非、多くの人にその便利さを体感してほしいと思う。

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