森記念財団 都市戦略研究所は6日、「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う我が国への経済波及効果」を発表した。それによると、東京オリンピック開催に伴う経済波及効果(生産誘発額)は約19兆4,000億円、開催までに約121万人の雇用を生むと試算している。

東京オリンピックの経済波及効果については、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会および東京都スポーツ振興局(以下、東京都発表)が約3兆円と算出している。これに対して、同財団では、東京都発表に国民の消費の拡大や企業活動の活発化なども加味して、経済波及効果を約16兆4,000億円と試算。これに東京都発表分を合算すると、経済波及効果は約19兆4,000億円に上ると見ている。

森記念財団想定の新たな経済波及効果(出典:森記念財団Webサイト)

経済波及効果の詳細を見ると、訪日外国人の増加(消費拡大)により3,356億円、宿泊施設の建設増加(建築投資額増大)により1兆308億円、道路整備など基盤整備事業の前倒し(基盤整備投資額の拡大)により1兆2,591億円、新規雇用の増加(所得増大による需要拡大)により2兆7,988億円などと試算している。

また、社会全体で華やかな喜ばしい出来事が起きた時、気分が高揚して様々な消費行動が拡大する「ドリーム効果」が起こると予想。2020年にかけての7年間に、国民が貯蓄に充てていた額の相当部分が消費に回ると仮定し、7兆5,042億円の経済波及効果があると見込んでいる。消費が拡大する分野としては、ハイビジョンテレビなどの高性能電気機器の購入促進や、スポーツ用品の購入促進などを挙げている。

粗付加価値誘発額は、東京都発表と合わせると約10兆円となり、年換算で約1.4兆円となる。これは、政府の経済成長目標2.0%を、さらに0.3%程度押し上げる効果となることが期待できるとしている。

経済波及に伴う新たな雇用の創出は、2020年までに延べ約106万人、年平均で約15万人の増加と予測。これに東京都発表分の約15万人を加えると、合計で約121万人、年平均で約17万人増加すると見込んでいる。

同財団想定の106万人について産業別に見ると、製造業で約18万人、建設業で約12万人、第3次産業従事者で約74万人増加すると予想。ただし、新たな経済活動に必要な雇用を確保するためには、「雇用の流動化などを促す労働市場政策が必要」と指摘している。

また、オリンピックのような大きなイベントの開催直後には経済の落ち込みが生じることが多いとし、「そうした落ち込みを防止し、日本経済の持続的な成長に向け新たな需要創出につながるイノベーションを生み出すための規制改革が必要」と提言している。