新CEOを確定せずに迎えた2014年、Microsoftはデバイス&サービス戦略を推し進める前に足下を固めなければならないことに気付いている。これまで同社の中心であったソフトウェアの開発と販売における最大の敵は不正コピーだ。
とどまる気配を見せない不正コピー品
日本マイクロソフトは2013年12月16日、公式ブログにおいてWindows OSやOfficeスイートの不正コピー品に関する注意喚起を行った(関連記事)。製品を不正コピーしたものを販売する業者が後を絶たないという。
正しい対価を払わずにソフトウェアを利用する不正コピーとの戦いは古くから続いてきた。MicrosoftはWindows XPでプロダクトキーの入力を必要とするシステムを導入し、その後、不正なインストールを行ったOSに対して、再アクティベーション(認証)を求めるメッセージを発するようになった。
その後もアクティベーションシステムの強化や不正コピーに対する啓蒙活動を行ってきたが、日本マイクロソフト公式ブログの記事「『買ってはいけない』オンラインショップ10の特徴」によれば、不正コピー品であることを知らないまま利用してしまう「カジュアルコピーユーザー」の数は多いという。
関係者によれば1日100件程度らしいが、同社のカスタマーサポートには「インストールできない」などの問い合わせが相次いでいる。「大手Eコーマスサイトだから安心」と不正コピー品を購入したユーザーが助けを求めてくるのだが、カジュアルコピーユーザーは、同社には不正コピー品をサポートする義務がないことを理解できないそうだ。
本来であれば販売業者に問い合わせるべきだが、不正コピー品を販売する業者は取り引き完了後に雲隠れするケースが多い。犯人捜しをするつもりはないが、得をするのは不正コピーを販売する業者のみであり、カジュアルコピーユーザーだけでなく、日本マイクロソフトも損をしてしまう。このような状況を憂慮して同社は新たな啓蒙活動を始めたのだろう。
大手Eコマースサイトの実態は?
先のブログ記事ではアングラサイトやP2Pファイル交換などではなく、ネット上のオンラインショップやオークションサイトの不正コピー品に絞り、注意を喚起している。ここで気になるのが、不正コピー品がどの程度流通しているのかという実態だ。それを確かめるべく、「Office 2013」というキーワードで大手Eコーマスサイト内を検索してみた。
最初にお断りしておくと、検索結果の件数=不正コピーの数ではない。Amazon.co.jpで検索してみると結果は121件。WordやExcelといった単体品や他社製Officeスイートも検索結果に含まれるため、大半は正規品と考えていいだろう。ただし、「並行輸入品 プロダクトキー」といった注意書きが加えられた明らかな不正コピー品も数点含まれていた。
楽天で全てのジャンルを対象に検索を行うと92,045件と圧倒的な数字が出てきた。家電量販店なども出店しているため、プリインストールPCなども多く含まれたようだ。そこで楽天オークションで検索してみたところ、49件がリストアップされた。その中には日本で販売されていない「Office Home and Student 日本語可」と題したものもあり、不正コピー品の出品が確認できた。
そして、ヤフオク!のソフトウェアカテゴリで同じ検索を行うと、737件と他のサイトと比較してかなり多い数がヒットした。中にはOffice 2013だけでなく、Office 2010、Windows 7やWindows 8をセットにして出品している例もあった。本稿を執筆しなければ検索する機会などなかったが、かなりの不正コピー品が販売されていることが確認できた。
このような問題に対して日本マイクロソフトは、疑わしい販売業者や商品の特徴として「『買ってはいけない』オンラインショップ10の特徴」を提示し、一部のEコマースサイトに不正コピー品に対する注意喚起バナー広告を掲出した。前述の関係者によれば、注意喚起バナーに非協力的なサイトもあるらしいが、不正コピー品の違法性を認識していないカジュアルコピーユーザーの啓蒙には、ある程度の効果を期待できるだろう。
不正コピー品の蔓延は今に始まったことではない。パーソナルコンピューター黎明期には記憶媒体がカセットテープだったため、ダビングによる不正コピー品が横行していた。記憶媒体がフロッピーディスクに移行した頃には、ベンダーは不正コピーを抑止するため、ディスクコピーを不可能にするプロテクトを付加した。しかし希にだが、正規購入したユーザーでもコピープロテクトが動作するなどの例もあった。
著作権保護に関しては多様な意見があるものの、現時点では著作物を守るために必要なルールである。革新的なソフトウェアが正しく評価され、次につながる流れを維持するために、まずはカジュアルコピーユーザーの増加を食い止めるべきだろう。
阿久津良和(Cactus)