UR賃貸って初期費用が安いって聞いたけど、どんな住まい?

UR賃貸って初期費用が安いって聞いたけど、どんな住まい?

UR賃貸の物件は初期費用が安いって聞くけれど、本当に安いのでしょうか。また、物件のスペックも気になるところですよね。そこで、UR賃貸住宅のメリットとデメリットについて“不動産・住生活”のプロに伺ってみました。


Q.UR賃貸って初期費用が安いって聞いたけど、どんな住まい?

UR賃貸とは、かつて「公団住宅」(団地)といわれた公的な賃貸住宅です。全国に約75万戸あり、物件を所有するのは独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)。これは日本最大の大家さんです。中所得者層から高所得者向けの住宅で、入居条件には収入の下限があります。以前は抽選でしたが、現在は先着順で入居可能。都市型住宅の先駆的存在として、古い建物でも大幅なリニューアルで新築と変わらない快適性を提供したり、ヤギを除草実験として使ったりと、時代に合わせた新しい住まいを提案しています。

UR賃貸のメリットとは?

UR賃貸には、多くのメリットがあります。まず、礼金や更新料、保証人、保証料、仲介手数料が不要な点。また、鍵の取り換え費用もUR賃貸が負担し、火災保険は任意加入です。つまり入居時に必要なのは、敷金と引っ越し代だけ(カーテンなどのインテリア代除く)。物件によっては、敷金を分割できる、フリーレントがついていることもあります。

敷金の清算方法が明確なのもうれしい点です。入居時に、退去する際の原状回復について、借り主が負担する内容が書類で具体的に示されています。
たとえば、壁紙のクレヨンの落書きは借り主負担ですが、テレビの放熱あとや、ポスターの日焼けはUR都市機構が負担します。さらに、入居してすぐ「住宅点検確認書」が渡され、部屋の状態を細かくチェックして、書類に書き込み提出します。壁紙にシミや汚れなどを書き込んでおけば、退去時に請求されることはありません。この時点で不具合があれば、すぐに直しに来てもらえます。

住宅の質が民間賃貸住宅と比較して、高いのもメリットです。現在、UR都市機構では、70年間、建物を維持する計画をしています。阪神淡路大震災や東日本大震災では、旧耐震基準の建物でも大きな被害は受けませんでした。旧耐震の古い建物では、順次、現在の耐震基準に合致させる工事を実施中です。大規模リニューアル(「リニューアルi」)の物件では、床暖房やテレビモニターつきインターホン、キッチンの戸棚の耐震ラッチ(大地震でも扉が開かない)、追い炊き機能つき浴室、シャンプードレッサー、ビルトイン3口コンロ加え、エントランスにはオートロックや防犯カメラがあります。無印良品と提携して、おしゃれな住まいに生まれ変わった物件もあります。自分で壁紙を張り替えたり、戸棚を設置したりできる物件もあり、住まいにこだわりのある人たちから支持を受けています。なお、設備に不具合があると、早ければ当日、見に来てもらえ、対応が早いです。

UR賃貸にもデメリットはある?!

一方で、デメリットがないわけではありません。たとえば、立地のよい物件もありますが、駅から徒歩10分以上、あるいはバス便になる場合も少なくありません。家賃は、周辺の同条件の民間賃貸と比べると少し高いものもあります。しかし、更新料がなく、設備が民間賃貸では導入できないハイレベルなものが多いので、相殺されそうです。また、敷金は通常、3カ月分を準備しなければなりません。ただ、キャンペーンで家賃の2カ月分でよいところもありますのでこまめにチェックしましょう。

また、UR賃貸の住宅は1Rでも30平方メートル程度(東京都内)が最低の面積です。これは、生活の場としての基本性能を満たすためだといいます。築年や立地によって家賃は違いますが、広さは家賃に反映されるため、民間の1Rと比べて広い分家賃が高いと感じることもあるでしょう。ただ、2LDKや3LDKを友達とシェアして借りれば、比較的賃料の負担は少なくなるでしょう。

さらに、リニューアルの状態は、物件によって差があります。古い物件では、エレベーターがなく、ガスコンロや網戸などを自分で準備しなければならないこともあります。加えて、家賃が3年に1度見直されます。次回は、2014年4月。周辺物件と比較して家賃が決まります。前回、2011年4月時点では値上げは約1割、変わらなかったのは9割弱。引き下げられた物件も約5,000戸とわずかにありました。また、築年が古いと壁厚が今のURと比較して薄いため、遮音性に劣る可能性があるかもしれません。

UR賃貸を借りたい場合、URの最寄りの営業センターか、民間の不動産会社で「UR賃貸住宅取扱」の旗のあるところに行きます。1度に1つの部屋しか内覧できませんが、時間に余裕がある人なら、1つを見て断って次を申し込めます。インターネットでも空室が紹介されていますが、よい部屋はすぐになくなり、なかなか表に出てきません。一度、UR賃貸に入居すると、快適性に魅かれ、同じ建物内の別の部屋や、違う地域のURに引っ越す人も少なくないようです。

高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『最高のマンションを手に入れる方法』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中

 

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