2013年は、Windows 8.1の登場とともに、2in1 PCによる新たなフォームフォクタを採用したデバイスが登場したWindows PC市場。Windows PC売り場を訪れると、ユニークな形状のPCが数多く並んでおり、これまで以上に様々な機能を持った製品がラインアップされているのがわかる。
Windows 8.1搭載PCは、量販店モデルに限定すると、現時点では約60機種の品揃えとなっているが、企業向けモデルやWindows 8搭載PCを加えると、3桁の製品数が品揃えされている。こうした点でもWindows PC市場の広がりがみてとれる。では、2014年のWindows PC市場はどうなるのだろうか。いくつかのポイントから俯瞰してみた。
Windows XPサポート終了、2014年のヒットOSは?
Windows PC市場において、2014年に迎える最大のヤマ場は、やはり、2014年4月9日に迎えるWindows XPのサポート終了だろう。2013年12月30日に、サポート終了まであと100日を切り、まさにカウントダウンの状況に入っている。
IDCジャパンによると、2013年12月末時点で、法人向けPCで723万台、個人向けPCで597万台のWindows XP搭載PCが残っていると推測されている。これは、法人向け市場では全体の20.2%、個人向け市場で14.0%という構成比だ。
業界の試算では、4月9日以降も一定台数のWindows XP搭載PCが残るといわれており、日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「4月末に、1桁台の構成比にまでは引き下げたい」との目標を示す。
個人向けPCが中心となる量販店では、まだWindows XPの買い換え需要はまだそれほど顕在化していないが、法人向けPC市場はすでに買い換え特需が発生している。その影響を受けて、大手システムインテグレータでは、12月は前年同月比2倍の販売台数を記録。NECパーソナルコンピュータでは、PC生産の米沢事業場において、夏以降、前年同期比3割以上の増産体制を敷いており、1月以降はさらなる増産を視野に入れた体制づくりを構築中だ。
これに4月から実施される消費増税前の駆け込み需要が加わることになり、Windows PC市場はさらなる需要拡大が見込まれる。
ただ、現時点での企業向けPCの買い換え需要の中心は、Windows 7搭載PCとなっている。PCメーカーの増産対象もWindows 7が主力となっているのが実状だ。2014年の隠れたヒットは、Windows 7ということになりかねない状況ともいえる。
2in1 PCの拡大と「薄さ」への潮流
個人向けPCとして注目しておきたいのが、2in1 PCである。
2013年も主要PCメーカーから、さまざまな形態の2in1 PCが登場したが、2014年もその勢いは継続しそうだ。2in1 PCは、形状が変化したり、液晶部分が取り外せたりといった仕様になっており、PCとタブレットの両方で利用できるのが特徴となっている。
これまでは各社のフラッグシップモデルとして用意することが多かったが、2013年の秋冬モデルでソニーが発売したFitシリーズのように、メインストリームの領域にまで2in1 PCが投入されはじめている。こうした動きが2014年に活発化することを期待したい。
一方で、Ultrabookの存在感はやや薄くなりそうだ。
現在でも販売数量ベースでは、ノートPC全体の約1割と、構成比は低いUltrabookだが、昨今ではUltrabookの仕様には合致しなくても薄型筐体を採用したノートPCが登場しており、全体の流れが薄型化に傾くなかで、Ultrabookとしての優位性が訴求しにくくなっているのも事実だ。Ultrabookには薄さなどについて厳密な定義があるが、薄型化の方向に向かっているという流れをみれば、大きな意味で、ノートPC全体がUltrabookが目指した方向に向かっているといえよう。
液晶は高解像度化、8型Winタブ市場にも期待
高解像度液晶搭載モデルも、2014年は採用が増えそうだ。とくに、日本では高解像度に対する理解が進んでおり、コンシューマユースだけでなく、ビジネスユースでも高解像度液晶を搭載したPCを活用するといった機運が出ている。
問題はこの動きが、海外でどれぐらい受け入れられるかだろう。東芝やソニー、富士通など高解像度分野をリードする大手PCメーカーは、海外事業が重要なウエイトを占めるメーカーばかり。海外での事業拡大が見込めない製品は絞り込む傾向にあるだけにその点が気になる。
だが、新興国に向けた成長戦略からの脱却を目指しているメーカーが多いという点では、先進国が中心となる高解像度モデルの成長には期待ができそうである。
液晶まわりでは、2013年後半になって、8インチ液晶ディスプレイを搭載したタブレットが相次いで登場したことも、2014年には期待を持たせる要素だ。この領域の製品が品揃えされることで、Windows搭載タブレット市場が活性化することを期待したい。
2013年に登場した、主な8型Windows 8.1タブレット |
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日本エイサー「Iconia W4-820」 |
デル「Venue 8 Pro」 |
東芝「dynabook Tab VT484」 |
レノボ・ジャパン「Miix 2 8」 |
次期Windowsは2014年秋か
ほか、気になるのは、Windows 8.1の次のOSの存在だろう。
ラピッドリリースを標榜するマイクロソフトにとって、新たなバージョンを2014年に投入するのは決して不思議なことではない。むしろ、秋を目途に投入されると考えていいだろう。問題は、Windows 8.1のようにアップデート版なのか、Windows 8のようなメジャーバージョンアップ版なのかということだ。
一部報道などでは、Windows 9とも言われるメジャーバージョンアップ版の登場は2015年が有力とされており、これをもとに考えれば2014年は、アップデート版が登場することになろう。
新たな機能や改良点などは明らかではないが、PCメーカーに言わせると、「裏で予想外の動きをすることがある」という声があがるように、機能の安定稼働に向けた改良などが施されることにはなりそうだ。アップデート版であれば、Windows 8およびWindows 8.1ユーザーは、無償でアップデートできるようになるはずだ。
Nokia再上陸の可能性
もうひとつ気になるのが、ストートフォンであるWindows Phone 8の国内投入だ。
これはPCではないが、PC、タブレットとスマートフォンが揃ってこそ、マイクロソフトが目指す「デバイス&サービスカンパニー」が実現するだけに、日本マイクロソフトにとっても重要な製品であることに代わりはない。
これまで日本マイクロソフトでは、「準備に向けて努力している」とのコメントにすぎなかったが、日本マイクロソフトの樋口社長は、「Windows Phone 8については、2014年にはなにかしらの道筋をつけたい。少なくとも社内においては、方向感を打ち出したい」との姿勢をみせた。
きっかけになるのは、2014年1~3月に完了するNokiaの買収だ。日本からは一度撤退しているNokiaだが、マイクロソフト主導のもと、Windows Phone 8をひっさけで日本に再上陸する可能性も捨てきれない。2014年は、日本マイクロソフトがWindows Phone 8に対して、どんな動きを見せるのかが注目されることになりそうだ。
米Microsoftから買収の発表後、NokiaからはWindows搭載端末が複数発表された。本機はNokiaのWindows RT 8.1搭載10.1型タブレット「Lumia 2520」(国内未発売) |
こうしてみると、Windows PCを取り巻く環境は、2014年も多くの話題が出ることになりそうだ。懸念材料があるとすれば、Windows XPのサポート終了および消費増税による特需の反動によって、春以降、PCメーカーに減速感が出ることだといえよう。PCメーカー各社には、2013年以上に、我々を驚かせる製品の登場を期待したいところだ。