ここのところ、スマートフォンとタブレット端末それぞれにUIを最適化するアプリは増えてきているが、iOS向けに先行して配信するケースが多い。

その一方で、「【動画あり】ヤフーがAndroid向けにアプリ起動中の検索機能を提供」や「開発者に聞く、Yahoo! JAPANアプリで提供する新たな価値とは」でも触れてきたように、ヤフーではAndroid端末に対しても、iOS版と同等かそれ以上の力を入れている。

今回もAndroid版が先行配信という形になるが、Androidタブレットの利用者を街中で見かけることは少なく、タブレット端末利用者の殆どがiPadではないのかというイメージを持つ読者も少なくないのではないだろうか。

ヤフー COO事業推進本部 企画部
トップページ(タブレットアプリ) サービスマネージャー 藤田 充彦氏

しかし、ヤフーのCOO事業推進本部 企画部でトップページ(タブレットアプリ) サービスマネージャーを務める藤田 充彦氏は「Nexus 7や(ベースがAndroid OSの)Kindleの登場で、7インチ台を中心にAndroidタブレットユーザーも飛躍的に増加している」と、タブレット最適化UIの導入意図を説明する。

「iPadについては、iPad miniよりもiPadの方が利用者が多い。逆に、AndroidはNexusなどの低価格タブレットが起爆剤となって、シェアが上昇している」(藤田氏)

タブレット端末の市場拡大が鮮明になるにつれて、スマートフォン向けのユーザーインタフェースでは、ユーザー体験(UX)が損なわれる恐れがある。

ヤフーなどの大手ネットサービス企業でも「導入期にかけては、スマホUIと同じものを提供するというケースが多かった」(藤田氏)というが、当然UXも満足なものは得られない。

「現在、タブレット端末でヤフーを利用している多くのユーザーがPC向けWebサイトを閲覧している。もちろん、最近の潮流に合わせた「タブレット端末向けのUI」なども公開したが、ドラスティックに作り替えると作り手としては面白い反面、ユーザーの立場からすると戸惑ってしまうケースがある。今回のUIは、ユーザーの閲覧する時間帯や、利用しているサービスなどを全て洗い出してタブレット向けに再構築した」(藤田氏)

パッと見てみると、PC向けUIから画像などを大きくしただけにに見えるかもしれないが、裏では様々な努力があったという。

「トップページは、ヤフーの様々なサービスの集合体。各サービスのAPIを引っ張って画像やコンテンツを表示しているためAPI仕様の変更やサイト改修をかなりの規模で行った」(藤田氏)

特にタブレット端末向けのカスタマイズとしては、スマートフォン以上にユーザーが購買行動を行っているため、オークションの通知や販促の告知、現在のTポイント数などの表示を大きく目立たせたという。

その一方で、左カラムにあたる「サービス一覧」はPC向けに比べて表示する数が少ない印象を受ける。これについては「タブレット端末への最適化にあたって、全てのリンクのCTRを洗い出した。そのため、掲載サービスを厳選した。数が絞られてシンプル、もしかすると物足りないイメージを持つかもしれないが、実際にはこの表示で事足りると思う」(藤田氏)

トピックスや動画もタブレット利用用途を入念に調査して作り込んだ

ニューストピックスや映像トピックスについてもタブレットの利用動向を徹底的に洗い出したという。

「動画周りでいえば、通常のコンテンツは昼の利用が多いのに対して、タブレット端末では夜や自宅での利用が多い。つまり、暇潰しとして利用している可能性が高い。そこで、Yahoo! JAPANトップから簡単に動画が見られるようにワンタッチで動画再生ができるようにした。そして、またワンタッチで元のトップページに戻ることができる」(藤田氏)

Yahoo!ニュースのトピックスについても以前から提供しているプリロード機能に加えて、ニュースの一覧性を強化。左カラムで記事タイトルを確認しつつも、トピックスの詳細を確認できるように最適化されている。

「テレビのザッピング的な感覚で見られるように最適化している。また、Yahoo! JAPAN トップのトピックスも画像表示を大きくして視認性を良くした。実は、開発途中にトピックス一覧の記事数を4本×2列や10本などを試したが、通常のPC向けと同じく8本に留めた。過去の経験則などで記事は縦8本がベストと言われましたよ(笑)」(藤田氏)

タブレットに最適化したUIはユーザーファーストを一番に考えて、広告表示を排除している。ネット企業の生命線とも言える広告を掲載しないことは会社としてマイナスにも思えるが、藤田氏はこの決断について胸を張る。

「ユーザーにとってストレートに有益なものを表示するように考えた結果がこのUI。月に1回訪れてもらうのではなく、週に1回、毎日と接触機会を増やしてもらうことが重要。アプリ利用者が増えた後、色々と検討するかもしれないが、今はまだ、ユーザー獲得を一番に考えていきたい」

最後に藤田氏は、スマートデバイスの時代への意気込みをヤフーを代表して語ってくれた。

「今までと同じようにサービスを提供していたらダメだという思いがあって、ビジュアルを練り込んだUIを作り上げた。イノベイティブなサービスが次々と登場する中で、ヤフーも負けていられない。時代に取り残されないように、そしてもっとイノベイティブに様々な取り組みをもっと行っていきたい」