タブレットによる打撃を受け、PCの出荷台数はここ数四半期、前年割れが続いている。PCベンダーが岐路に立たされている中、現在世界シェア3位のDellはどのような戦略をとっていくのか、同社が12月12日と13日に米テキサス州オースティンで開催した「Dell World 2013」で、エンドユーザーコンピューティング(EUC)事業部のグローバルセールス担当プレジデントであるDavid Schmoock氏に話を聞いた。

――PC市場では今年、世界シェア上位5社のうちトップ3のLenovo、HP、Dellのみがシェアを増やした。PC市場でなにが起こっているのか?

Schmoock氏 スケールと規模、成長が重要になった。Dellは、PC事業は今後も成長すると考えており、コミットしている。真剣にデスクトップPCを作っているベンダーが何社あるだろうか?

歴史をみるとわかるが、PC業界に再編が起こっている。市場が成長しているときは多数のベンダーが参入するが、成長が一息つくと再編が起こりベンダーの数は少なくなる。経営学ではシェア1位か2位でなければ成功しないと言われているが、Dellは正しい方法でフォーカスして、その中に入りたい。

Dellは株式の非公開化により正しい決断を下すことができるようになった。市場シェアを買うようなことはせず、顧客の声を聞く。顧客をハッピーにして、成功させることが大切だ。この方法は持続性があり、長期的に成長し、シェアを増やすことができると信じている。強い土台のある家を作るのと同じだ。

米Dell エンドユーザーコンピューティング(EUC)事業部 グローバルセールス担当プレジデント David Schmoock氏

――今後1年、具体的にどのようなことにフォーカスするのか?

Schmoock氏 日本市場では第2四半期、第3四半期ともに前年比プラス30%で売り上げを伸ばした。世界市場ではシェアを第1四半期にプラス0.3ポイント、第2四半期に0.9ポイント、第3四半期にプラス1.2%高めた。また、2013年はコンシューマー向けの強化にも、たくさんの時間を費やした。

今後は製品ポートフォリオを拡大し、素晴らしい製品を揃えていく。たとえば「Latitude 7000」は最高レベルのノートPCと自負している。タブレットも重要だ。さらに、4K2Kディスプレイを1,000ドルを切る価格で提供する。これは現在の4分の1程度の価格であり、市場の起爆剤となるだろう。

Windows 8.1タブレット「Dell Venue Pro 11」

――タブレットとその搭載OSの計画は?。

Schmoock氏 タブレットは成長市場だ。世界共通で成長国でも途上国でもタブレットは成長している。第3四半期と第4四半期、Dellのタブレット事業は倍増以上で伸びた。今後も業界平均以上のペースで成長させる。もちろん、製品も拡充する。

ラインナップとしては秋にITプロフェッショナル向けの「Venue Pro」、そしてコンシューマー向けの要素が強い「Venue」を投入し(※)、ローンチに成功した。Venue ProはWindows 8.1を、VenueはAndroidを採用している。タブレット市場ではWindowsとAndroidの両方のニーズがあると見ている。 ※Androidタブレット「Venue」は国内未発表

米国ではAndroidタブレットも揃える。7インチの「Venue 7」と8インチの「Venue 8」

――タブレットは現在Androidが圧倒的なシェアを持つが、コンシューマー向けのWindowsタブレットの動向をどう予想する?

Schmoock氏 長期的にはWindowsタブレットのシェアが増えていくだろう。Windowsタブレットが法人市場で広まり、これがコンシューマー市場にも拡大するだろう。実際、Windows 8.1を搭載した「Venue 8 Pro」はブラックフライデーとサイバーマンデーで好調だった。

10月に発表した11.6インチの2-in-1「XPS 11」

2-in-1の「XPS」も差別化になる。Googleの「Chrome OS」を採用した教育市場向けの「Chromebook 11」も発表した。Dellは選択肢が重要と考えている。

その上で最近のトレンドと感じているのは、コンシューマリゼーションだ。企業顧客はデバイスがユーザーに訴求することをこれまで以上に重視している。BYODのトレンドにより、エンドユーザーが購入の意思決定に力を持っている。「Venue Pro」や「Latitude 7000」などはその結果だ。法人向けとコンシューマーの両方の声を聞いて製品に反映できるベンダーが競争に勝つだろう。

また、今回のDell WorldではDropboxとの提携を発表した。エンドポイントデバイスだけではなくクラウドも安全にするもので、クラウドとデバイス間でデータを安全に動かすことができる。これはBYODの課題に対応する。サーバー、ストレージ、ネットワークとデータセンターすべてをカバーするエンドツーエンドソリューションはDellだけだ。これはPC事業に付加価値をもたらす。

――Dropboxとの提携はどのようなものか?

Schmoock氏 Dropboxのユーザーは2億人を数え、毎日10億件のファイルがアップロードされている。エンドユーザーはDropboxが大好きだ(笑)。企業ユーザーも多い。そこで、Dellの全てのクライアント製品にDropboxをプリインストールして出荷する。DellのセールスチームからDropboxの法人向けサービス「Dropbox for Business」を購入できるようになる。DellのData Protectionと組み合わせることで利用を管理できる。戦略的に重要な提携となる。