猫カフェはブームの枠をこえ、今や定番のカフェ形態として定着しつつある。また、猫カフェに続き、犬カフェやうさぎカフェなど様々な動物と触れ合えるカフェが増えてきているのはご存知の通り。そんな中、最近じわじわと人気が出てきているのが鳥カフェだ。

中でも、東京メトロ東西線の木場駅から徒歩3分ほどの場所に店舗を構える「鳥のいるカフェ」(直球のネーミング! )はタカやフクロウといった猛きん類からインコやヨウムまで15種以上・20羽以上の鳥がおり、鳥好きの間で人気を博しているというではないか!! そこで実家でオカメインコを飼っている鳥好きライターが、開業から1周年を迎えたばかりの「鳥のいるカフェ」におじゃましてみた。

東京メトロ東西線・木場駅の4A出口から直進200mのところにある「鳥のいるカフェ」。この看板が目印だ

森の中に迷い込んだかのようなたたずまい

興味深そうにこちらをジッと見ているのは、世界最大級の大きさを誇るミミズクである、ユーラシアワシミミズク

まず、驚くべきはその外観だ。ビルが立ち並ぶ通りに「鳥のいるカフェ」はあるのだが、木々が生い茂っているデザインの看板からして、良い意味で異彩を放っている。お店はガラス張りになっているので、外からでも猛きん類などの鳥の姿を堪能できる作りだ。

ガラス越しに店内をのぞいてみると……か、かわいい! なんてかわいいんだ!! フクロウのつぶらな瞳にジッと見つめられると、ついついお店のドアを開けて中に入ってしまいたくなる。通りすがりのビジネスマンや子供たちも立ち止まって鳥を眺めているし、地元住民に愛されているお店だということがうかがえる。

いても立ってもいられなくなってお店に入ってみると、タカやフクロウ、ヨウムなど様々な鳥から「なんか、知らない人間が入って来たなぁ」とでも言いたげな視線を感じる! しかし、その視線がまた幸せなのだ。

猛禽類だけでも様々な種類が。小さいのはコノハズクで、これでも立派な大人だそうだ

木のオブジェの下にいると、木陰で休んでいるかのよう。幹からミミズクが顔を覗かせているが、こちらは人形

「店内に一歩入ったら、森の中に迷い込んだかのような感覚になる店作りをしています。鳥の家に人間がおじゃましている感じですかね」と、オーナーの明渡隆祐さん。確かに店内にドーンとたたずむ大きな木のオブジェは一際目を引くし、鳥に囲まれているので鳥の憩いの場におじゃまさせてもらっている気持ちになる。

そして、予想に反して鳥の匂いが全くと言っていいほどしない。「その理由は空調にあるんですよ。空気の流れを"店内→鳥のいるスペース→外"の順番になるように工夫しているので、空気がきれいなんです。カフェなので、やっぱりお客様には気持ちよく過ごしてほしいし、衛生面には特に気をつかっています」とのことだ。

キッカケは一羽の"迷いタカ"

お店のコンセプトからしてかなりのこだわりを感じるが、そもそも明渡さんが「鳥のいるカフェ」をオープンするに至った経緯は何なのだろうか。

こちらは"迷いタカ"と同じ種類のハリスホーク。こんな鳥が街中にいたら驚いてしまう(笑)

「子供の頃から動物が好きで、大阪に住んでいた頃からタカをはじめとした猛きん類も含めていろんな鳥を飼ってたんですよ。それから上京しましたが、東京ってペット不可の住居が多く、引っ越しのタイミングで飼ってた鳥を手放したんです。それで2年くらい何も飼わずにいたんですが、たまたまタカを保護しましてね。きっと誰かがペットで飼っていて捨ててしまったのでしょうが、東京に"迷いタカ"がいたんですよ。そのタカを見ているうちに『やっぱり鳥って面白いな』と感じて、ペットを飼えるところに引っ越してからというもの、1羽から2羽、2羽から3羽と、どんどん鳥が増えいきまして」確かに、東京に迷いタカ……。普通の人ならちょっとギョッとする。明渡さんに見つけてもらってよかったね。

そのうち、「住居の中だけではおさまりきらなくなってきたため、どうしようかと考えたときに、『猫カフェや犬カフェはあるけど、そういえば鳥カフェってあまりないよな』と思いつき、このお店を始めたんですよ」とのことだった。つまりこのカフェは、オーナー自身が飼っていたペットたちの飼育スペースという側面もあったのだ。

時間制ではなくのんびり

同店は時間制ではないので、飲み物やフードを注文すれば時間を気にせずのんびりできるのもうれしいポイント。コーヒー、紅茶、ジュース類が各600円のほか、生ビール、ワイン、焼酎といったアルコール類も置いてあり、こちらも各600円。そのほかにもお得なケーキセットが1,000円、フード類も500円~と充実。

中でも初来店のお客さんから特に人気なのが、店長考案の「ぷてのお顔のレアチーズケーキ」(600円)や「バンのお顔のコーヒーゼリー」(600円)。これはパンダコカトゥーという種類のぷてちゃんと、アフリカワシミミズクという種類のバンくんの顔を模したスイーツ。見た目がキュートすぎて「食べたい! でも崩したくない!! 」というジレンマに陥ってしまうほど。他にも「かわいい鳥さんクッキー」など、鳥にちなんだメニューが心とおなかを満たしてくれるのだ。

お客さんを楽しませたい一心で店長が考案したスイーツ「ぷてのお顔のレアチーズケーキ」と「バンのお顔のコーヒーゼリー」(各600円)。もちろん味も絶品

茨城の地ビール「常陸野ネストビール」3種とベルギービール「スティーンウルク」はフクロウのラベルがかわいい(各1,000円)

鳥を見ながらゆっくりと休むことができる。店内は全部で12席

店内ではアクセサリーから雑貨まで様々な鳥グッズも販売しているのでお土産にいかが?

鳥との触れ合いも

獰猛そうに見えるハリスホークだが、しっかりと調教されているので腕に止まってじっとしてくれる

そして、もちろん最大の魅力が鳥と触れ合えること。なんとタカやフクロウを腕に止まらせたり、なでたりすることができるのだ。鳥好きとしては黙っていられない! そこで早速ハリスホークというタカの一種と触れ合ってみることに。鋭い眼光と風格すら感じられる落ち着きよう。とにかく、とてつもなくカッコイイ!! 思ったよりも重くなく、女性でも腕に止まらせることができそうだ。

次にアフリカワシミミズクとも触れ合わせてもらうことに。こちらもかなり大人しく、背中をなでていても嫌な顔一つしない。触り心地はフワッフワで、思わずずっとなでていたくなってしまうほど。鳥たちの体調を考慮して、一回に触れあう時間は5分ほどと定められているが、猛きん類と間近でコミュニケーションを取るという貴重な体験をすることができた。

そんな素敵な体験をすることができる「鳥のいるカフェ」は、平日はビジネスマンさんやOLさんが癒やしを求めて足を運び、休日になると家族連れも訪れるそうだが、中にはこちらに来店するのが目的で、わざわざ北海道や何とニューヨークから来たという方もいたとか。

腕を差し出すとスッと乗ってくれたアフリカワシミミズク。大人しいので嫌がることをしなければ噛みつくこともない

また、それまでは鳥に興味がなかったあるOLさんは、同店で鳥たちと触れ合っているうちに魅力に惹き込まれ、自宅でフクロウを飼いだすほどハマッてしまったという。鳥好きの方、いや、鳥に興味のない方もぜひ「鳥のいるカフェ」に足を運んでみてほしい。きっと、大小様々な鳥の表情を見ているうちに、いつのまにか鳥の魅力に骨抜きにされてしまうことだろう。

(文・A4studio千葉雄樹)