ダイハツ工業はこのほど、10月にフルモデルチェンジした軽トールワゴン「タント」ベースの福祉車両を2車種発売した。都内で開催された報道関係者向け説明会では、スポーティモデル「タント カスタム」ベースの福祉車両も展示され、注目を集めた。

車いす移動車「タントスローパー」(写真手前)と、昇降シート車「タント ウェルカムシート」。いずれも「タント」ならではの"ミラクルオープンドア"で介助しやすい

新型「タント スローパー」は、電動ウインチの標準装備やスロープの仕様変更で、介助者がより楽に車いすを乗車させられるようになった

低価格とカスタムグレードで福祉車両の常識を変える

今回、ダイハツの福祉車両「フレンドシップシリーズ」に加わったのは、車いす移動車の「タント スローパー」と、昇降シート車の「タント ウェルカムシート」の2車種だ。ベースとなる「タント」の特徴を生かし、福祉車両としての使い勝手を追求したフルモデルチェンジとなっている。

「タント スローパー」は、車両後部のスロープから車いすのまま乗降できるモデル。車いすで乗車しても頭上に十分な余裕があるなど、快適な居住性を実現している。新たに標準装備となった電動ウインチや、助手席側センターピラーのない「タント」ならではの"ミラクルオープンドア"と両側スライドドアの組み合わせなどで、介助者にも利便性が提供されている。

ワイヤレスリモコンや助手席横のスイッチで、シートを回転・昇降させられる新型「タント ウェルカムシート」。写真はスポーティなカスタムグレード

「タント ウェルカムシート」は、助手席が電動で回転・昇降するタイプのモデル。助手席へ乗り移って乗車する車いす利用者はもちろん、普段のクルマの乗降りで足腰に負担を感じているユーザーもサポートする。今回の改良では、誰もがより快適に乗降できるように、シートリフト機構が一新された。

ところで、今回の刷新のポイントは、福祉車両としての機能性の向上だけではないようだ。説明会では、1997年から軽福祉車両シェアトップに立ち続けてきたダイハツが、福祉車両に対する新しい取組みをはじめることも発表された。その取組みの一部は早速、新型「タント スローパー」「タント ウェルカムシート」にも反映されているという。

まず価格設定。「福祉車をより身近なものとするため、標準車に比べてきわめて高額になるという常識を変えていきたい」(ダイハツ工業上級執行役員、堀井仁氏)との考えの下、価格を見直したことが明らかに。たとえば、「タント スローパー」の基本グレードである「L」の価格は、旧型に比べて約15万円値下げされ、142万円となった。軽自動車らしいと感じられる価格帯だ。

新型「タント スローパー カスタム」。迫力のある顔つきやスタイリッシュなアルミホイールが、いままでの福祉車のイメージを変える

同じく福祉車両の常識を変えようという取組みの一環として、旧型では1グレードのみだったバリエーションも拡大したという。「タント スローパー」では、基本グレードの「L」に加え、衝突回避支援システム「スマートアシスト」がついた「L "SA"」(148万7,000円)、より装備が充実した「X "SA"」(157万円)、さらにスポーティな「カスタム X "SA"」(178万円)がラインナップされ、4グレードに。「タント ウェルカムシート」は3グレードとなり(155万6,000円~)、こちらにも「カスタムX "SA"」(181万3,000円)が設定されている。

福祉車両に、趣味性の強い「タントカスタム」が導入されたという今回の発表は、かなりインパクトが大きかった。高齢化が進む日本では、今後、福祉車両ももっとポピュラーになっていくだろう。福祉車両を検討することになったとき、「仕方なく選ぶ」ではなく、「好きな1台を選べる」としたら、自ずと気持ちも明るくなる。

日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞を受賞した「ムーヴ フロントシートリフト」。こちらも131万円~と、従来より低価格だ

ワンボックスタイプの車いす移動車「アトレー スローパー」。より幅広い車いすサイズに対応している

会場には他にも、「2013-2014 日本カー・オブ・ザ・イヤー」で特別賞を受賞した「ムーヴ フロントシートリフト」や、ワンボックスの「アトレー スローパー」も展示されていた。使い勝手からも、そして好みの面からも、車種をあれこれ検討できる、ダイハツの福祉車両の充実ぶりがアピールされた説明会であった。