瞑想(めいそう)をイメージさせるポーズ

ホットヨガにアヌサラヨガ……。ヨガと名のつくものは数あれど、ペアになって行うヨガをご存じだろうか。ペアヨガのなかでも、アクロバティックパートナーヨガ(アクロヨガ)なるヨガが、アメリカをはじめ各国で人気が高まっている。その魅力に迫った。

ベース、フライヤー、スポッターの3つの役割

今回は、日本で唯一のアクロヨガの団体である「アクロヨガジャパン」の代表を務める林けんじさんと同じく代表の西浦莉紗さんに話をうかがった。

アクロヨガとは「スピリチュアルなヨガの叡智(えいち)」「タイマッサージのやさしさ」「アクロバットのダイナミックな動き」の3要素を取り入れたヨガを意味する。アメリカ・ニューヨークでは既にポピュラーになっており、公園などで楽しむ姿が見られるという。アクロヨガジャパンのほか、世界各国に10以上の正規団体があるという。

しなやかな西浦さん(上)の動きを支える林さん(下)

アクロヨガには下になる人(ベース)、上になる人(フライヤー)のほかに、2人のコミュニケーションをサポートする人(スポッター)と呼ばれる3つの役割がある。詳細は以下の通り。

「ベース」
フライヤーを支えることで、バランス力、筋力アップやコアの強化が期待できる。また、足を伸ばし続けることで、下半身の柔軟性アップにもつながる。

「フライヤー」
ベースの足で直接、背骨やリンパを刺激されることで全身の血行やリンパの流れがよくなる。そのほか、全身のむだな緊張がほぐれることで、姿勢改善や心の解放効果も期待できる。

「スポッター」
ベースとフライヤーの呼吸やバランスを調整することで、自らの練習の理解が深まる。

普通のヨガとの最大の違いは、2人以上で行う点にある。そして、フライヤーは空中に浮くことで「マットの上ではできないポージングが可能になり、さらに重力を使うことで(ストレッチの)効果も深まる」(西浦さん)というメリットも得られるという。

アクロヨガの魅力を「リンパの流れをよくして、体の循環がよくなります」と語る西浦さん。フライヤーを務めることが多く、この日も「朝、顔がちょっとむくみ気味」だったそうだが、実演を行っている最中にすっきりしたという。

体の硬い記者は、ベースしかできなさそうだ……

初心者でも安心

一見すると、かなり難しそうで熟練者しかできなさそうなアクロヨガ。その場で見学させてもらった記者も、どこがどうなっているのかわからない動きもあったが、初心者でも気軽に楽しめるという。実際、この日の体験会に集まった参加者にも初心者の方が目立ったという。

ベースが女性でもフライヤーを持ち上げることが可能だ

特に、アクロヨガの中で最もメジャーなポーズ「バード」は、基本姿勢で初心者でもほとんど習得することが可能だという。「フライヤーのウエイトが重くても、(ベースの足に)重心がはまると、ピタっと体が止まりますよ」(林さん)。フライヤーがベースの上で大きく手を広げ、今にも飛び出しそうなバードのポーズ。フライヤーは背筋を使って姿勢をキープすることで、ベースはフライヤーが前後左右に傾かないようにバランスを保つことで、それぞれ体のコア部分を鍛えることができるという。

初心者でも安心して楽しめる

西浦さんのピースバージョンの「バード」。のびのびとした解放感が感じられる

愛を深めることができるヨガ

2人で行うことで、マットの上では体験することができないディープなストレッチ効果を得られるアクロヨガ。だがその最大の魅力はといえば、「パートナーとの絆(きずな)が深まること」だという。

「2人以上でやることで、互いのコミュニケーションが深まります。また、相手に身をゆだねるということは、心の解放にもつながりますし、信頼関係を深めることにもつながります。アクロヨガは『愛を深めるヨガ』といってもいいのではないでしょうか」(西浦さん)。相手との呼吸を合わせることが大切となるだけに、恋人や友人と一緒に行うことで、パートナーのいつもとは違った側面を発見できる喜びもありそうだ。

現在、アクロヨガジャパンは東京都・渋谷近辺で月に1回のレッスンを開催しているが、「アクロヨガの認知度を上げるために、地方での出張レッスンも行っています」(林さん)。ほかのヨガとは一味違った解放感や達成感が得られるアクロヨガ、一度トライしてみてはいかがだろうか。