IT業界内で噂に上っては消え、何度も話題が浮上してくるものの1つに「Amazon.comが開発する携帯電話(スマートフォン)」の話があるが、このたび具体的な製造発注の噂が出てきており、幾分かリリースに近づいた印象がある。台湾Digitimesはサプライチェーン筋の話として、台湾Primax Electronics (致伸科技)が2014年前半でのリリースが予定されているスマートフォンに関して、Amazon.comからカメラモジュール製造を委託されたと報じている。
過去の報道を整理すると、まず2011年11月にBloombergがCitigroupアナリストの話としてSoCにTexas Instruments (TI)、ベースバンドチップにQualcomm製品を採用し、部品コストが100ドル未満の端末開発を目指しているという話を報じている。このときは台湾Hon Hai Precision Industry (Foxconn)が製造委託先で、採用OSは未定となっている。発売日は1年後の2012年第4四半期のホリデーシーズン商戦を狙っていたようだ。
その後、2012年1月に「Amazon.comが自社のスマートフォン開発に向けて加RIM (現BlackBerry)買収を検討している」という話のほか、こんどはWall Street Journalが7月に「Amazonスマートフォンが年末~年初にも大量生産開始へ」と報じるなど、実際に発表から発売まで秒読みかと思われていた。だが多くが知るように、現在もなおAmazon.comは自社のスマートフォン製品をリリースしておらず、その戦略もKindleデバイスを中心としたものとなっている。
その後、登場が噂された時期を過ぎて微妙に話題が忘れられたころ、こんどはWall Street Journalから「米Amazonが3Dディスプレイ搭載スマートフォンを開発」という話が今年5月になり流れてきた。同記事によれば、Amazon.comはシリコンバレー内の開発拠点で2つのスマートフォンに1つのオーディオ専用デバイスの開発を進めており、その1つが表題の機能を持つ可能性を指摘したものだ。もっとも、同記事中にもあるように開発自体がプロトタイピングの段階で、プロジェクト全体がキャンセル可能性も指摘されている。
そして2013年も間もなく終わるというこの時期になり、今回の台湾サプライチェーンからの情報を基にしたDigitimesの報道だ。今夏のWSJ報道とは別のプロジェクトの可能性もあるが、これだけ長い期間にわたって噂が続くことからも、Amazon.comが実際に自社製スマートフォンを開発していること自体は本当なのだと考えられる。
Digitimesの報道はPrimaxがAmazonからCCM (Compact Camera Module)を受注し、それを搭載したスマートフォンが2014年前半にローンチされるという話題を伝えるのみだ。ただ興味深いのは、この種のCCMはスマートフォン上に6つ搭載され、「フローティング・タッチ(Floating Touch)技術」のセンサーに用いられるケースが多いのだという。おそらくWSJの「3Dディスプレイ搭載スマートフォン」とは異なり、最近ではWindows Phone最新版での搭載が噂される「3Dジェスチャー検出」機能に近いものだと考えられる。なお、PrimaxはこのCCMの50%以上を出荷することになると関係者の話としてDigitimesは伝えている。断片的ではあるものの、姿や形を変え、少しずつ開発が進んでいる様子がうかがえる。