チームの士気が上がらない、部下や後輩がやる気や元気をなくしているようだ……そんな雰囲気に気づいたとき、あなたは上司として、先輩として、何か行動を起こしますか? また、どんな風にアプローチしますか?

全体の約9割が「モチベーションと仕事」の関係を認識しているという結果に

マイナビニュースの「管理職または後輩のいる読者400人」にアンケートを取ったところ、なんと全体の89.2%から「個人や組織で目標を達成する為に、モチベーション(やる気)は必要である」という回答が寄せられました。

「職場のモチベーション(やる気)は、上司の資質に左右されることが多いと思うか」という質問に対して、「非常にそう思う・そう思う」と答えたのは全体の81.3%でした。目標達成や創造の元となる「モチベーション」は、そのチームを引っ張る人間のマネジメントやキャラクターによって良くも悪くもなる、と多くの方が考えているようです。

一方で部下や後輩のモチベーションを上げようとして成功・失敗した経験を持つ人たちは、いずれも全体の2割程度でした。成功・失敗に関わらず「何か行動を起こした」方は全体の29%。

このことから、「上司や先輩の行動が自分のモチベーションに対して影響する」と考えている人が9割近くなのに対し、実際に自分が行動を起こしたことがある人は、その中の半分以下という差がうかがえます。

ただ褒めれば良い訳ではない!?

しかし、部下や後輩を持っている人であれば、いずれは直面するような、自分・グループの士気の底上げや、目標を達成するためのメンバーへのマネジメントについて、部下・後輩を持つ読者のみなさんはどんな工夫をしているのでしょうか。体験談を見て行きましょう。

「あなたが、部下や後輩のモチベーションを上げるために工夫していることは何ですか? (複数回答可能)」という質問に対しては「褒める」が75.2%と圧倒的でした。次が「大きな仕事を任せる」で19.5%。次が「飲みに誘う」で15.2%でした。

部下・後輩のモチベーションを上げる為に何かを行って失敗した経験のある方に「具体的にどのような失敗でしたか?」と聞いたところ、以下のような回答が寄せられました。

■実力があると見込んで重要な部分の開発を任せたが、メンタルが弱くて、逃げ出してしまった。(技術職(研究開発、建設・建築・設備工事、その他)/研究・開発職)

■ほめ過ぎたら自信を持ちすぎて「できなかったのは自分が悪いのではなくて周りが悪い」と言うようになってしまった。(自動車関連/研究・開発職)

■飴と鞭のつもりでその都度褒めてから叱っていたら、叱られたことばかりが頭に残ったらしく、萎縮してしまいかえって後輩のモチベーションを下げてしまった。(小売店/営業・販売職)

■出した指示が細かすぎたため、自分で何も考えないで右から左に流すような仕事ばかりされるようになってしまった。(学校・教育関連/事務系専門職)

部下・後輩のモチベーションアップに成功・貢献した経験のある方に「具体的にどういった行動を取り、言葉をかけたのか教えてください」という質問に対しては、以下のような回答が寄せられました。

■とりあえず、後輩がミスをしそうになったらフォローするということを伝え、割と好きにやってもらった。後々、気が楽になったと言われた。(団体・公益法人・官公庁/人事・総務職)

■自主性を重んじ、期待以上の成果を出してくれたら「助かった」という言葉をいれてお礼を言って上司にも伝わるようにする(技術職(SE・プログラマー・システム)/ソフトウェア開発職)

■小さな失敗を立て続けにして、その度に怒られたため落ち込んでしまった後輩に、帰り際にかけた言葉。「今日は災難だったね。いっぱい怒られて疲れたでしょう? でもね、あなたは言えば直る人だと思ったから言ったんだよ。期待してるから」以来、ものすごくその後輩になつかれました。(金融・証券/専門職)

同じような行動でもその方法と加減で反応が変わってくるようです。では、両者の違いは何でしょうか。

そこで、このアンケートの回答についてプロのご意見として、「モチベーション行動科学部」において、心理・コミュニケーション、経営、教育領域から科学的アプローチに基づく「やる気=モチベーション」の研究を推進している東京未来大学・モチベーション行動科学部長の角山剛教授にお話を聞きました。

──「個人や組織で目標を達成するために、モチベーション(やる気)は必要である」と回答した方は89.2%いました。正直、定義が難しいものだと思うのですが、かなり多くのみなさんが普段から、「モチベーション」を意識されているんですね。そもそも、「やる気」「モチベーション」というのは、どういったものだととらえればよいのでしょうか。

モチベーションとは、目標に向けて私たちの行動を生起し、方向づけ、達成に向けて力を与える心理的なエネルギーであるといえます。目標達成に向けて生まれる私たちの意思や努力、工夫などの総体がモチベーションなのです。したがって、モチベーションには必ずそれが向かう先、つまり目標が存在します。目標のないところにモチベーションは生まれません。目標とモチベーションの関係は、モチベーション研究の重要な課題の一つです。

──「職場のモチベーション(やる気)は、上司の資質に左右されることが多いと思うか」という質問に対して、「非常にそう思う・そう思う」と答えたのは全体の81.3%。これも、かなり多い数字ですね。この数字についてどう思われますか。

「資質」というと、持って生まれた変わりようのない特性という意味合いが濃くなりますが、モチベーションはマネジメントが可能です。つまり、上司の資質に直接左右されるものというより、上司がモチベーションについて学び、その象徴のメカニズムを理解することで、メンバーの意欲に働きかけることが可能なものです。この数字を見ると、リーダー以上の地位にある人にはもっとモチベーションについての学びを深めてほしいですね。

──「上司や先輩の行動が自分のモチベーションに対して影響する」と考えている人が8割以上ですが、実際に自分で部下や後輩に対して行動を起こしたことがある人はその中の半分以下、全体の3割程度でした。チームや後輩のモチベーションの低下を感じても、どう関わればいいのかわからないという方も多そうですね。

他者のモチベーションに影響を与えるためには、先頭に立って引っ張る必要は必ずしもありません。メンバーを脇から支えることで影響力を行使することができます。リーダーシップ理論でいう「サーバント(召使い)リーダー」の役割です。また、人間関係や仕事の進め方など、何に対して、あるいはどこに対して働きかけるかも、モチベーションをマネジメントするうえでは大切です。こうした働きかけについての効果的なスキルを身につけるためにも、モチベーション理論をしっかり学ぶことが大切です。

──部下・後輩のモチベーションを上げようとして失敗した経験の中で目立つのは「褒めすぎて調子に乗らせてしまった」「手厚くフォローしすぎて逆に何もできない子になってしまった」「期待をかけて大きな仕事を任せたり、叱っていたら折れてしまった」という3つの意見が目立ちました。モチベーション・マネジメントの観点から見ると、こういった行動はいかがでしょうか。

褒める、フォローする、期待をかけるというやり方は、どれもモチベーション・マネジメントの有効な手段です。ですが、やみくもにやってもうまくいくとは限りません。褒める、フォローする、叱るといったことが、モチベーションになぜ、どのように影響するのかを理解して行動することが必要です。たとえば、失敗した場合でもただただ褒めるというのでは、なんの有効なフィードバックにもならないし、手厚すぎるフォローは、本人が伸びる機会を奪うことにもなってしまいます。

──うまくいった部下・後輩のモチベーションアップの方策として目立ったのは、「些細なことでも褒める」「タイミングのいいところで、励ましたりフォローを入れる」「自分自身の行動や仕事の仕方で周りを奮起させる」といった意見が目立ちました。いかがでしょうか。

些細なことでも褒める、タイミングのよい励ましやフォローというのは、上司や先輩が自分の仕事をちゃんと見ていてくれる、というポジティブなメッセージになります。むやみに褒めたりフォローすることとは別ものです。自分の行動や仕事ぶりで周りを奮起させることも含めて、これらがうまくいくのは、実は上司・先輩と部下・後輩の間に信頼関係があるからなのです。信頼関係は、モチベーション・マネジメントの実践を成功させる重要なキーであるといえます。

──最後に、部下や後輩を持つ読者の方々にメッセージをいただけますか。

モチベーションは、単なるかけ声や精神力という類のものではありません。直接目で見ることはできませんが、さまざまな手がかりを通じて人々に働きかけ、目標に向かう行動を生み出します。心理学や経営学の世界では古くから重要な研究対象となっており、これまでに多くの研究成果が生み出されています。モチベーションは理論的な基盤を持った科学の対象なのです。ぜひ科学の目を通じてモチベーションのメカニズムを理解し、モチベーション・マネジメントのスキルを身につけて、実践に役立てください。

読者の方々の体験談や、角山教授のお話はいかがでしたでしょうか。「モチベーション・マネジメント」の観点から見てみると、また違ったチームの姿が見えてくるかもしれません。この意見を参考に、より「魅力的な上司」になりたいですね!

調査時期:2013/6/5~2013/6/7
調査対象:マイナビニュース会員
調査数: 400名
調査方法:インターネットログイン式アンケート