構成員すべてがNEET(Not in Education,Employment or Training)であることで話題を呼んでいるNEETが10日、都内で設立記者会見を実施した。登記日の11月21日同様、「いいニートの日」にちなんで12月10日に設定されたもの。
会見には代表取締役会長 若新雄純氏、及び全取締役166人中20人のニートが登壇。前半は若新会長が概要を説明、後半は各取締役が質疑に応じた。
冒頭、若新会長は「実験的な取り組み。明確な成功像やウラの狙いがあるわけではなく模索中」と述べ、この起業自体が、もうけ話を想定したものというよりは、既存の枠組みの外で新しいことをやってみようという一種の社会実験であることを強調した。
全員が取締役、社長は日替わり。ROMメンバーも
従業員を雇用していないため、基本的に人件費がかからない。労働基準法の制約を受けず、出勤形態は自由。全員が取締役であるメンバー166人が日替わりで社長を務める。業務の調整はオンラインで行い、本名を名乗らず互いをハンドルネームで呼び合う、ニートにやさしい環境が整えられている。全メンバーのうち1/3程度は議論を「ROM(Read Only Member、ネットスラング)っている」だけという緩さが特徴。無理に社会へ出るのではなく、各自がスキルを生かし補完しあうコミュニティを目指す。
あえてルールを決めずに会社設立の準備を始めたために、運営形態について紛糾。出資額をいくらにするか、一株1円派と一株1万円派に分かれて激論となったが、最終的にひとり一株6,000円を出資、資本金を105万円に設定することで決着した。生活保護受給者と若新会長は株を所有していない。「何かを強行しようとしてもその権利はなく、いつでも解任されてしまう、取り締まられ役」と、若新会長は相談役に徹する構え。
「空気の缶詰」「逆エナジードリンク」などの商品後送
現状はNPO中小企業共和国の用意した予算100万円を元手に事業を策定中だという。メンバーとアイデアが多く定款に事業目的を書ききれないために「一切の事業」として登記した。その具体案のひとつは商品制作。観光地の空気、アニメキャラの香り、かわいい女の子の部屋の空気などを詰めた「空気の缶詰」、はやりのエナジードリンクの逆を行き脱力してしまう「逆エナジードリンク」の製造、販売を企画している。いずれもニートにちなみ販売価格は「210円」が濃厚だ。
30から40ほどが挙がっている事業案は分野にすると、独自商品/サービス、システム開発などアウトソーシング、広告代理店や芸能プロダクションなど外部とのコラボレーション――となるが、内容は各メンバーのスキルや特長を生かし、ネット世代の感覚に即したもの。ニートがブラック企業と戦うRPG制作、目立ちたがり屋で自他ともに認める飛び道具である取締役 ヨーイチ氏の体当たりTV番組への派遣などの企画が検討されている。
メンバーのひとりである取締役 猫舌ひよこ氏は「専門学校卒業後、家でゴロゴロ。バイトも長つづきせず、わらをもつかむ思いで自分に合った働き方ができるのではないかと応募した。(同社が企画した放送の)Ust出演で度胸がついた。取締役になってもうけられたと、親に言えるようになりたい」と心境を吐露。ニートやひきこもりという立場からいかに社会に参加していくか、その道筋のひとつとして、今後のNEET株式会社の活動が期待される。