日本医療データセンターの調査では、ドライアイ患者数は2013年3月時点で729万人と推定されており、2006年からの7年間で患者は約2倍に増加していることが判明した。実際、慶應義塾大学医学部眼科学教室の坪田一男教授は、現代人を取り巻く環境にはドライアイを引き起こす多くのリスクが存在していると指摘している。では、ドライアイはどのような影響を与えるのか、また、どうすればケアできるのかをうかがった。
ドライアイで視機能の低下も
坪田教授はまず、現在は今までにないほど多くのひかりに囲まれていることを指摘している。ドライアイの原因のひとつとして、パソコンやテレビ、携帯電話などを長時間凝視することによる乾燥が挙げられるが、特に近年は携帯電話からのインターネット接触時間が急増している。
私たちは通常、1分に20回程度まばたきをしているが、パソコンに集中している時は1分に6回程度とまばたきの回数が減ってしまう。人はまばたきをすることで眼の表面を涙で潤しているが、それが損なわれてしまうと角膜を傷つけたり、眼の表面がデコボコすることによって光学面が不正になり視機能が低下したりする。
また、ひかりの質の変化もドライアイ拡大のリスクになっているという。近年はLED製品の浸透や、パソコンやスマートフォンなどディスプレイとの接触の増加により、ブルーライトに触れる機会が増えている。可視光線の中では波長の短いブルーライトは拡散しやすい特徴をもっているため、網膜がピントを合わせづらくなる。坪田教授が行った実験では、ブルーライトをカットした状態の方が視機能が高く、涙の量も安定している傾向があったという。
ドライアイは以下のような環境がリスクになると言われている。そのほか、加齢や性別、肥満なども原因のひとつとして考えられている。
・エアコンによる乾燥
・パソコンなどの操作によるまばたき回数の減少
・紫外線や空気中のホコリ、タバコの煙
・コンタクトレンズの長時間使用
患者が軽視している保湿を眼科医は推奨
また、ジェイアイエヌが9月にドライアイ患者200人と眼科医48人に実施した調査によると、ドライアイ患者が実施している対策と眼科医が推奨する対策には開きがあることが判明した。
患者が実施している対策は、68%が「市販の目薬」、52%が「眼科医処方の目薬」と、半数以上が目薬で対策をしており、そのほかの対策は全て20%を下回っている。一方、眼科医が推奨する対策は98%が「眼科医処方の目薬」、73%が「室内を加湿する」のほか、保湿を重要視する対策を挙げている。また、「市販の目薬」に関しても、眼科医48人中24人が「用量以上の使用により、涙の油層やムチンなどの保湿成分を洗い流してしまう」という危険性を指摘している。
坪田教授はドライアイの予防対策として、以下を挙げている。
・PC作業中は意識してまばたきをする
・目元をしっかり洗浄する
・PC画面位置を下にする
・保湿メガネを利用する
・目元を蒸すタオルで温める
アイメイクはまぶたの縁にあるマイボーム腺の穴を塞ぎ、脂の分泌を妨げてドライアイを招く一因になってしまう。そのため、ドライアイ対策の観点から見ても、就寝前などにしっかりメイクを落とすことが大切となる。また、照明や直射日光が反射するモニター画面は目を疲れさせるため、光が直接入りこまないような位置に調整することも対策のひとつとなる。
保湿の観点から言うと、通常のメガネでも裸眼の状態に比べて44%程度湿度が高くなっているが、保湿に配慮されたメガネを使えば、より保湿性を高めることができる。実際、ジェイアイエヌが展開している保湿メガネ「JINS Moisure」では、通常よりも59%程度湿度が高まることが実証されている。
ドライアイ患者には、1年以上症状を抱えている人も多い。ドライアイが疑われる人は環境や生活習慣を見直し、それでも目の不調が続くようなら眼科を受診するなど、有効な対策をできるように備えよう。