オフィスの外で仕事をするサラリーマンが増えている。いわゆる「ノマドワーク」と呼ばれるワークスタイルだ。「ノマド」は、本来はオフィススペースを持たない働き方をする人を指す言葉。最近では、企業に属しオフィススペースを持ちながらもスマートデバイスを活用し、フットワークよく仕事をするサラリーマンが増加している。首都圏では、職場空間を共有するコワーキン(Coworking)スペースなども流行の兆しを見せている。外出中に資料をまとめたり、ちょっとした打ち合わせをしたり、企画を考えたりと、関わり方は人それぞれに違う。そうした人たちが「ノマド的・新ワークスタイルに必要不可欠」と考える共通のものは何だろうか。そこで都内に勤める異業種のサラリーマン4人を招き、タブレットやノートPCなどのモバイル端末、外出先での通信環境などノマド的・新ワークスタイルに必要なアイテムについて話し合ってもらった。

ノマド的・新ワークスタイルで快適に仕事するために必要なものとは? 異業種のサラリーマン4人に聞いてみた

デキるサラリーマンのワークスタイルとは?

宮本さんは、IT企業に勤務する男性。iPhone 5に加えてiPad 3、ノートPC(Ultrabook)を仕事にもプライベートにも活用している。打ち合わせなどで外に出る機会が多いため、自然とノマドのワークスタイルが定着したという。「システムの会社とはGoogleDriveでデータをやり取りしています。打ち合わせの資料はEvernoteにアップロードして使っています。チーム内の連絡をCahtwork(チャットワーク)で行う機会も増えました」と話す。桜田さんは商社に勤務する男性で、iPhone 5s、iPad Air、MacBook Airを所持する。手持ちの端末をApple社の製品で統一し、iCloudでデータを共有しているという。

チーム内の連絡をCahtworkで行うと話す宮本さん(写真左)。桜田さんはGoogleAppsのスプレッドシートで資料を作ることも多いと話していた(写真右)

長谷川さんは、新聞社に勤める男性。プライベートでiPhone 5s、iPad Air、MacBook Airを使う。「ウェブ閲覧時に気になった資料、次の企画に使えそうな資料があれば、どんどんEvernoteにアップして、時間があるときに整理しています。どの端末からでもアップしたデータが確認できるので便利です」という。山本さんは広告会社に勤務する男性。iPhone 5s、iPad Air、MacBook Airを使っている。「動画の編集など、重いデータをやりとりするときはDropboxを活用しています。チームでは横の連携が大事なので、スケジュール管理などはクラウドで共有しています」と話した。

新聞社に勤める長谷川さんはEvernoteをフルに活用する(写真左)。山本さんは仕事柄、動画のデータをやりとりする機会が多いと話していた(写真右)

4人の話からは、早くも「iPhone、iPad」「クラウド」という共通のキーワードが浮かび上がってきた。ノマド的・新ワークスタイルは、"カフェの雰囲気が良ければ、それだけで仕事が進む"という単純な話ではなく、「iPadなどのタブレットをクラウドと連携して利用する」ということが重要になってくるようだ。

iPhoneやiPadというユーザビリティが高く、各種サービスとの連携にも優れたスマホ&タブレット端末の出現により、人はどこでも仕事ができるようになった。ふたつの端末が現代人のワークスタイルに及ぼした影響は、極めて大きいと言えるだろう。山本さんは「大抵の仕事はスマホとタブレットで済むので、ノートPCを持ち歩かなくなりました」と話す。iPadは、チーム内で動画を共有する際などに重宝しているとのこと。長谷川さんは「昔はルーター、ノートPC、電話を持ち歩いていましたが、最近はテザリング対応のiPhoneとiPadで用が済みます。荷物が少なくなりました」と話す。取り引き先では、iPadを使って先方にイメージを伝えることも多いという。

また、クラウドの活用方法について4人はこう話す。宮本さんは「朝クリッピングしてEvernoteにアップした資料を、移動中に確認しています」という。桜田さんもデータをクリッピングしEvernoteに貯めていくということを日常的に行っているとのこと。一方、長谷川さんは「資料の下書きをデスクで作りクラウドに上げ、すきま時間に修正しています」という。取材のボイスメモをチームで共有する際にも活用。そのほか、3000枚あった名刺はすべてスキャンし、クラウドサービスで管理するようにしたという。山本さんは「クラウドサービスを利用することによって、各担当者がひとつの資料を同時にチェックすることが可能になりました」と話していた。

iPhone×iPadというモバイル端末の出現により、現代人はどこでも仕事ができるようになった

モバイル×クラウドの活用時の失敗談

次に、モバイル端末で仕事を進めていた際の失敗談を聞いてみた。宮本さんは「オンラインストレージサービスのSugarSync(シュガーシンク)を使っていたときのことですが、会社のPCでアップロードしたデータを外出中にダウンロードしようとしたら、Wi-Fiが繋がらず時間内にデータを読み込めなかったことがあります」。桜田さんも同じような失敗をしたことがあるとのことで、その反省から「タブレットをWi-Fiモデルからセルラーモデルに切り替えました」と話した。山本さんは「しっかりした高速通信が確保されていないと仕事になりません。とあるビルの奥深いところでクライアントに説明をした際、動画がダウンロードできませんでした。中座して外でデータをダウンロードし直した苦い経験があります。それがきっかけで、iPhone 5とiPad Airは、800MHzプラチナLTEに対応したauに機種変更しました。」と話す。これらの失敗談は、いくら便利なiPhoneとiPadを持っていても"つながるネットワーク"が確保されていないと仕事にならない、という好例だ。

現在、iPhoneはNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの主要3社が提供している。iPadのセルラーモデルについてはauとソフトバンクの2社が取り扱っている。各社それぞれネットワーク環境に注力しているが、周波数などの通信の仕様や特性も異なる。

例えば、ソフトバンクモバイルも2.1GHzと1.7GHzの周波数を利用した「倍速ダブルLTE」を提供している。唯一、iPadを取り扱っていないドコモも4つの帯域(2GHz/800MHz/1,7GHz/1.5GHz)を活用する「クアッドバンドLTE」を順次展開するとしている。KDDI(au)は屋内や地下でも繋がりやすいという特性を持つ800MHz帯のプラチナバンドLTEをベースバンドにしネットワーク構築をしており、iPhone 5やiPad Airで快適な通信を行えるのが特長だ。

このように各社のネットワーク環境は、それぞれ異なる。なので、セルラーモデルの購入を検討している人は、料金プランや支払い総額だけではなく、ネットワークについても十分検討するとよいだろう。

ネットワークが繋がらないと最も困る場所はカフェ

座談会を通して、ノマド的・新ワークスタイルにはモバイル端末に加えて、クラウドサービスが欠かせず、ネットワークがつながらないと仕事ができないという特徴が見えてきた。地下鉄や地方でネットワークが繋がらなくて困ったという声もあったが、「カフェでは絶対にネットワークがつながって欲しい」というのが、4人に共通する思いのようだ。桜田さんは「カフェによっては、通信速度が遅かったりアップロードの途中で通信が切れてしまったりということがある。昔は公衆無線LANサービスを利用していましたが、現在ではキャリアが提供するLTEの方が通信が安定しているし、速度も速いように思います」と話す。長谷川さんによれば「地下街にあるカフェだと、キャリアによっては圏外になることがある」とのこと。そのため、カフェを選ぶ際は「雰囲気」だけでなく「ネットワークがつながるか」にも最大限の注意を払うという。

山本さんは企画が浮かぶカフェ、浮かばないカフェについて語った

山本さんは「企画が浮かばないのが奥行きが深いカフェ、企画がよく浮かぶのが奥行きが浅い小さなカフェ。電波の問題も含め、色んなことが作用しているのだと思います。仲間内で"仕事が進むカフェ"の研究をしたら、1冊の本ができるかも知れません」と笑った。長谷川さんが頻繁に利用しているのは、都内にあるノマド的ワーカー御用達のカフェ。2時間で500円という低料金で、ソフトドリンクは飲み放題、Wi-Fiも利用できるのだとか。「仕事をしに来ている人ばかりなので、とても集中できるんですよね」とのことだった。現代人のワークスタイルの変化にともない、今後はこうしたサービスを提供するカフェも増えていくのかも知れない。