バッファローは4日、SMBやSOHO向けに、通信を強力に秘匿して安全性を高めるIPsecに対応したVPNルータ「VR-S1000」を発表した。VR-S1000の概要は別記事「バッファロー、設定を容易にしたL2TP over IPsec対応のVPNルータ」を参照いただくとして、先だって行われた内覧会の模様をレポートしたい。
今回のVR-S100は、バッファローとして初めて市場投入する、業務使用を想定したVPNルータとなる。これにより、中小企業はもちろん、SOHOといった個人事業主を含む多くのビジネスユーザーへ、手軽にセキュアなリモートアクセス環境を普及させたいという。
フロントには各種インフォメーション用のLEDを配置。本体右にはUSB-NAS機能として利用できるUSBポートが配されている |
本体背面。こだわりは電源スイッチを誤って操作しないように配された電源スイッチガード |
VR-S1000の製品化にあたり、バッファロー BBSビジネスユニット次長の富山強氏は、「企業通信網構築に利用されている通信サービスの約半数を、インターネットVPNが占めているのが現状。企業のゲートウェイ機器では約70%が、ルータまたはVPNルータを使用している」と、市場動向を述べた。さらに「話題を集めているUTM(統合脅威管理)も順調に伸びてきているが、まだまだVPNルータへのニーズは高い」、「モバイルデバイスの増加や通信速度の向上によって、新たなニーズが生じている」とも分析している。
また、「リモートアクセスや拠点間通信においても課題が見えた」と富山氏。設定が複雑だったり、機器コストが高かったりする点が、特にSOHOや小規模拠点間における通信の課題という。その状況を打破すべく、VR-S100は、「真に求められる機能と簡単な設定が行えるVPNルータを安価で提供」できる製品と自信を見せる。
総務省の調査より抜粋された資料によれば、企業通信網の半数がインターネットVPNを利用しているという。UTMも伸びてきてはいるが、大多数がいまだにルータやVPNルータを利用 |
スマートフォンに代表されるスマートデバイスからのアクセスも、通信速度の向上などによって、ユーザーのニーズを高めているという |
セキュアかつ高速VPNの構築において、VR-S100はIPsecへの対応はもちろん、モバイルデバイスで採用されているL2TP over IPsecもサポート。外出先であっても、安全でスピーディにアクセスできる対応力は、筆者のような個人事業主には嬉しい機能だ。
その上、IPsec実効スループットは最大100Mbpsを実現。内覧会でのデモンストレーション でも約140Mbpsを記録するなど、その実力を発揮してみせた(※)。また、VPN対地数は「10」、NATセッション数は「10,000」と、SOHOや中小規模の企業における拠点間通信には、十分な機能を持つ。
※ 2台のVR-S1000をIPsec接続し、LAN側にはPCをつないで「IxChariot」でスループットを測定。IPsec接続は暗号方式AES128、認証方法SHA-1を使用。
実際にデモンストレーションが行われた。環境は写真左のような構成。コンスタントに高い値を示しながら、最終的なアベレージでは約140Mbpsの値となった。画面下部のグラフを見ても、高い値で安定しているのが見て取れる(写真右) |
中小企業においては、専任のシステム管理者を置くのは負担になる。そういった実情を鑑み、VR-S1000はVPN環境の構築を簡単に行えるように初期設定ウィザードを搭載した。また、Web管理画面で全機能の設定が可能となっており、専門知識を持たないユーザーでも扱いやすいよう工夫されている。
ありがたいのは、本体に同梱されるUSBメモリに設定を自動でバックアップして、設定間違いや機器の故障といった場合でも、スピーディに復元できる機能だ。これはかなりの安心感につながるだろう。その他、USB接続のHDDをつないで簡易NAS化する機能や、ループ検知、SyslogやSNMPへの対応など、拡張性や保守面においてもバッファローらしい製品といえる。
今後、よりセキュアな通信が求められるのは、何も大企業に限った話ではない。筆者のような個人事業主はもちろん、中小企業においても機密性が高く安定したネットワークが必要だ。そんな世の流れを汲み、安全な通信環境を構築する選択肢のひとつとして、VR-S1000を検討してみてはいかがだろうか。