ハウス食品が製造・販売しているインスタントラーメンに、「浪花の中華そば 好きやねん」という商品がある。商品名から察しがつく通り、近畿地方限定で発売されている袋麺だ。
ハウス食品は1979年、豚骨スープの袋麺「九州の味ラーメン うまかっちゃん」を発売。これは九州をターゲットにした九州限定発売の商品で、ご当地即席ラーメンの先駆け的存在であった。「うまかっちゃん」は、それまで業績の振るわなかった九州地区においてハウス食品を一躍トップシェアに浮上させるほどの好セールスとなる。
ハウス食品念願の「関西ご当地ラーメン」
そして次に、同社が新しく商品化を進めたのが関西ご当地ラーメンだ。京阪神地区における即席袋ラーメン市場規模は、1974年から1984年までの10年間で140億から230億円に伸びており、さらなる消費者開拓の余地が目されいていた(ハウス食品資料より)。
ただ、こう書くと九州での「うまかっちゃん」の成功が「関西ご当地ラーメン」開発の発端と思われそうだが、実は違う。少なくとも「うまかっちゃん」開発段階で、既に関西ご当地ラーメンの商品開発の考えはあったようだ。
「ウチはもともと大阪で創業された企業ですから、地元である関西の消費者に認められ、人気を得られる商品をという意識は常にあります。関西ご当地袋麺の研究・開発も以前から続けられていたんです」(同社広報室)。関西ご当地袋麺の商品化は、ハウス食品念願のプロジェクトだったのだ。
ダシの利いたあっさり醤油味にシコシコ細麺
「ダシの文化」とよく言われる関西の食文化、そして味に厳しい関西人の味覚。こうした“関西の味覚にあったラーメン”をテーマに研究を重ねて完成した自信作は、チキンベースの醤油味にカツオとコンブダシを加え、あっさりとした関西風味のスープに仕上げられた。そして、麺はシコシコと腰のある細麺タイプ。スープがあっさり味なので、スープがよく絡むこの細麺がふさわしいと考えられたのだ。
ハウス食品は1985年6月に、関西の主婦に「好きやねん」を試食してもらうという調査を行っている。その感想はというと、「あっさりしている」が21%を占め、「今までにない味」や「好きな味」といった好意的な反応が36%という結果になった。そして購入の意向について、「買いたい」と答えた人が即席麺ヘビーユーザーで60%、ライトユーザー34%で、全体では53%の人が購入に前向きな意見となったそうだ。
評判は販売エリア以外の地域にも拡散
かくして1985年、九州を除く大阪以西を販売エリアとして、袋麺「浪花の中華そば 好きやねん」は発売を開始。パッケージやTVCMにはラーメン屋の屋台を登場させ、ネーミングとともに“親しみやすさ”を強調。ほのぼのとしたイメージ戦略とともに売りだされた。
九州における「うまかっちゃん」同様、「好きやねん」は関西・中四国エリアで大いに受け、大成功を収めた。それどころか、この味を知った西日本以外の地域の人や、関西から関東に移り住んだ人から、「関西以外では売ってないのか」という声も時折聞かれるほどだという。
現在も京阪神のスーパーやコンビニでは基本的にどこでも、「好きやねん」を販売している。しかし、残念ながら東日本については、「特に取扱店として把握している店舗はありません」(ハウス食品広報)とのことで、東日本の人はネット上で購入するしかなさそうだ。
なお、「うまかっちゃん」は九州以外のエリアでも比較的購入しやすく、また、ハウス食品から「オススメ調理法」の動画がYouTubeに上げられたりもしている。数ある即席袋ラーメンの中で、味に厳しい関西人に好評を博す「好きやねん」も、是非とも販売エリアを拡大してほしいところである。