多田屋
こちらはスペシャルサイトではなく、旅館の公式サイトなので、コーポレートサイトと言えるでしょうが、サイト全体に大きな写真やインタラクション・演出をちりばめ、ユーザーのエモーションに訴えるようなサイト作りをしているという点で、スペシャルサイト的な手法によって作られていると言えます。このように、コーポレートサイト全体をスペシャルサイト的に構築することで、ブランドイメージを強調することもできます。こういったサイト作りは、多田屋のような旅館・ホテルなどの宿泊施設のほかに、ファッションブランド・レストランなどのコンシューマービジネスや、デザイン事務所など、イメージを重視したビジネスを展開している企業に多いと傾向にあります。こういった、小規模に展開している企業・個人事業者などは、特にイメージがとても重要になるため、コーポレートサイトといえど、そこにはその事業者の想いを乗せる必要があるのです。
このように、スペシャルサイトは、ユーザーのエモーション(感情)に訴えて、ユーザーの「見たい」、「欲しい」、「買いたい」という衝動を喚起し、または「共感」させるために、エンターテインメント性やコマーシャル性の高いサイト作りが要求される、Web業界の花形ともいえるでしょう。また、先ほどご紹介した「ルジェ カシス」や「多田屋」のサイトのように、本来のスペシャルサイトの定義からは外れるかもしれませんが、スペシャルサイトと同様の手法を用いて作られるコーポレートサイトも存在します。
スペシャルサイトはどういった手法で制作されている?
では、そんなスペシャルサイトはどういった手法で制作されているのでしょうか? やはり、映像・音楽・インタラクションを用いて表現されるため、通常のHTML+CSSではもちろん制作はできません。主に、FlashかJavaScriptによって制作されます。
元々スペシャルサイトが制作され始めた要因は、2000年代前半のFlashの流行でしょう。 今まで静的HTMLが主流だったWebの世界に、インタラクティブという概念が持ち込まれ、独自のインタフェースの実装やミニゲームの制作が可能になり、各企業は競うようにスペシャルサイトを製作するようになりました。その後iPhoneの登場によってFlashが使えない端末が登場し、徐々にFlashを使わないシンプルなWebへ移行する企業も現れ始めます。そうした中、話題にはなるものの亜流扱いされていたAjax(JavaScript)インタラクティブがにわかに注目されるようになってきたのです。というのも、JavaScriptはiPhone、iPad、Androidでも動作するためで、スマートフォン・タブレット・PC全てで動作するスペシャルサイトの製作が可能になるわけです。
しかし、JavaScriptという言語は、ブラウザによって相当動作や書き方が異なったりと、かなりクセのある言語です。そんな中脚光を浴びるようになったのが「jQuery」です。jQueryはJavaScriptで記述され、今までJavaScriptのプログラマーを悩ませていたブラウザによって書き方が違う部分や、インタラクティブやアニメーションなどを実装する際の手間などを補って、より簡単に実装できるように拡張されています。今ほど有名になる前から存在はしていましたが、やはりiPhoneの登場とともに、JavaScriptが注目される中で一気に業界のデファクトスタンダードと呼ばれるようになりました。
現在は、jQueryを使って、HTML5+JavaScriptで制作するのが主流となりつつあり、スマートフォン・タブレットの流行と共に、HTML5+jQuery+JavaScriptを用いたスペシャルサイトや、スペシャルサイト風のコーポレートサイトの制作はますます増えていく傾向にあります。クリエイターの皆さんはjQueryを用いたスペシャルサイトの制作が可能であることが今後、重要になってくるとも言えます。また、その流れを受け、近年は難しいJavaScriptを記述しなくてもテンプレートを使ってjQueryベースのウェブサイトが作れるソフトウェアなども登場してきています。Web制作の知識があまりないデザイナーもこれらのソフトを駆使し、そうしたサイトを制作できる環境を探していくことが大切だと言えるのではないでしょうか。
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