高齢化社会の到来にともない、シニア層に向けたサービスを企画・提供する企業が増えている。例えばコンビニエンスストア最大手のセブン―イレブン・ジャパンでは、高齢者に弁当や日用品を届ける宅配サービスを展開する。ファミリーマートではシニア層に商品力をアピールする新ブランド「おとなコンビニ研究所」を創設した。ローソンでは日用品を大幅に強化し、健康食品や医薬品の取り扱いも視野に入れている。

旅行業界では、クラブツーリズムが「ゆったり旅」を提供。「JTBロイヤルロード銀座」も70歳代を対象に「ゆとり紀行」を展開する。いずれも長い距離を歩かない、椅子席を用意するなど、高齢者に配慮したツアー内容となっている。このほか、住宅関連でも大和ハウスのグループ会社ダイワサービスが「シニアサポートサービス」を提供。一人暮らしの高齢者には孤独感を解消するべく声がけを行い、また別居中の親族には定期的な連絡により安心感を届けるサービスを展開している。

携帯電話業界も例外ではなく、シニア層に向けたサポートサービスが増え始めている。現在、最も力を入れているのはKDDI(au)で「シニア向けケータイ教室」をはじめ、専門チームが利用者をサポートする「24時間電話サポート」、アドバイザーが家庭を訪問する「スマホ訪問サポート」、購入前にスマホの使い勝手を試すことができる「スマホお試しレンタル」、旅行しながら使い方を学べる「スマサポバスツアー」など、ユニークなサポートサービスを提供している。

KDDI(au)の取り組み

auスマートサポート」は、会員制のサポートサービス。ユーザー1人ひとりに専門知識を持った「お客さまのための専任チーム」が就き、24時間体制でサポートする。アドバイザーは指名することも可能だ。利用者にとって、深夜でも早朝でも困ったときにいつでも相談に乗ってもらえるというのは非常に心強い。専任チームにとっても、これまでの経緯が分かっているため「いま何が問題になっているか」が明確になるなどの利点がある。利用料金は加入月が3150円で、2~3カ月目の利用料金は無料、4カ月目以降は399円/月となる。同サービスは、ギフトとして人に贈ることもできる。「auスマートサポートご利用チケット(プレゼント用)」では、利用者は6カ月間サービスを受けることができる。料金は4347円となっている。

上述のように、利用者が相談しやすい環境が整えられているのがauスマートサポートの特長だ。担当者に話を聞いたところ「シニア世代と親密になり、心温まる話に発展することもあります。過去には、自宅で取れた野菜を送ってくださった方もいらっしゃいました」とのことだった。

このほか、アドバイザーが利用者のスマホを遠隔操作により説明する「リモートサポート」にも対応する。紛失・盗難にあった際には「リモートロック・位置検索」サービスが利用できる。また電話サポートだけでは不安、という利用者には「スマホ訪問サポート」を提供。これは自宅を直接訪問し、初期設定やスマホの使い方などを説明するサービスとなっている。このほか、実際に使ってみたいという利用者には「スマホお試しレンタル」を用意。使い勝手はもちろん、自宅周辺で電波が入るかどうかなどもチェック可能なので、購入前の不安な気持ちを解消できるだろう。

使い方教室だけでなく、使い方ツアーまで開催

KDDI(au)では「KDDIケータイ教室」において、シニア向け講座の開催にも力を入れている。おおむね65歳以上を対象にしたもので、8名~24名といった規模の団体に2時間のレクチャーを実施する。対象地域は全国で、費用は無料。主な内容は、スマートフォンとは/ スマートフォンの基本操作/ スマートフォンの文字入力(1時間)、電話のかけ方・受け方/ インターネットの使い方/ アプリの使い方(1時間)。開催前に担当者と打ち合わせ、要望に沿った講座を行うことができる。詳細は同社のホームページで確認して欲しい。

ユニークなイベントの開催にも積極的だ。同社では11月末、auスマートサポートの会員限定で「スマートフォン講座×秋の京都満喫ツアー」を開催した。同ツアーは、観光しながらスマートフォン講座が受けられるというもの。参加者は世界遺産「醍醐寺」の散策などを楽しみながら、スマートフォンの基本的な操作、綺麗に写真を撮るコツ、撮った写真を加工するアプリ、撮った写真を共有できるアプリの使い方などを学んだ。KDDI(au)では9月にも同様のツアーを開催しており、今回が2回目の試みだった。

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高齢化社会を迎えるにあたり、「高齢者層をいかに取り込んでいくか」は企業経営の大きなポイントとなってくる。携帯電話市場では現在、若年層や中間層といった世代を中心に従来型の携帯電話からスマートフォンへ乗り換える動きが活発化しているが、今後この需要が高齢者層へと波及していくことは大いに考えられるところだ。近い将来、本稿で取り上げたようなユニークな取り組みが、大手3キャリアで見られるようになるのではないだろうか。

(執筆:大石はるか)