アップルの新型iPhoneが主要3キャリアより発売されたことなどをきっかけに、通信各社の競争の軸は、端末のラインナップからネットワークやサービスの優劣へと移行しつつある。中でも各社が力を入れているのが、LTE/4Gという高速通信サービスだ。各社が販売するスマートフォンの多くはLTEに対応した端末となっているが、LTEネットワークに対するユーザーの実感は各社でどのような違いがあるのか。MMD研究所が11月27日に公表したLTE対応スマートフォンユーザーを対象とした調査結果は、各社ユーザーの実感の違いを明らかにしている。
「つながりやすさ」「通信速度の速さ」の実感ではソフトバンクが勝利
今回、MMD研究所が実施した調査は、スマートフォンで利用できるLTEの"つながりやすさ"、通信速度の速さの実感を調べたもので、ドコモ、KDDI、ソフトバンク各社のLTE対応スマートフォンを所有しているユーザー各600人、計1800人を対象にインターネット調査の手法で実施された。期間は11月14日から18日まで。
調査結果をまとめると、LTE対応スマートフォンユーザー全体の55.5%が"つながりやすさ"を実感しており、68.0%が通信速度の速さを実感していることがわかった。また、キャリア別では"つながりやすい"、"通信速度が速い"と実感しているユーザーが最も多かったのはソフトバンクだった。
結果を詳しく見てみると、まずLTEの"つながりやすさ"について聞いたところ、「とてもつながりやすい」「ややつながりやすい」を合わせた"つながりやすい"と実感しているユーザーの割合は全体で55.5%となり、過半数を上回った。また、キャリア別ではソフトバンクが58.7%で首位となり、"つながりやすい"と実感しているユーザーが最も多く、次いでKDDIが54.5%、ドコモが53.2%という結果になった。
次に、LTEの通信速度について聞いたところ、「とても速い」「やや速い」を合わせて、"通信速度が速い"と実感しているユーザーの割合は全体で68.0%となり、7割近い結果となった。キャリア別では、通信速度の速さの実感でもソフトバンクが首位となり71.8%、次いでKDDIが68.8%、ドコモが63.2%だった。
また、6カ月前と比べたときの変化を聞いた質問では、まず"つながりやすさ"について、「とてもつながりやすくなった」「ややつながりやすくなった」を合わせた"つながりやすくなった"と感じているユーザーの割合は、ソフトバンクが首位で45.9%、次いでKDDIが37.3%、ドコモが36.4%だった。通信速度の速さについては、「とても速くなった」「やや速くなった」を合わせた"通信速度が速くなった"と感じているユーザーの割合は、ソフトバンクが43.5%、ドコモが34.9%、KDDIが34.6%となり、6カ月前との"つながりやすさ"、通信速度の変化の実感でもソフトバンクが優位という結果になった。
同調査では、LTE対応スマートフォンユーザーに対し、パケ詰まりの経験や頻度も聞いている。全体では72.7%がパケ詰まりを経験しており、1週間に1回以上のパケ詰まりが起こると答えたユーザーの割合も60.5%と、今なおパケ詰まりに悩まされているユーザーが多いことが明らかになった。また、キャリア別では、パケ詰まりを経験したユーザーの割合が最も多いのはドコモで75.8%、次いでKDDIが73.0%、ソフトバンクで69.2%だった。1週間に1回以上のパケ詰まりが起こると答えたユーザーの割合は、ドコモが64.6%、KDDIが59.3%、ソフトバンクが57.1%という結果となり、パケ詰まりの経験と頻度ともにソフトバンクが最も低く、他社よりも優位であることがわかった。
各社ユーザーによる実感の背景を考える
今回の調査では、各社のLTE対応スマートフォンユーザーのうち、LTEが"つながりやすい"、"通信速度が速い"と実感しているユーザーが最も多いのはソフトバンクであることが明らかになった。また、6カ月前との"つながりやすさ"、通信速度の速さの変化でも、向上していると感じているユーザーが多いのはソフトバンクだった。これには、同社が9月の新型iPhoneに発売に合わせて提供開始した「倍速ダブルLTE」が貢献したことが一因と考えられる。同サービスは、ソフトバンクの2.1GHz帯とイー・モバイルの1.7GHz帯の「ダブルLTE」をそれぞれ下り最大75Mbpsに高速化するというもの。新型iPhoneの発売後に実施された通信速度や、パケ詰まり調査でも、ソフトバンクが優位という結果が出ている。
また、同社のAndroidスマートフォンでは、高速通信サービスとしてAXGP方式のSoftBank 4Gを採用してきたが、2013~14年冬春モデルからは従来のSoftBank 4Gに加えて、これまでiPhone・iPad向けに提供されていたFDD-LTE方式のSoftBank 4G LTEにも対応し、「Hybrid 4G LTE」が利用可能となっている。さらに、来年春からは900MHz帯のプラチナバンドLTEも提供予定で、今後もさらなるネットワークの強化が期待される。
今回の調査で、KDDIはLTEの"つながりやすさ"、通信速度の速さの実感ともにソフトバンクに次いで2位という結果になった。同社は、新型iPhoneが対応した800MHz帯のプラチナバンドLTEの優位性をアピールしているが、6カ月前からの変化の実感でも800MHz帯の効果は大きく現れていない。要因としては、前機種iPhone 5が800MHz帯に対応していないことが挙げられ、プラチナバンドLTEが優れていても、端末が対応していなければユーザーがメリットを実感できないという状況がある。
LTEの"つながりやすさ"、通信速度の速さの実感ともに3位となったドコモは、パケ詰まりの経験や頻度も3キャリアで最多となった。新型iPhoneからiPhoneの取り扱いを開始したドコモは、10月の契約数が2カ月ぶりに純増したものの、純増数は他社に遠く及ばず、契約数でも苦戦が続いている。ようやくiPhoneを手にした同社が巻き返すには、まずはユーザーを満足させるネットワークの整備が急務だと言えるだろう。
* * *
MMD研究所がLTE対応スマートフォンユーザーを対象に実施した調査では、LTEの"つながりやすさ"、通信速度の速さの実感ともにソフトバンクが首位となった。「つながりやすさNo.1」をアピールするソフトバンクが、その実力を見せつける結果となったが、Hybrid 4G LTE対応のAndroidスマートフォンの発売や、来年春から提供予定のプラチナバンドLTEなど、今後も同社のネットワークには期待が集まる。
また、今回の調査では、LTE対応スマートフォンの過半数がLTEの"つながりやすさ"、7割近くが通信速度の速さを実感していることがわかった。ますます普及が予想されるLTEだが、11月22日にはアップルがSIMフリー版iPhone 5s/5cの販売を開始しており、キャリア間の競争が端末からネットワークに移行していく流れは一気に加速しそうだ。各社のネットワークの取り組みに注目しておきたい。