高齢者の独り暮らしを助けるためのロボット技術環境
続いては、これまた2013年初公開となる、ロボット技術を応用して作られた住環境「RTリビングラボ」だ(画像14~18)。日本では、現在すでに高齢者の介護施設が不足気味であり、今後はさらに高齢化が進むことから、在宅介護の必要性が増えることは確実で、そのためにはRT技術を活用して、住居を独居老人でも心配なく暮らせるような仕組みにする必要がある。
ただし、それには現在、住居内では通常は使われていないような技術を持ち込む必要があり、実社会にいきなり送り込んでも浸透させるのは難しいことから、その前に実社会を模擬した仮想的な研究プラットフォームを活用することで、効率的に研究・開発を行う必要だ。そうした狙いで開発されたのが、このRTリビングラボなのである。要は、住環境にRT技術を導入していくための実証実験を行うための設備であり、産総研では共同研究者の募集も行っている。
画像14(左):RTリビングラボのリビングにて。正面の人が通っているところ向こうが玄関。玄関へ向かう扉の左は隠れているがベッド。 画像15(右):同じくリビングの角度を変えてテレビなどが写る位置で撮ったもの |
RTリビングラボには、技術としては既存のものを組み合わせて応用されているが、産総研でこれまでに開発された複数の技術も活用されている。まず住環境設備と各種機器を連携させるために使われているのが、オープンソースソフトウェア「RTミドルウェア」だ。そして、テーブルなど家具に取り付け可能で、物理的な移動を支援する電動モータユニットが、「アクティブキャスター」(画像18・動画2)である(これも2013年発表)。さらにもう1つ、微弱な電磁波などでお年寄りなどを見守るセンサ技術の「見守りセンサ」もある。
これらの技術とモータなどを組み合わせることで、例えば高齢者が夜の暗い家の中で自室やトイレの位置がわからないというような場合、見守りセンサを活用して高齢者がどこにいるかをホームコンピュータが把握し、照明を連携させることでトイレや自室まで案内したり(動画3)、徘徊や転倒を見守りセンサでキャッチしたりするというわけだ。
動画でも紹介しているが、RTリビングラボは、住居内の室温に合わせて窓を自動で開閉したり(画像20)、ブラインドの上げ下ろしをしたり(画像21)、扇風機やエアコンを自動制御したりといったことも当然組み込まれている。さらに、トイレで倒れたりした場合も2個のセンサの位置を工夫することで(画像22・23)、それをキャッチして緊急連絡ができる仕組みだ。
使用されているセンサは、まず玄関のドアが電動式でドア開閉状態検知センサを装備(画像24)。三和土を上がったところにはKinectを用いた人感センサ。そしてリビングにはIRエリア型センサ(画像25)。ベッドとトイレにはRFID人感センサがある。前述した窓やブラインドに加え、照明や家電などはもちろんコントロールされる形だ。